【動物介護のプロ 監修】シニア犬の介護特集(認知症)

犬の認知症 症状と対処法
人間でもよく耳にする「認知症」は犬でも発症することがあります。
認知症ってどんな病気?発症したらどうすればいいの?
獣医師・髙栁先生に、対処法や安全対策をお聞きしました。

監修

成城こばやし動物病院
獣医師 髙栁かれん先生

2018年 日本獣医生命科学大学卒業後、
獣医師として成城こばやし動物病院に勤務。

髙栁かれん先生
SENIOR-DOG KAIGOSERIES

Q1.犬の認知症ってどんな病気?

老化などによって認知機能が低下し、
「行動の異変」となって現れる病態です。

同じ場所をうろうろ歩き回る「徘徊」、「夜鳴き」などの症状が現れることがあります。
発症しやすいのは11~12歳を過ぎるころからといわれていますが、生涯発症しない犬もいます。

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Q1 case1

「認知症かも?」と思ったら
病院に行くべき?

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気づいた時に受診しましょう。
病気が隠れている場合も。

認知症かどうかは飼い主さんが自己判断するのではなく、動物病院で判断してもらいましょう。「病気ではない」という確認が、まずはとても大切です。

「これって認知症かな?」と気が付いた時が、病院を受診する目安です。

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これって本当に認知症?
\ 例えば「うろうろ歩きまわる」ときに考えられる理由 /

  • 認知症の場合

    認知機能の低下により、目的がないのにうろうろとあてもないように歩き回ります(徘徊)。

  • 老化の場合

    視力や聴力の低下、体が思うように動かせないといった、老化からくる体の変化に不安やストレスを感じ、それを紛らわせるためにうろうろと歩き回ることがあります。

  • 病気やケガの場合

    脳腫瘍やてんかん、または関節などの痛みを紛らわせるために歩き回っている場合もあります。首がガクッと傾く・円を描くようにグルグル旋回する様子が見られる場合は、「前庭疾患」の可能性が。早めに病院に相談してください。

Q1 case2

動物病院では、
どんな検査をするの?

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まずは、隠れている病気が
ないかを確認します。

まずは一般的な検査によって、体重の変化や食事量・運動量(筋肉量の変化)などを確認。そのうえで、血液検査、レントゲン、超音波、CT・MRIなどを行い、隠れている病気がないかをチェックします。
そして、その子の状態や年齢、症状から総合的に評価をし「認知症」か否かを診断していきます。

\ワンポイントアドバイス/

動物病院で愛犬の症状を伝えるときは
動画を撮影しよう。

夜鳴きや徘徊の様子など、愛犬の行動をスマートフォンの動画で撮影しておけば、獣医師さんに伝わりやすく、診察に役立ちます。

Q1 case3

認知症は治るの?

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治すことは難しいですが、
早期発見が大切。

認知症は「脳の老化」なので治すことはできませんが、進行を緩やかにしたり、飼い主さんと愛犬が暮らしやすいよう環境を整えていくことでお互いの負担を軽減することができます。
そのためにも、早期発見することが大切ですので、「ちょっと変かも?」と思ったら動物病院を受診してくださいね。

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Q2.どんな症状があるの?

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夜鳴きや徘徊の他、「排泄の失敗」や「反応の鈍化」なども。

夜鳴きや徘徊が有名ですが、今までできていたことができなくなったり、名前を呼んでも反応がないなどといったことも症状の一つです。
個体差や進行の度合いによる違いがありますが、末期になるとこれらの症状が重くなったり、頻度が高くなったりする傾向にあります。

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~認知症の症状チェックリスト~

行動の変化
うろうろ
  • 目的なく歩き回る(徘徊)
  • グルグルと同じところを回っている(旋回)
  • ぼんやりしている
  • 飼い主さんや他の犬と遊ばなくなった
  • 犬の気を引くことが難しくなった
方向感覚・認知に関する変化
あれ?
  • 隙間に挟まる、障害物をよけられない
  • 飼い主さんやなじみのある人が認識できない
  • フードが見つけられない
  • 反応が鈍い
睡眠サイクルの変化
ワンワン!
  • 夜間にあまり眠らない、うろうろする
  • 夜鳴きをする
排泄行動の変化
ワンワン!
  • それまで上手にできていたのに、
    トイレ以外の場所に排泄するようになった
不安感の変化
ぶるぶる
  • 飼い主さんから離れた時の不安感が増えた
  • 新しい環境や音などに対する恐れが増えた
Q2 case1

壁にぶつかって、じーっと
しているのですが…

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認知症の症状
の可能性があります。

グルグル動いて、壁にぶつかってじーっとしているという行動は、認知症の症状だと思われます。壁にぶつかっているということが認識できず、悩んでいる状態。「ここどこ?」「前に進めない…」と自分なりに色々と考えているのだと思います。

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Q2 case2

認知症で食べムラや
偏食になることはる?

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偏食は無いと思いますが、
食べムラはあります。

食べムラが起こる要因としては、認知症の子は「ごはんを食べる!」というスイッチが入りにくいことがあるためです。数分待つと食べてくれる場合もあるので、スイッチが入るのを待つか、1度に食べきるのが難しいならば少量にして回数を増やすなど、工夫をしてあげてください。

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Q2 case2

トイレが分からなくなった
のは、視力の低下?

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視力のせいではなく、これも
認知症 の可能性があります。

犬は元々視力がよくないので、視力に頼って生活していないため、トイレが分からなくなるのは認知症の症状の可能性があります。他のことは覚えていてもトイレの場所だけ突然忘れてしまう、などということはよくあることです。
トイレ以外の場所に排泄してしまう場合は、トイレシーツの範囲を広げる、こまめにトイレに誘導してあげるなど、愛犬が「失敗しにくい」環境を整えてあげることが大切です。

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Q3.お困り行動への対処法って?

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その子に合った環境を整えることで、
飼い主さんの負担も軽減できます。

認知症の愛犬のケアは飼い主さんにとって決して簡単なものではありません。ですが、飼い主さんと愛犬が暮らしやすいよう環境を整えていくことで、お互いの負担を軽減することができます。

Q3 case1

「昼夜逆転」を
どうにかしたい!

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日中のコミュニケーション
をできるだけ増やしましょう。

認知症の子は、日中に睡眠をとり夜中に活動するといった“昼夜逆転”の生活になりがちです。そのような生活リズムが夜鳴きにつながることも多いため、日中は積極的にコミュニケーションを取り、犬が起きている時間を増やすような工夫をしましょう。

\生活リズムを整えるには/

  • 朝が来たら、愛犬も一緒に起こす
  • 太陽の光を浴びさせる(日光浴)
  • 外の空気に触れさせる
  • 日中は適度な運動を(お散歩、おうち遊び) 意識して、愛犬への声掛けを増やす

▼ 更に詳しく知りたい方はこちらをCHECK! ▼

【特集】昼夜逆転・夜鳴きの
お悩みについて

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Q3 case2

「徘徊」するので
目が離せません…

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「安全に歩ける環境」
を用意してあげましょう。

認知症が進行すると空間の認識が上手にできなくなったり、くるくると旋回をしたりすることがあります。心配でつきっきりでお世話をしたり、隙間に挟まるたびに鳴いて呼ばれて…では大変ですよね。「安全に歩ける環境」を整えることは、ケガの防止だけでなく、飼い主さんの負担を軽くすることにもつながります。

\危険な場所に対策しよう/

  • 角:ぶつかっても痛くないよう、緩衝材などを取り付けてあげましょう。
  • 隙間:挟まって身動きできなくなることが。隙間をふさいであげましょう。
  • 段差:階段・ベランダには柵を設置して立ち入らせない工夫を。

▼ 更に詳しく知りたい方はこちらをCHECK! ▼

【特集】徘徊の安全対策について

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おすすめグッズ

-角・隙間の対策-

  • 家具の角や隙間をガード。
  • ぶつかっても痛くない、やわらか素材。
  • 小型犬用、中型犬用の2種類から選べます。
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粗相の掃除がすごく大変です

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おむつのなどアイテム
片付けの手間を減らしましょう。

粗相の対応は、飼い主さんの大きなストレスの1つになると思います。
トイレのスペースを広くする、囲い付きのトイレを使用するなど「愛犬がトイレを失敗しにくい環境」を整えたり、犬用おむつを使用するのもおすすめです。片付けや掃除の負担が減ることで、愛犬と穏やかに過ごせる時間が増えます。

\失敗しにくい トイレ環境 4つのポイント/

  1. トイレを寝床に近い場所につくる
  2. トイレの数を1~2ヶ所増やす
  3. トイレの周囲にもシーツを敷くなど、
      トイレ場を少し広くする
  4. なるべくこまめにトイレに誘導する

失敗する時の状況をよく観察。「トイレに行こうとしているのに、間に合っていない」なら①②④、「トイレでしているつもりだけど、はみ出している」ならなど、状況に合わせて工夫してあげてくださいね。

▼ 更に詳しく知りたい方はこちらをCHECK! ▼

【特集】トイレのサポート・介助について

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おすすめグッズ

  • 大きいサイズで、壁に囲われているのではみ出しの失敗を軽減。
  • 軽量なので場所移動ラクラク。
  • 水を弾く素材だからお手入れはサッと拭くだけ。
  • 排便時にしっぽが上がることで袋が広がりうんちをキャッチ。愛犬も床も汚れません。
  • アレンジすれば、いろんな尻尾の子に対応できます。
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Q4.認知症の予防&進行を遅らせるには?

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脳に「よい刺激」を与えてあげることが大切です。

愛犬の脳に「よい刺激」を与えることは、認知症の症状を遅らせることや、予防につながります。高齢だからと言っておうちの中で寝てばかりいると、かえって認知症は進行してしまいます。「よい刺激」の例を次にご紹介しますので、ぜひ実践してあげてくださいね。

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  • お散歩

    お散歩は、匂いを嗅いだり景色を見たり、風を体に受けたりと、五感に刺激を与えてくれます。体力・筋力維持にもつながりますので、健やかに暮らすためにはとっても大切なことです。
    シニアになるとお散歩を嫌がる子がいますが、嫌がる理由を解決できる場合はしてあげて、無理のない範囲で少しでも連れ出してあげたいですね。

    お散歩を嫌がる理由って? 詳しくは…

    特集「歩行サポート編」Q4へ
  • 飼い主さんと一緒に遊ぶ

    歳をとると自分から遊ぶことは減りますが、飼い主さんから誘ってあげれば喜んでくれることも。隠したおやつを見つける「知育おもちゃ」なら、嗅覚と頭を使うのでとってもいい刺激に。飼い主さんとのコミュニケーションにもなり、絆を深めることにもつながります。

  • 日光浴

    歳をとると、日中寝ていることが多くなりますが、愛犬も一緒に起こして、太陽の光を浴びさせてあげましょう。体内時計を正常な状態に戻すなど、良い効果がたくさんあり、昼夜逆転や夜鳴きの予防・改善にもなります。

  • 声をかける

    日中、起きていてもボーとしている時間が増えてきます。
    名前を呼んであげたり、「かわいいね」「今日はいい天気だね」と意識して声をかけてあげることで、脳への刺激になります。家族にもぜひ協力してもらいましょう。

  • マッサージ

    お散歩も嫌がるし、遊びに誘っても反応がいまいち…という時は、コミュニケーションの一環として、マッサージをしてみてはいかがでしょうか。
    凝り固まった筋肉をもみほぐすことで、歩きづらそうだった子が歩きやすくなったり、「右足を触ると嫌がる」「尻尾にしこりがあるかも?」など見た目だけではわからないことに気付けます。 ※ケガや病気の疑いがある場合は、まずかかりつけの獣医師さんにマッサージしてもよいかご確認ください。

    マッサージの方法について 詳しくは…

    [コラム]うちの子ともっと仲良く♪ふれあい愛情マッサージ

\認知症予防にいい食べ物やサプリって?/

不飽和脂肪酸・抗酸化作用
のあるものを摂りましょう。

不飽和脂肪酸の多く含まれる、いわし・さばなどの青魚や、まぐろ、かつおなどは認知症予防に効果があります。これらを多く含んだフードもありますが、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのサプリメントで補うことも可能です。

「抗酸化」も認知症予防に有効です。抗酸化作用のある食材(トマト・ブロッコリー・ニンジン・鮭・イワシ・アマニ油など)を使って手作り食で工夫することができますが、ビタミンCやビタミンEなどのサプリメントで抗酸化を図ることもできるでしょう。獣医師さんと相談したうえで、愛犬に適したものを選んでみてください。

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サプリメント一覧

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Q5.認知症の介護で大切なことは?

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ひとりで頑張らない!
「飼い主さんの体力と睡眠」を確保して。

認知症の症状による様々な変化は、対応に困ることも多いと思います。
夜鳴きや昼夜逆転、度重なる粗相の片づけ…睡眠不足に陥ってしまう飼い主さんも少なくありません。ですが、睡眠不足は正常な判断能力を奪ってしまいます。
そうならないために、愛犬のことだけではなく、飼い主さん自身を大切にすることを忘れないでください。

  • 家族と協力する

    毎日のお世話も、家族と分担することで負担軽減に。
    色んな人が声をかけてくれることが、愛犬へのよい刺激にもなります。

  • 信頼できる専門家を見つける

    しんどい時に相談できたり、短時間でも預けられる先を見つけておくことはとても大切です。少しでも自分だけの時間を持つことができれば、心に余裕が生まれ、愛犬に対して笑顔でいられる時間も増えます。
    ショートステイを受け入れている動物病院や、動物介護施設を調べておきましょう。

  • ご近所への挨拶

    昼夜逆転や夜鳴きが始まると、近隣のお宅に迷惑になっていないかと精神的な負担に悩まされる飼い主さんが多いです。近くに住んでいる方に事情を説明しておけば、だいぶ印象はちがいます。大変ではありますが、ぜひやっておきたいことです。

  • 安定剤や睡眠薬という選択肢を知っておく

    昼夜逆転や夜鳴きがひどい場合、睡眠薬を使うことは決して悪いことではありません。「自分がツラいからって、薬を飲ませていいの?」と思うかもしれません。でも、飼い主さんがツラいと感じている時は、わんちゃんも眠れなくてしんどい状況にあるのではないでしょうか。
    もしツラいと感じたら、動物病院にご相談ください。

獣医師 髙栁先生より

認知症の介護は不安なことがたくさんあると思いますが、今後どのような事が起こりうるのかを先に知っておくだけでも、準備や心構えが出来るでしょう。介護について気になることがあるときには、ぜひかかりつけの獣医師や愛玩動物看護師に相談してみてください。
成城こばやし動物病院 獣医師 髙栁 かれん先生
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大切なうちの子のシニア期・介護のことPEPPYとともに。

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