動物介護のプロ監修|シニア犬(老犬)の介護特集(食事編)
食べないときどうしたらいいの?寝たきりになったら?
そんな疑問に介護のプロがお答えします
安部 里梅 さん
動物病院での豊富な看護経験を活かした老犬介護のプロ。専門的で安心でき
る動物看護&介護を手助けする総合ケア施設を立ち上げ、代表を務める。
食べやすい環境が変わってきます。
食事内容・環境を整えてあげましょう。
1度に食べられる量が減ったなら、無理に1回で食べさせず、回数を増やしてみるのもひとつの手です。
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嗅覚や味覚が衰えた加齢により感覚器官が衰えることで、今まで食べていたご飯をおいしく感じなくなり、食べてくれなくなることがあります。
少量のトッピングや温めてみるなど、変化をつけてみて。 -
運動量や代謝が落ちた歳を取ると基礎代謝が落ち、筋肉量・運動量・消化器官の機能も低下します。運動量が落ちているけれどまだ元気に動ける子は、お腹を空かせるために気持ち多めに運動してみるのもいいでしょう。
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舌を動かす力・飲み込む力の低下舌を動かす筋力が低下して食べ物を奥へ運びづらくなったり、飲み込む力(嚥下力)が低下している場合があります。フードをやわらかくするなど、食べやすい工夫を。
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食事の姿勢がつらい足や首の筋力が落ち、姿勢を維持することがつらくて食べなくなる場合も。食事台で高さを変えたり、滑り止めマットを敷くなど、ラクな姿勢で食べられるようにしてあげてください。
気になる場合はお早めに獣医師さんにご相談ください。
どんなもの?
嗅覚を刺激します。
おやつを与えるのはあり?
なくさせないことが大切。
いつものフードを食べてくれない場合は、おいしいもの・大好きなものを与えることで“食べるスイッチ”を入れてあげましょう。その際、「もうちょっとほしいな」というところで止めておくのがポイント。例えばいつものフードの上に、おいしいものをひとさじだけ乗せてあげるだけで、パクパクそのまま食べてくれることがあります。
(腎臓に疾患がある場合は、獣医師さんとご相談ください。)
●かぼちゃを煮たもの ●お刺身を焼いたり煮たりしたもの etc…
のは、わがまま?
もちろんOKです!
ただし、食べるのに何十分もかかってしまうようなら、愛犬の負担にもなりかねません。その場合は、流動食などの方法をとった方が愛犬も食べ疲れせず、効率的になる場合があります。
いい食材や栄養は?
大切です。
水分不足は尿結石ができやすくなる他、急性腎不全や循環器障害、消化管潰瘍などにも影響すると言われます。
水飲み場を増やしたり、レトルトフードやスープなどを用いて食事に含まれる水分量を増やすといいでしょう。(鶏ささみのゆで汁を製氷皿で凍らせておけば、レンジでチンして使えて便利!)
ですが、食欲不振には病気が隠れていることも。愛犬をよく観察して、いつもと比べて明らかにぐったりしていて元気がない、行動に違和感がある、いつもは絶対食べるおやつを食べないなどの様子が見られたら、早めに病院で診察を受けてくださいね。
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乳酸菌配合でおなかに優しい。水分補給にもなるペーストおやつ。
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手でちぎれるソフトさ。お薬を隠すのにも使いやすい。
食事環境を考えてあげましょう。
低下していることが考えられます。
食べやすい食事内容・食事の環境を整えてあげましょう。
食べづらそうにしています
ふやかしてあげて。
それでもどうしてもうまく食べられない場合は、流動食を考えてみるのもいいかもしれません。
お湯をかけて芯までやわらかくし、食べるときは人肌程度まで冷まします。
ドライフードをミキサーなどで粉々にして保存しておくと、ふやけるまでの時間が短縮できます。
その子によって食べやすい柔らかさ・水分量が異なりますので、好みを見つけてあげましょう。
詰まらせることがあります
みてあげて。
また、頭を下げる姿勢が負担になっていることも考えられます。愛犬の体高に合った食器台を用意する、飼い主さんが手で食器を支えてあげるなど、体への負担を少なくするよう考えてあげてみてくださいね。
便秘や下痢が見られがちに。
また、季節の変わり目にはお腹の調子を崩すことが多くみられます。
病気が原因のこともありますので、気になる場合は獣医師さんに相談してくださいね。
改善できますか?
回数を見直して みましょう。
ドライフードを低脂肪・高繊維(ライト)のタイプに変更したり、お湯でふやかすなどしてみてあげてください。下痢の時は水分が体外に排出されてしまうので、お湯でふやかすことは水分補給にもなって◎。
また、一回の食事量を減らして回数を増やすことも、内臓への負担軽減につながります。
出ません
飲む機会を意識して増やして。
どうして?
ただし、病気が隠れていることも。
だけ負担の少ない食事環境にしてあげましょう。
ラクに楽しく食事ができるよう、工夫してあげましょう。
づらそうにしています
食器の高さを見直してあげて。
それより下だと頭が下がるので食べにくく、上だと食べ物がのどへ入り込み誤嚥・誤飲を引き起こす場合があります。
開いていきます。
床への汚れ防止にも。
ひっくり返ってしまいます。
して食べさせてあげましょう。
ずっと支えているのが大変な場合は、補助クッションを活用したり、車いすに乗せてあげれば、飼い主さんの負担が軽減されます。
やり方で行いましょう。
正しい姿勢は?
楽な姿勢 をとることがポイント。
中型犬以上の場合は愛犬の上半身を太腿の上にのせて食事介助を行います。愛犬と自分が密着しながら抱っこし、ひじや手首を使って支えることで、両手を使って介助ができます。
コツ・注意点は?
縦向けではなく横向けに。
スプーンにご飯を乗せるときは平らではなく山を作るようなイメージで、スプーンの横からかぶりつきやすいように与えてあげてください。
正しい与え方は?
ちゃんと飲み込んだか確認を
犬の口の端にシリンジの先端を差し込んで、少しずつ注入します。無理に流し込んで窒息しないように、与えるごとにちゃんと飲み込んだか確認するようにしましょう。
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食べやすい形に変えられる柔らかく軽いシリコン製食器。
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唇の端にあてがいやすい、横口タイプのシリンジ。
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粉末タイプの総合栄養食。流動食にも使えます。
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高たんぱく・高カロリー・高栄養な栄養補助食。
質問に、専門家が回答します。
- フード選びについて
- 食べないお悩み
- その他の質問
- 介護経験者のお悩み
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Q. シニア用フードに変えたほうがいい?タイミングは年齢で判断してOKですか?
回答を読むA. 一般的にシニア用フードは「7歳から」とされていることが多いですが、個体差がありますし、小型犬・大型犬というだけで全然違いますので、7歳になったからと言ってただちに変更する必要はないと思います。
シニア用フードは、栄養を効率的に吸収できるよう作られています。加齢により下痢が増えた…、おなかの調子がちょっと良くないことが増えた…という場合は、シニア用に切り替えてみるのもよいと思います。(グラム当たりのカロリーが低めなことが多いですが、吸収率が良いため結果的に成犬用よりも多くの栄養を吸収できている場合もあります) -
Q. 歯が丈夫でも、消化吸収の良さを考えて、やわらかいフードにした方がいい?
回答を読むA. 下痢や便秘などおなかの調子が悪く、消化吸収の良い食事にしてあげたいときや、水分不足が気になるときなどは、ドライフードをふやかしてあげたりウェットフードを活用するのはとても良いと思います。
犬は基本的には食べ物を人間のように奥歯でかみ砕いたりすることはなく丸飲みしますので、「やわらかいものばかり食べていると歯が弱る…」ということはありません。状況に応じて判断してあげてください。 -
Q. どうしても食べてくれない時に、ドライフード以外の食材をどこまであげてもいいのでしょうか。
回答を読むA. なかなか食欲がわかない時には、「これなら食べる」というものを探して色々な食材をあげるといいと思います。味付けせずにグリルしたチキンや、お刺身を焼いたり煮たりしたもの、雑炊なんかだと水分も取れていいですね。
ただし、それを1回にたくさんあげすぎないことが大切です。あくまで“食べる気持ちになるスイッチ”を入れるための、とっておきの食べ物として活用しましょう。「もう少し食べたいな…」というところでやめるのがコツです。 -
Q. 食べない時、最低限何をどのくらい与えたらいいでしょうか。
回答を読むA. 1回の食事量で判断するのではなく、1日・1週間の単位で考えて、必要な摂取量がクリアできているのであればOKです。シニアになると、天候・気温差・気圧が体調に影響しやすく、それによって食欲が低下してしまうことがよくあります。「1回の食事で絶対これだけ食べないといけない!」と考えるのではなく、少しでも食べてくれたら徐々に量を増やしていったり、朝はあまり食べてくれないのであれば夜に量を増やしたり、様子を見て調整してあげてくださいね。
ただし、ぐったりしているなど愛犬の様子がいつもと比べておかしいと感じたら、病気が隠れている場合があるため、早めに動物病院を受診してください。 -
Q. 少量でも栄養がとれる食材が知りたいです。
回答を読むA. お肉や野菜などの食材では、効率よく高栄養を摂ることはやはり難しいです。
動物病院では、回復期サポートの缶詰や、エネルギーチャージ用のおやつなど、少量で高栄養の物を扱っていますので、獣医師さんに相談してみてくださいね。 -
Q. 認知症で食べムラや偏食になることはありますか?
回答を読むA. 偏食は無いと思いますが、食べムラはあります。
食べムラが起こる要因としては、認知症の子は「ごはんを食べる!」というスイッチが入りにくいことがあるためです。数分待つと食べてくれる場合もあるので、スイッチが入るのを待つか、1度に食べきるのが難しいならば少量にして回数を増やすなど、工夫をしてあげてください。 -
Q. 朝ご飯を食べてくれなくなって困っています…。適切な食事のタイミングや回数を知りたいです。
回答を読むA. 歳をとると消化器官の動きが悪くなるため、朝一番にご飯を食べたくなくなるのは普通のことです。人間も同じですね。
どうしても朝・昼・晩に食べる必要はありません。例えば、夜の方が食べてくれるなら、朝は食べられるものを少量にし、メインは16時・20時・23時の3回にしてもOK。一日に必要な栄養やカロリーが摂取できるのであれば、いつ食べても大丈夫です。
ただし、食事回数については1日最低2回以上に分けて与えてあげてください。1日1回きりだと、内臓の負担になったり、空腹の状態が長く続くことで低血糖になる恐れがあります。 -
Q. 食欲がすごくて、太ってきています…。
回答を読むA. 空腹・満腹の感覚が鈍くなってきて、何度もご飯やおやつを要求してくる子もいます。そんな時は、おやつではなくゆでたお野菜などを与えてみてはいかがでしょうか。野菜は食べてくれない…という子も、例えばお野菜の入ったお皿を家族の食卓の上に置いておいて、そこからあげれば「みんなと同じもの=おいしいもの」と思って食べてくれることがあります。
空腹で夜中起きてしまう子は、就寝前にダイエットフードを上手に使うのもありです。ダイエットフードには繊維質が多く含まれているため、腹持ちがいいので満足感が得られます。 -
Q. 胃捻転のリスクについて知りたいです。
回答を読むA. シニア期では、胃捻転のリスクは高くなります。加齢により胃のまわりの筋肉が衰え、胃が揺れやすくなるためです。大型犬の症例が多いですが、小型犬・中型犬なら胃捻転にならない、というわけではありません。
胃捻転を予防するには、「食後に体を動かさない」ことが大切。ご飯を食べた後は静かに過ごして、運動やお散歩は避けましょう。寝たきりの子は、体位変換は食前に済ませて、食後にはしないようにしてください。(一度に大量のお水を飲んだ場合にも、胃捻転のリスクは高くなります。) -
Q. 歯みがきができないので口臭がひどく、口内環境が心配です。シニアの今からでもできることは?
回答を読むA. 咬みつかない子であれば、ガーゼで少し拭いてあげるだけでも全然違うと思います。ただし、認知症になってくるとお口に手を入れることは非常に難しいですね。
それ以外でできるケアとしては、「食後にお水を飲ませる」ことです。もちろん歯みがきほどの効果はありませんが、それだけでも口内の汚れはある程度落ちてくれます。自分でお水飲めない子は、シリンジを使って飲ませてあげます。(シニアの子は飲水が刺激になるので、飲ませすぎには注意してくださいね)
他には、腸内細菌(ビフィズス菌)の力で口臭ケアができるものを使うのもありです。お口が臭いと、いくらかわいい愛犬でも「嫌だな…」と思ってしまうものですが、口臭が改善することで距離が縮まってより良い関係性を築くことができると思います。
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Q. (Aさん)
腎臓病は急性でない限り治らないので腎臓病用の療法食を与えるのはわかるが、残された命が短いのにおいしいものをあげられない、おやつもあげられない。治らないなら寿命を縮めてもおいしいものを食べさせるべきか悩んでいます。
(Bさん)
口からの食事を受け付けなくなった時、鼻からチューブを通して流動食を摂らせたのですが、本犬の望んだことではなく苦しかったのではとずっと後悔しています。(経管栄養で6ヶ月頑張ってくれました)回答を読むA. もっと一緒にいたいけれど、果たしてうちの子はそれを望んでいるのか…。いくら考えても答えが出ない、難しい問題ですね。
後悔しないために大切なのは、「犬の幸せがどこにあるか」「飼い主さんが愛犬とどう向き合いたいのか」を考えることだと思います。私は、犬の一番の望みは“大好きな飼い主さんが笑顔でいてくれていること”だと思っています。飼い主さんが自分のことを考えて判断してくれたことであれば、愛犬は受け入れてくれるはず。
腎臓病に関しては獣医師さんの治療方針にもよりますが、残された命が短いのであれば、おいしいものを少量あげて楽しいひと時を過ごすのも大切な思い出になります。
経管栄養での食事も、かわいそうだと考えるのではなく、「上手に栄養が摂れてよかったね、えらいね」と笑顔で誉めてあげるほうが、愛犬は嬉しいはずです。
病気や怪我が主役になるのではなく、どんな時も愛犬と幸せに暮らすことを大切にする「グリーフケア」という考え方があります。
最後まで感謝と愛情をもって愛犬と接することができるヒントが書かれていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
いろいろなケアが必要になってきますが、完璧にこなす必要はありません。
大事な子が飼い主さんに求めているのは、完璧なお世話ではなくあなたの笑顔と優しさです。 自分に合った動物病院や動物ケア施設などを事前に探しておき、辛くなった時にすぐ相談できる場所を準備しておくのも大切です。
ペピイは愛犬の「介護」について様々な視点から真剣に取り組んでいます。
ペピイのシニア・介護コンテンツをご紹介します。