シニア犬(老犬)の介護特集(トイレのサポート編)
シニア期になって、問題が出てきたときにどんなお世話をすればいいの?
そんな疑問に介護のプロがお答えします
安部 里梅 さん
動物病院での豊富な看護経験を活かした老犬介護のプロ。専門的で安心できる動物看護&介護を手助けする総合ケア施設を立ち上げ、代表を務める。
トイレに行く気はあっても間に合わないことが。
シニア期のトイレの失敗は
仕方がないこと。
犬はきれい好きな動物なので、本来は自分の寝場所を汚したくないはずです。 粗相をしたからと叱らず、一度トイレ環境を見直してあげてみてはいかがでしょうか。
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排便・排尿の回数が増えた、逆に回数が減った
泌尿器官の機能低下により、尿をたくさん溜められなくなることでトイレの回数が増えることが。また、飲水量や食事量が減っている場合は回数が減ることもあります。 -
排泄の姿勢をとることが難しくなった 詳しくはコチラ▼
加齢や疾患・病気により、自分の体を支えるのが困難になると、排泄の姿勢がとれず、尿や便がしづらくなったり、その場で漏らしてしまったりすることも。 -
尿漏れなど、おもらしするようになった
膀胱や腸の筋肉の低下によって、排泄が我慢できなくなる、立ち上がろうとした刺激で漏れてしまうということがあります。 -
自力で排尿・排便ができなくなった 詳しくはコチラ▼
排泄機能の衰えや、なんらかの病気などにより、自力での排尿・排便が困難になることも珍しくありません。
少なくするには?
を考えてあげましょう。
<失敗しにくいトイレ環境>
4つのポイント
- ①
トイレを寝床に近い場所につくる
- ②
トイレの数を1~2ヶ所増やす
- ③
トイレの周囲にもシーツを敷くなど、
トイレ場を少し広くする - ④
なるべくこまめにトイレに誘導する
失敗する時の状況をよく観察。「トイレに行こうとしているのに、間に合っていない」なら①②④、「トイレでしているつもりだけど、はみ出している」なら③など、状況に合わせて工夫してあげてくださいね。
トイレが分からないみたい…
が考えられます。
犬は元々視力がよくないので、視力に頼って生活していません。なので、別の原因が考えられます。
多いのは、加齢に伴う認知力の低下(認知機能不全症候群)。いわゆる認知症の症状の一つですが、他のことは覚えていてもトイレの場所だけ突然忘れてしまう、などということはよくあります。
この場合も、トイレシーツの範囲を広げるなど、愛犬が「失敗しにくい」環境を整えてあげることが大切です。
ワンポイントアドバイス
「認知症」と聞くとドキッとするかもしれませんが、いきなり何もかも忘れたり、夜鳴きが始まったりするわけではありません。トイレの場所を忘れたり、ドアの開く方向がわからなくなったりと、現れる変化は犬それぞれです。
歳をとれば当然のことですので、焦らずやさしく見守ってあげてくださいね。
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大きいサイズで、壁に囲われているのではみ出しの失敗を軽減。
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軽量なので場所移動ラクラク。
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水を弾く素材だからお手入れはサッと拭くだけ。
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段差がないからつまずきにくい、薄型シリコントイレ。
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超強力すべり止めシートで、トイレシーツのズレを防止。
歩行補助具を使うのもあり。
ポイントって?
状況に合わせた支え方で。
- 方法1
- 排泄の姿勢をとる(しゃがむ)のが難しい子は、愛犬のおしりの左右の骨を後ろからやさしくつかむように支えてあげるといいでしょう。 触られるのが嫌な子もいると思いますが、徐々に慣れてきますので、回数を重ねていきましょう。
- 方法2
- 自分でしゃがめるけれど、途中からずりずり後ろに下がってしまう子は、飼い主さんが手や足を沿えて止めてあげましょう。(小型犬だと飼い主さんがしゃがんで支えるのが大変なので、立ったまま足で支えるのでもOK)
注意点は?
しているか確認を。
補助具のサイズがぶかぶかだと、使用中に愛犬が滑って体制を崩した際、体に負荷がかかって脱臼などケガにつながることも。補助具に破れやほつれなどが無いか点検しておくことも大切です。
また、長時間着けた状態にする場合、擦れによる褥瘡を防ぐため、脚の付け根や首回りなどを確認しましょう。毛の長い子は擦れていても気がつきにくいので、特に気をつけてあげてくださいね。
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サッと着せられる前脚タイプ。
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内側はふわふわのハニカム素材で通気性抜群。
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体勢に合わせてサイズを2段階に調節できる2列ファスナー。
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前肢とお尻を一緒に支えることができます。ハニカム立体構造で体圧を分散。
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後足がふらつく子に。男の子も女の子も付けたまま排尿OK。
皮膚かぶれや膀胱炎の予防にもつながります。
犬の皮膚は意外に敏感で、オムツかぶれを起こしやすい傾向にあります。つけっぱなしだと膀胱炎にもなりやすくなるので、汚れたらこまめに変えてあげてください。 また、おしっこが濃くなると膀胱炎のリスクが高まります。 オムツをつけるとトイレの回数がわかりづらいですが、季節に関わらず「水をよく飲ませる」ことを心がけてくださいね。
頻繁にオムツを変えるのはちょっともったいないかも、という方は…
オムツの中に「尿取りパッド」を入れて使用すれば、少量のおしっこなら尿取りパッドのみの交換でOK!
気を付けることは?
ピッタリのモノを選びましょう。
オムツがズレないように、ウエストがテープでピッタリに調節できるサイズがいいでしょう。後ろ足の付け根に1本指が入るように調節します。(オムツが擦れて傷になってしまうことを防ぎます)
人間の赤ちゃん用のオムツにしっぽの穴を開けて代用することもできますが、穴の大きさが合わないと漏れることがあるので、調整が必要です。
オムツがズレてしまいます
どうか、一度確認してみて。
オムツがキツくないか心配で、やさしく着けてしまいがちですが、ゆるすぎないか一度確認してみてください。オムツをウエストまできちんとあげて、テープを思っているよりしっかり留めても、後ろ足の付け根に1本指が入れば大丈夫です。それでもズレるようなら、マナーベルトや、オムツカバー+サスペンダーなどアイテムを併用するとよいでしょう。
漏れてしまうのですが…
専用オムツがあります。
しっぽ用の穴からうんちが漏れて、愛犬がそれを踏んでしまい体もお部屋もうんちまみれに…ということがあると後片付けも大変ですよね。
うんちをキャッチできる袋の付いたオムツ(下記掲載の「うんぽパンツ」)なら、そんな悩みを解消できます。
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ズレ、ヨレ、回転を軽減!男の子専用マナーベルト。
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しみつき臭、黄ばみもスッキリ!肌に優しい尿臭専用消臭スプレー。
待つことが第一歩。根気比べです!
今までお外でトイレをするのが習慣だった子に、おうちの中でトイレをしてもらうには、練習が必要です。 「お外に行きたい」という要求を飼い主さんがいかに聞かずにいられるかがポイント。我慢しきれなくなって、漏らしてくれたら大成功!最上級に褒めてあげましょう。片づけるときは何も言わずにサッと。
この経験が続くことで「家の中でしても大丈夫なんだ!」と愛犬に認識してもらいましょう。
また、加齢により認知機能が低下すると、トイレへのこだわりなども無くなってくる場合が多いです。どうしても無理な子は、その時を待つのもひとつの手かもしれません。
ワンポイントアドバイス
私が働くケアホームにやってくる老犬たちの、飼い主さんのお悩みの1位が「夜鳴き」、2位が「お外でしかトイレできない」なんです。 ホームの子たちも、時間はかかっても次第におうちの中でトイレできるようになる子がほとんどです。練習の際は、おしっこを我慢しすぎて膀胱炎にならないように、無理せず行なってくださいね。
敷いただけの方がケアしやすい場合も。
もぞもぞと動かない愛犬の場合は、オムツをはかせるよりも、トイレシーツだけの方がムレ防止にもなり、ケアしやすくなります。
排尿後はシーツを換え、汚れた部分はこまめにケアして、毛の黄ばみや肌荒れを防止しましょう。
- ①
寝床の上に防水シートを敷きます。
- ②
その上にトイレシーツを二重に敷きます。
男の子は尿が前方に飛ぶため、お腹側の前方を広めに、女の子はお尻を中心に広めにシーツを敷きましょう。
汚れをケアするポイントは?
落として清潔を保つ!
食事や排泄の後など、汚れが落ちにくくなる前に手早く落とすことが大切。
ケアをしやすくするために、股間やお尻周り、しっぽの付け根などの毛は短くカットしておくといいでしょう。シャンプーする時は、とにかく時短で!
オムツを変えるには?
OK。簡単に替えられます。
<支えると少しでも立てる子は>愛犬と向かい合う形で、愛犬の肩を飼い主さんの足の間に挟んで立たせ、オムツを換えればリハビリにもなります。
<完全に寝たきりの子は>おしりなどを持ち上げなくても、体の下にオムツを通して替えることができます。
できなくなったら?
どんなケアが必要か、
動物病院で相談しましょう。手で膀胱を圧迫して尿を絞り出す(圧迫排尿)、肛門を綿棒や指先(手袋着用)で刺激して排便を促す、または便をかき出すなどの処置が必要になりますが、力の入れ具合などによっては内臓を傷つけてしまうことがあります。
中にはカテーテルを用いて排尿管理をしなければならないケースもあるため、どんなケアが適切なのかも含めて、動物病院でご相談くださいね。
ワンポイントアドバイス
高齢の子は、うまく排泄ができないと一気に体調が悪くなることがあります。「こんなことで病院に行ってもいいのかな…?」と思わず、おしっこやうんちが出ていないことが気になったら早めに病院で診察を受けてください。
寄せられた質問に、専門家が回答します。
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Q. シニア犬のおしっこの頻度はどれぐらいが適切ですか?
回答を読むA. 歳をとると膀胱がかたくなり、おしっこをためにくくなるため、頻尿になる子が多いです。
成犬時の回数をベースとすると、+2回くらいでしょうか。
お外でトイレをする子は、その回数を目安にお外に連れて行ってあげるとよいと思います。
愛犬の様子を見て、もらしてしまうようであれば回数を増やしてあげてください。
トイレに関して以外もそうですが、元気な時の生活のリズムや愛犬の様子を把握しておくことが、 異常なことが起こった時の早期発見につながります。 -
Q. おしっこしたがらなくても、時間を測ってさせるべきでしょうか。
回答を読むA. おしっこの回数にも個体差はありますし、愛犬の様子を見て大丈夫そうなら無理に連れて行かなくてもOKです。
寝たきりの子の場合は、自力で排尿できなくなっていることも考えられるので、早めに動物病院にご相談ください。 -
Q. 便秘なのですが、予防法はありますか?
回答を読むA. うんちがカチカチの場合は、水分が足りていません。
歳をとると、若いころ以上に水分補給が大切になりますので、気を付けてあげてください。
水分をとるには、フードをお湯でふやかして与える方法が手軽でおすすめです。
あとは「お水いる?」と声をかけたり、水飲み場に連れて行ってあげたりと、お水を飲む機会を意識して増やしてあげてくださいね。 -
Q. がんばってうんちを気張ってもなかなか出ず、あきらめてしまいます。何かしてあげられることはありますか?
回答を読むA. 水分をとることが大切なのはもちろん、食事にオイルをたらしてあげると、便がするりと出ることがあります。量の目安は、柴犬でティースプーン1杯くらいになります。(例えば…⇒フィッシュ4ドッグ サーモンオイル)
また、おしりの穴のまわりを指でもんであげたり、ベビーオイルを塗った綿棒でやさしくつつくなど、刺激して排便を促す方法もあります。 -
Q. うんちがゆるくなってきたのですが、どうしてでしょうか?
回答を読むA. 加齢により、消化機能も徐々に落ちていきます。そうすると、脂肪分の多いものや人間の食べ物などを与えた場合、上手に消化できずにうんちがゆるくなってしまうことがあります。食事内容を見直してみるのも一つの手です。 -
Q. うんちがゆるいため毎回おしりが汚れます。毎回洗うのは負担が心配なのですが、よいケア方法はありますでしょうか
回答を読むA. 毎回お風呂場で全身を洗って乾かして…となると大変ですが、トイレシーツの上でサッと部分洗いするくらいなら大丈夫だと思います。(トイレシーツの上でのお尻の洗い方はこちら⇒) 清潔を保つことは介護ではとっても大切なので、可能であれば毎回しっかり汚れを落としてあげてください。 -
Q. オムツをすごく嫌がるのですが、対処法はありますでしょうか。
回答を読むA. いきなり着けられるようになるのは難しいので、やはり時間をかけて少しずつ慣れてもらうしかないと思います。
その子のペースに合わせてゆっくり練習するのがコツ。いきなり長時間着けっぱなしではなく、最初は短時間から。
オムツを着けている間にその子が一番好きなこと(ごはん・おやつ・お散歩など)をして、着けていることが気にならなくなるようにしてあげてください。
最初は噛みついてくる子でも、数か月がんばって着けらるようになった子も。焦らないで、がんばりましょう! -
Q. オムツでかぶれてしまったら、もうオムツは使わない方がいいでしょうか。
回答を読むA. まずは病院で診察を受けて、かぶれをしっかり治しましょう。
同じ状況でオムツを使用すればまたかぶれてしまうので、なぜかぶれてしまったのか、その原因を考えてみてください。
1日に2~3回しかオムツを替えていなかったのであれば、替える回数を増やす、など原因に合わせて対処してあげましょう。 -
Q. オムツはペット用と人間の赤ちゃん用、どちらを使うのがいいですか?
回答を読むA. ペット用と人間の赤ちゃん用の大きな違いは、しっぽ穴の有無と、吸収体の位置です。
人間の赤ちゃんはあおむけの状態かつ寝返りなどで動くため、お腹からお尻の後ろの方まですっぽり吸収体で覆われています。
犬がそれを身につけると、背中の方まで吸収体が入っていることになるので、通常そこまでは不要になります。
しっぽ穴をあける手間を考えると、ペット用が便利です。
ただ、たまに認知症の症状の1つでゴロゴロと仰向けに寝る子がいますが、こういった子はペット用だと漏れることがあるので、人間の赤ちゃん用が安心の場合もあります。 -
Q. おしっこをした後も、ポタポタ漏れているようなのですが、どこか悪いのでしょうか。
回答を読むA. 人間と同じように、犬も歳をとると筋肉が衰えてきます。泌尿器系周囲の筋肉の老化によって、尿漏れが起きることがあります。
ただ、男の子の場合は原因として「前立腺肥大」も考えられるので、気になる場合は動物病院を受診してください。 -
Q. 歩きながらおしっこが出てしまうのですが、よくあることですか?
回答を読むA. よくあります。加齢による筋力や身体能力の低下によるものかと思われます。
動くことで、きばりやすいというのもあると思います。
起き上がる時や階段をのぼる時など、ちょっとお腹に力が入るときに漏れてしまう子もいますね。 -
Q. ヘルニアの子の排泄で、気を付けることはありますか?
回答を読むA. 会陰ヘルニアの場合は、うんちが出づらいので踏ん張ってしまいますが、踏ん張ることで症状が悪化することがあるので、排便の際は注意して様子を見てあげることが必要です。
腰のヘルニアで下半身が麻痺している場合は、圧迫排尿や排便の処置が必要となると思いますが、尿や便がちゃんと出きっていないことがあります。尿や便の量が少なすぎないか、お腹が張っていないかなど注意してあげてください。
ワンポイントアドバイス
終わりの見えない介護は不安が常に付きまといます。
いろいろなケアが必要になってきますが、完璧にこなす必要はありません。
大事な子が飼い主さんに求めているのは、完璧なお世話ではなくあなたの笑顔と優しさです。自分に合った動物病院や動物ケア施設などを事前に探しておき、辛くなった時にすぐ相談できる場所を準備しておくのも大切です。
「最期まで幸せでいてほしい。」そんな想いから
ペピイは愛犬の「介護」について様々な視点から真剣に取り組んでいます。
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