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猫の慢性腎臓病(腎不全)を徹底解説
症状や原因・治療法・予防法を紹介

猫の腎不全を徹底解説 症状や原因・治療法・予防法を紹介

猫が罹患する病気の中で、その発症率が非常に高いのが腎不全です。
しかもそれは、初期段階では目に見える症状があまりない、恐ろしい病気。

だからこその予防法と、万一の際の症状、治療法についてご紹介します。

目次

  1. 猫の腎臓病(腎不全)ってどんな病気?

    • 慢性腎不全・急性腎不全の違い

  2. 猫の腎臓病(腎不全)でみられる症状

    • 腎臓病(腎不全)が進行すると出てくる症状

    • 腎臓病(腎不全)の末期症状

  3. 急性腎不全(腎臓病)の症状

  4. 猫の腎臓病(腎不全)の原因は?

    • 腎臓病(腎不全)になりやすい猫は?

  5. 猫の腎臓病(腎不全)は治る?治療法は?

    • 「AIM」への着目によって、治療にも希望の光が

  6. 猫の腎臓病(腎不全)を予防する方法

  7. 猫の腎臓病(腎不全)の治療にかかる費用

  8. まとめ

1.猫の腎臓病(腎不全)ってどんな病気?

猫にとって腎臓は、

  • ・体の中で不要になった老廃物や毒素を尿として排泄する
  • ・血圧を調節する
  • ・ナトリウムやカリウムなど、血液中のイオンバランスを保つ
  • ・血液(赤血球)を作るためのホルモンを分泌する
 

などの働きを担い、生命を維持するために非常に重要な臓器の1つです。

 

この腎臓の機能が、何らかの原因で低下してしまう病気が腎不全。
腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎不全」があり、特に「慢性腎不全」は、猫における発症率が非常に高いといわれています。

慢性腎不全・急性腎不全の違い

【急性腎不全】

数時間から数日ほどの、とても短い期間で腎機能が低下します。急激な尿量の減少や、食欲不振、下痢、嘔吐、脱水などの症状が見られ、重症になると痙攣や体温低下などを起こし、命を落としてしまうケースも。一刻も早い救急治療が必要となります。

【慢性腎不全】

数カ月~数年ほどの長い時間をかけて、徐々に腎機能が低下していきます。初期段階ではほとんど症状が現れないため、早期発見が難しい非常に怖い病気です。

2.猫の腎臓病(腎不全)の症状

猫の腎臓病(腎不全)でみられる症状

実は腎臓は「沈黙の臓器」ともいわれるやっかいな臓器。
何らかの異常が起こっても、なかなか目立った症状が現れないのです。
実際、猫の腎臓病の初期段階では飼い主さんは異変に気付きづらく、何かの症状が出る頃には次のステージへ進んでしまっているケースが少なくありません。

そんな中でも、最初のSOSとも言える症状が「多飲多尿」。
腎機能の低下が進行すると尿を濃縮させることができなくなるため、色の薄い尿を大量に排泄します。また、尿量が増えるため水分不足にもなり、水を飲む量が増えるのです。

以前と比べるとたくさん水を飲み、おしっこの回数も増えたと感じることがあったら、もしかしたらそれは、腎不全のサインかもしれません。

腎臓病(腎不全)が進行すると出てくる症状

初期段階では気付きづらい腎不全。
「多飲多尿」の症状が出る頃には、すでに腎機能の50~75%ほどは失われているといわれていますが、さらに進行すると、このような症状が見られるようになります。
また、ここまで進行していると、腎機能としてはすでに90%ほどが失われていると考えられます。

最初のSOSは「多飲多尿」

矢印

さらに症状が進むと
  • ・食欲の低下
  • ・口内炎・口臭
  • ・体重の減少
  • ・毛つやが悪くなる
  • ・嘔吐
  •  

腎臓病(腎不全)の末期症状

腎不全の末期になると、「尿毒症」と呼ばれる症状が見られます。
腎機能はほぼ機能しておらず、命の危険にも及びます。

さらに症状が進行

矢印

末期症状
  • ・痙攣
  • ・呼吸が浅くなる
  • ・意識レベルの低下
  • ・神経障害や消化器障害

3.急性腎不全(腎臓病)の症状

急性腎不全を発症すると、以下のような症状が突発的に起こります。

  • 急に食欲や元気がなくなる
  • 嘔吐
  • 発熱
  • 尿量の減少、尿がまったく出ない
  • 呼吸が荒い
  • 意識の低下

4.猫の腎臓病(腎不全)の原因は?

猫の腎不全の原因として、現在のところはっきりとわかっていることはありませんが、細菌やウイルスの感染、歯肉口内炎による炎症性蛋白の分泌、先天的・遺伝的なものなどが考えられています。

また近年では、東京大学大学院教授である宮崎徹先生の研究により、「AIM」という血液中のタンパク質が猫の腎不全の原因に大きく関係していることもわかりました。
本来、体内の”ゴミ掃除機能”を強化する「AIM」。ところがネコ科の動物は、このAIMが先天的に機能しておらず、体内にゴミが貯まり続け腎臓の機能が悪化、やがて腎不全に陥ってしまうといわれています。

腎臓病(腎不全)になりやすい猫は?

特定の猫種はありませんが、高齢の猫の発症率は高い傾向にあります。

5.猫の腎臓病(腎不全)は治る?治療法は?

残念ながら、一度壊れてしまった腎臓の組織を元に戻すことはできませんが、残された正常な腎臓への負担をできる限り減らすことが、腎不全の治療(進行・悪化を防ぐ)として重要なアプローチになります。

そのためには食事内容を見直したり、尿量を増やしたりすることによって、血液中の老廃物や毒素を排出することが大切です。

治療法1

積極的な水分補給

こまめに水を取り替え、いつでも綺麗な水が飲めるように環境を整えます。 あまり水を飲まない場合は、ごはんに水分を含ませたり、ウェットタイプのフードにしてあげるなどの工夫を心がけましょう。

 

また、最近では動物用に作られた経口補水液があり、動物病院で処方されることもあります。普通の水よりも効率よく水分を吸収することができるので、スムーズな水分補給にはおすすめ。
ペットショップなどで飼い主さんが購入することもできるので、獣医師に相談したうえで与えてみても良いでしょう。

治療法2

食事内容の見直し

タンパク質やリン、ナトリウムなどは、過剰な摂取によって腎臓に大きな負担がかかるため、これらの摂取量の調整が必要になります。
とはいえ、生きていくうえで必要な栄養素でもあるため、飼い主さんが調整するのはなかなか難しいもの。腎臓病用の特別なフードなども取り入れながら、必ず獣医師と相談のうえ食事内容を見直していきましょう。

治療法3

投薬

食事の中に含まれている尿毒症物質を便と一緒に体の外に排泄する吸着剤や、血圧を下げる薬などを投与しながら、治療を進めるケースもあります。

治療法4

入院

急性腎不全の場合は入院の治療となることが多く、尿道カテーテルを通して排尿を促し、点滴治療を行います。

「AIM」への着目によって、治療にも希望の光が

前述のとおり、猫の腎不全と大きく関わりのある、血液中のタンパク質「AIM」。
すでに治療面での実験も行われていて、腎不全で余命1週間の猫が、AIM投与で劇的に回復したという結果も出たといいます。
現在はまだ治験等が控えている段階ではありますが、猫の腎不全の治療に大きな力となってくれることでしょう。

6.猫の腎臓病(腎不全)を予防する方法

猫の腎臓病(腎不全)を予防する方法

腎臓に負担をかけない食事

人間の食事には塩分やタンパク質が多く含まれているため、腎臓に大きな負担がかかります。飼い主さんの食事を与えるようなことはせず、キャットフードで栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。

十分な水分補給

腎不全は脱水によって悪化するケースが多いため、水分をしっかりと摂取することが予防につながります。日頃からこまめに水を飲ませる、ウエットタイプのフードを取り入れるなど、十分な水分補給を心がけましょう。

こまめなデンタルチェック

歯肉口内炎による炎症性蛋白が腎不全の原因の一つとされています。
口腔トラブルの早期発見・治療を目指し、自宅でもこまめにデンタルチェックをしましょう。

定期検診

尿検査や血液検査など、定期的に検診を行うことによって、何らかの異常を早期発見できる可能性が高まります。特に症状がなくても、年に一回ほどの定期検診を心がけましょう。

7.猫の腎臓病(腎不全)の治療にかかる費用

初診では、血液検査・尿検査・超音波検査などの費用で1〜3万円程度かかることが多いでしょう。その後は定期的なチェックをしながら経過観察をしていきますが、内服薬・点滴・療法食・サプリメントなど、症状や進行度によってさまざまな治療法が考えられるため、その治療法の選択によって費用も大きく変わってくると言えます。

8.まとめ

発症率が非常に高い猫の腎不全。進行すると命の危険にも及ぶ非常に恐ろしい病気です。初期では目に見える症状が少ないからこそ、できる限りの予防に努めたいものですよね。

大切なのは、日頃から腎臓への負担をかけないように心がけること。
健康的な食事や十分な水分補給で、愛猫を腎不全発症のリスクから守りましょう。

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 獣医師 高柳 かれん先生

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