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犬の眼が白くなる「白内障」ってどんな病気?

犬の眼が白くなる「白内障」ってどんな病気?

「最近ものによくぶつかるし、目が見えづらいのかな?…」「なんだか眼が白っぽくなってきたみたい…」、愛犬にそんな症状があったら白内障になっているのかもしれません。白内障は老犬に多い眼疾患というイメージがありますが、若い犬でも発症し、遺伝的に白内障になりやすい犬種もいます。意外と身近な病気である白内障。その原因や症状、治療法など知っておきましょう。

1.犬の白内障ってどんな病気?

犬の眼は最前部に透明な組織である角膜があり、その後ろに前眼房・後眼房と呼ばれる空間を挟んで水晶体が存在します。

水晶体はタンパク質と水で構成された柔軟性に富む組織で、外から入ってきた光を屈折させて眼の奥にある網膜に画像を映し出し、ピントを合わせる役割を担っています。そのため度々「カメラのレンズ」に例えられます。

この水晶体内のタンパク質が濁ることで白濁が起こり、眼が白っぽくなりますが、タンパク質の変性(白濁)は自然に元の状態に戻ることはなく、進行していきます。これを白内障と言います。

参考までに、白内障に似た眼疾患として水晶体が青白くなる核硬化症がありますが、白内障と区別しにくく、動物病院での検査が重要となります。

2.犬の白内障の原因

犬の白内障の原因

では、白内障が起こる原因はどこにあるのでしょうか? それには主に以下のようなものが挙げられます。

加齢

⇒【老齢性(加齢性)白内障】

加齢に伴う酸化ストレスによって水晶体に障害が生じることがあります。

私たち人間や動物には生きていくにあたり、活性酸素(呼吸をすることで体内に摂り込んだ酸素の一部が化学反応を起こすことで発生し、他の物質を酸化させてしまう)から生じる毒性を消すだけの体の仕組みが備わっていますが、このバランスが崩れると体が酸性に傾いてしまいます。これを酸化ストレスと言います。

簡単に言うと、酸化ストレスによって細胞自体の機能に障害が起こり、体も“錆びて”いくということ。

酸化ストレスは加齢や紫外線、糖尿病のような病気、大気汚染、薬剤、過度な運動、ストレスなど様々なものが要因となります。

外傷

⇒【外傷性白内障】

眼に強い衝撃を受ける、草や木の枝で眼をつつくなど眼球をケガすることによって白内障につながることがあります。

遺伝

⇒【遺伝性白内障】

遺伝的に白内障になりやすい傾向にあるとされる犬種がいます。以下のような犬種は1歳頃から眼の検査を受けておくといいでしょう。

  • プードル
  • 柴犬
  • ジャック・ラッセル・テリア
  • ヨークシャー・テリア
  • ボストン・テリア
  • ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • シルキー・テリア
  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • ミニチュア・シュナウザー
  • ダックスフンド
  • チワワ
  • ビーグル
  • シー・ズー
  • マルチーズ
  • ビション・フリーゼ
  • フレンチ・ブルドッグ
  • ラブラドール・レトリーバー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ジャーマン・シェパード・ドッグ  など

糖尿病や甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、低カルシウム血症など眼以外の病気の影響

⇒【代謝性白内障】

糖尿病では白内障を併発しやすいことがよく知られていますが、このような代謝性疾患ではホルモンや血中のミネラル成分などの異常が生じることで水晶体に老廃物が蓄積されたり、細胞膜が破壊されたりして白内障につながることがあります。

ブドウ膜炎や汎進行性網膜萎縮など他の眼疾患の影響

⇒【続発性白内障】

他の眼疾患から白内障を併発することがあります。

中毒

⇒【中毒性白内障】

薬物の中毒反応として水晶体に白濁が起こり、白内障になることがあります。

3.犬の白内障の分類と発症年齢

犬の白内障は、「先天性白内障」と「後天性白内障」に分けることができます。

先天性は生まれつき、または遺伝的素因がある白内障で、後天性はその他の加齢や外傷、病気、中毒などによる白内障を含みます。また、発症年齢によって、「若年性白内障」と「老齢性(加齢性)白内障」に分けることもできます。

若年性白内障は6歳未満で発症し、老齢性白内障は6歳以降に発症が見られます。
白内障と言うと人間では高齢者に多い病気といったイメージがありますが、犬の場合は若年性白内障も多く見られます。

4.犬の白内障の症状

犬の白内障の症状

次に、白内障の症状について見ていきましょう。白内障は水晶体の白濁により、視力が低下し、やがては失明に至ることもある病気であるため、主に以下のような症状が見られるようになります。

  • 眼が白っぽく濁る
  • 物や壁、家具などにぶつかる
  • 段差につまずく
  • 動くことを嫌う、散歩に行きたがらない
  • ごはんや水のある場所まで行くのに時間がかかる、
    またはたどり着けない
  • 動くものに対する反応が鈍くなる、または反応しない
  • 神経質、または怖がりになる、攻撃的になる
  • よく鳴くようになる
  • 重度では眼の痛み  など

それまで見えていたものが見えなくなると犬も不安になり、行動や性格に変化が出ることもあるでしょう。そうした愛犬の様子を観察し、早めに異変に気づけるよう努めることは大事となります。

なお、愛犬の視力が気になる場合は、目の前で物を落としてみて、それを目で追うか、または危険にならない障害物を愛犬の前に置いてみて、それを避けられるかどうかを見る簡単な視力テスト法もあるので、試してみてはいかがでしょうか。

5.犬の白内障の検査方法

白内障であるのか、白内障であるならどの程度の進行状況なのかを判断するには必要に応じ各種の検査が必要になります。それには以下のようなものがあります。

視診

視診によって犬の眼に白濁があるか、あればどの程度かなど確認します。

2スリットランプ検査(細隙灯顕微鏡検査)

眼に細い光をあてることで水晶体の状態を調べ、進行度を判定します。

3眼圧検査

眼圧を測定し、他の眼の病気を併発していないか調べます。

4血液検査

糖尿病や甲状腺機能低下症など他の病気が関連している疑いがある時には血液検査も行われます。

5超音波検査

眼内出血や水晶体脱臼を起こしていないかなど、より詳しい眼の状態を知る必要がある時には超音波検査が行われることもありますが、特に白内障の手術前後に使用されます。

6網膜電位図検査

網膜が正常に機能しているか、眼底の状態を調べたい場合には、この検査が行われることがあります。

6.犬の白内障のステージ

上記のような検査を行い、犬が白内障であった場合、どの程度の進行状況なのかわかるわけですが、白内障は進行度合いにより4つのステージに分けられています。

初発期 白濁はまだ15%程度とわずかで、視力にはそれほど問題がなく、飼い主さんが眼の異常に気づくのは難しい
未熟期 白濁は15%を超え、視力低下が起こり始める時期で、場合によっては緑内障を併発することもある
成熟期 水晶体のほぼ全体に白濁が広がり、光には反応するものの、視力は失われる時期
過熟期 眼の白濁は強まり、水晶体の萎縮や融解、脱臼などに加え、緑内障やブドウ膜炎、網膜剥離、硝子体変性など重篤な眼疾患を併発するリスクがさらに高まる
この時期には眼に痛みが出ることがある

7.犬の白内障の治療

犬の白内障の治療

白内障はステージによって治療法が違ってきますが、大きくは内科的治療と外科的治療とがあります。

内科的治療は白内障の初期段階(初発期~未熟期相当)、もしくは手術ができない場合、飼い主さんが手術を希望しない場合に適用され、タンパク質の変性を抑制する点眼薬、内服薬、抗酸化作用のあるサプリメントなどを用います。

ただし、白内障を治すことは期待できず、あくまでも進行を遅らせることを目的とします。

一方、外科的治療は白内障がある程度進行した段階(未熟期~過熟期相当)、または進行度が速い場合、飼い主さんが根本治療を望む場合、若齢性白内障の場合などに適用となり、白濁した水晶体を取り除き、犬用の人工レンズを挿入します。

しかし、ブドウ膜炎を始めとした他の眼疾患があったり、眼の状態が悪かったり、あるいは麻酔のリスクが高い場合などは手術が難しくなります。

8.白内障の放置は危険!

さて、犬は嗅覚が良いのだし、白内障になって多少視力に弊害が出ても生活していけるのではないか、そのまま放置しても大丈夫なのではないかと思う人もいるかもしれません。

ところが、水晶体内のタンパク質が液状化して漏れ出てくると炎症を起こし、それがブドウ膜炎や緑内障など他の眼疾患につながってしまうことがあるのです。特に緑内障は強い痛みを伴うため犬にとってはたいへんな苦痛です。

また、最終的には失明に至ることがある他、場合によっては眼が潰れて眼球の摘出が必要になるようなこともあります。こうした犬の苦痛を考えれば、早めの対応が一番であることがおわかりいただけるでしょう。

9.白内障の予防

最後に、白内障の予防について考えてみたいと思います。
遺伝性や生まれもっての場合は予防が難しいですが、以下のようなことは多少なりとも予防につながるかもしれません。

  • 抗酸化作用(ビタミンC・E、ポリフェノール、カロテノイドなど)のある食材やサプリメントを取り入れる
  • 眼の健康に良いとされるビタミンAを含む食材やサプリメントを取り入れる
  • 強い紫外線は極力避ける
  • ケガ予防を心がける
  • 定期健康診断を受ける
  • 遺伝性白内障の懸念がある犬では若齢のうちから眼の検査を受ける  など

犬はいつもキラキラと輝く瞳で飼い主さんを見つめています。その瞳が曇っていくのを見るのは辛いものですが、早期に発見して対処をすれば100%ではなくとも輝きを維持できる場合もあれば、手術によって視力を取り戻すことができる場合もあります。

たとえ視力を失ったとしても愛犬が飼い主さんを思う心の瞳の輝きは失せることがありません。その輝きに応えられるよう、日々の健康管理に努めたいものです。

(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 獣医師 高柳 かれん先生

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