シニア猫だからこそ、元気でいて欲しい
健康寿命を延ばすために気をつけたいポイント6選
猫の老化は気づきにくいと言われます。いつまでも若いように思えて10歳ならシニア期の入り口となり、13歳なら人間の65~68歳程度。もう立派なシニア猫です。若い頃と同じというわけにはいきません。しかし、「年だから仕方ない」と諦めるのではなく、シニア猫に見合った対処をすることで、QOLを上げるとともに健康寿命を延ばすことも可能となります。
愛猫を少しでも健やかに過ごさせるために、もう一工夫してみませんか? そのためのヒントをお伝えします。
1.シニア猫にとっての室内環境
日本国内では猫を外に出さず、室内のみでの飼育が主流となりました。その分、シニア猫にとっての室内環境は大事な要素となります。
シニア猫の室内環境を考える時、考慮したいのは主に以下の3つ。
1. 段差・高さ
2. 室内温度・湿度
3. 滑りやすい床
そして、補足として以下を付け足すこともできます。
4. シニア猫向けの爪とぎ
元来、高い場所を得意とする猫でも老化に伴い段差や高い場所への上下動に難儀するようになります。しかし、シニア猫なりに高いところへ上りたい欲求はあるはずですし、かつ、少しでも身体機能を維持するために適度な運動は必要です。
そのためには段差や高さ、上り下りのさせ方を調整する必要が出てきます。
また、シニア猫は体温調節がしづらくなってくるので、季節によって温かい場所・涼しい場所を用意し、室内温度と湿度にも気を配りたいものです。
さらには、足腰の弱ったシニア猫には滑りやすい床は負担になり、関節炎がある場合は症状が悪化することもあるので、滑り止め対策も必要です。
補足として、爪とぎもあまりしなくなってくるシニア猫では、楽な姿勢で爪とぎができるよう爪とぎのタイプ(形)を見直してみるのもいいでしょう。
さらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。⇒「シニア猫だからこそ、元気でいて欲しい 健康寿命を延ばすために気をつけたいポイント:①室内環境編」
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/994
2.シニア猫にとっての運動・遊び
シニア猫でも無理のない範囲で適度な運動や遊びは必要です。
運動や遊び、また、それらから受ける刺激が不足すると筋肉量の低下、関節機能の低下、肥満、ストレスなどを招く他、認知症のリスクも高まってしまいます。
特に筋肉は体を動かす他、姿勢の維持や体温調整、血液の循環などにも関わるので、シニア世代の猫にとって筋肉を維持することはとても重要となります。
ただし、運動と言っても気負う必要はありません。上り下りが楽になるよう低めのキャットタワーに替える、知育玩具を使う、ご飯をキャットタワーの上に置いて食べさせるなど、ほんの少しの工夫で負担少なくシニア猫に運動をさせることが可能です。
シニア猫の運動と遊びについて、さらにはこちらの記事をご覧ください。⇒
「シニア猫だからこそ、元気でいて欲しい 健康寿命を延ばすために気をつけたいポイント:②運動・遊び編」
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/995
3.シニア猫にとっての睡眠
猫もシニアになると寝ている時間が多くなります。だからこそ、より良い睡眠環境を整えたいものですが、そのポイントとなるのは以下の5つです。
1. 猫にとって心地よいベッド
2. 寝場所の安全対策
3. 温度・湿度管理
4. 落ち着ける環境
5. 日光浴・光の調整
猫は体がすっぽり収まるような寝場所を好む傾向にありますが、市販されている猫用ベッドの中には季節や好みで形を変えられるタイプのものもあるので、そうしたベッドを利用してみるのもいいでしょう。
ソファや出窓の床板など高さのある場所で寝ることを好むシニア猫では、関節の保護と落下防止にステップを設置する、下にマットを敷くなどして対策を。
また、ストレスに弱くなるのもシニア猫です。何がストレス要因になるかはそれぞれですが、たとえば来客が苦手な猫であるなら、来客とは会わずに済むようなところに寝場所を作るなどしてストレス回避をし、極力静かで安心できる環境を作ることも睡眠には大事です。
その他、日光を浴びることで神経伝達物質であるセロトニンが分泌され、さらにセロトニンの分泌によって別名“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンが作り出されるので、適度に日光浴をさせるのもいいでしょう。ただし、日光の浴び過ぎはかえって弊害を招くことがあるので、長時間にならないようお気をつけください。
一点注意なのは、寝ていることが多くなった原因は加齢だけとは限らないということ。病気やケガによって体に痛みや息苦しさ、だるさなど不調があって寝ている場合もあるので、愛猫の様子をよく観察し、少しでも気になる時には早めに動物病院へ行くことをおすすめします。
睡眠について詳しくはこちらの記事をご覧ください。⇒「シニア猫だからこそ、元気でいて欲しい 健康寿命を延ばすために気をつけたいポイント:③睡眠編」
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/996
4.シニア猫にとっての食事
シニア猫は運動量が減ることから食事量も少なくなる傾向にありますが、そんなシニア猫に与える食事のポイントを6つピックアップします。
1. 良質なタンパク質
2. 消化の良い食べ物
3. 十分な水分
4. 関節をサポートする成分を摂り入れる
5. 塩分やリンは控えめに
6. 猫の状況に合わせて低カロリー/高カロリーを選択
筋肉を維持するにはタンパク質が必要であるため、筋肉量が落ちるシニア猫では良質なタンパク質を摂ることが大事となります。
同時に機能が低下する消化吸収システムをサポートするために消化の良い食べ物が望まれますし、十分な水分が摂取できるよう食事の水分量を増やすなどの工夫も必要です。
また、関節の維持、関節炎の予防・症状緩和にはグルコサミンやコンドロイチン、オメガ3脂肪酸など積極的に摂り入れたい成分です。
そして、猫に腎臓疾患が多いことを考慮すると塩分やリンは控えめにするのがいいでしょう。さらに、猫の食事量や栄養状態によって低カロリー食と高カロリー食を使い分けるのが理想的です。
その他、状況により、食事の与え方にも工夫が必要な場合がありますが、詳しくはこちらの記事をご覧ください。⇒「シニア猫だからこそ、元気でいて欲しい 健康寿命を延ばすために気をつけたいポイント:④食事(ごはん)編」
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/997
5.シニア猫が気をつけたい病気
シニアになると病気のリスクも高まりますし、シニア猫でよく見られる病気もあります。
病気は予防、そして早期発見早期治療が何より望まれます。なるべく早めに異常に気づけるよう、シニア猫で注意したい病気について予め知識を得ておくといいでしょう。
以下はその代表的な病気の例です。
1. 慢性腎臓病(慢性腎不全)
2. 変形性関節症(変形性脊椎症)
3. 甲状腺機能亢進症
4. 肥大型心筋症
5. 糖尿病
6. 便秘
7. 歯周病・歯科疾患
それぞれの病気についてはこちらの記事をご覧ください。⇒「シニア猫だからこそ、元気でいて欲しい 健康寿命を延ばすために気をつけたいポイント:⑤病気編」
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/998
6.そもそも猫の老化サインとは?
冒頭でも述べたように猫の老化は気づきにくいと言われます。
ほんとうはすでに十分シニアであるのに若い頃と同じままの生活を送らせていると猫にとっては辛いかもしれません。状況によっては持病が悪化することもあるでしょう。
何より、猫のQOLが下がり、ひいては寿命にも影響する可能性があります。
体の機能や気持ちも衰えるシニア猫では、やはりその猫の状況や年齢に合った生活環境の改善が必要です。そのためにはなるべく早めに老化のサインに気づけること。これが大きなポイントになります。
その老化サインは、「行動の変化」「体の変化」「食事の変化」「排泄の変化」の4つのカテゴリーに分けることができますが、どれもが日々の観察によって気づけることばかりです。さらに言えば、日頃から愛猫の行動、性格、癖、ご飯の食べ方、水の飲み方、排泄の仕方・回数・量などを把握しておくことが大事でしょう。それだけ早く変化に気づけるわけですから。
では、実際の老化サインにはどんなものがあるのか? 詳しいことについては、こちらの記事をご覧ください。⇒「シニア猫だからこそ、元気でいて欲しい 健康寿命を延ばすために気をつけたいポイント:⑥老化のサイン編」
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/1000
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足腰の弱った猫に
厚さ0.5mmのフラットなシリコンマットで、四隅にトイレシートを止めるストッパーがおり、シートのよれやめくれを防ぎます。連結してサイズを広くすることも可能。水洗いできるので衛生的です。周囲にパーテーションをつけることもできるので、出入り口を作ることもできます。
詳しくはこちら
7.まとめ
猫の寿命は人間に比べてはるかに短く、縁あって一緒に暮らせるようになったとしても、一緒にいられる時間は思ったほど長くはありません。
いつまでも子猫の愛らしさのままにいるように思ってしまいがちですが、やがては成猫になり、ふと気づけば年老いたものだけがもつ渋さと貫禄を漂わせた老猫へと年を重ねています。
そんな愛猫の背中を撫でた時、これまで一緒に過ごしてきた時間の数々が思い出されることでしょう。生きるとは、老いることでもあります。そして、日々の積み重ねが如実に表れるのもシニア期です。
だからこそ、愛猫に少しでも長く健やかでいて欲しいと願うのならば、若い頃から環境や運動・遊び、睡眠、食事、病気予防などに配慮するとともに、老化のサインに早めに気づけるよう努力し、それらをシニア期に見合ったものにシフトしつつ、健康長寿を目指してください。
しかし、寿命はそれぞれです。何より、その日その時間は二度と戻らないのですから、一緒にいられる時間を大事にお過ごしください。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医 獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。