現在、3歳以上の猫の8割が歯周病といわれています。また、歯周病の細菌は臓器に悪影響を与える場合も…。正しい知識を深め、適切なデンタルケアで愛猫の健康を守ってあげましょう。
1.猫に多い5つのお口トラブル
- 歯周病
- 歯肉炎
- 歯周炎
- 慢性歯肉口内炎
- 歯頸部吸収病巣
歯周病
猫のお口トラブルで最も多い疾患。初期段階の症状は「歯肉炎」、進行してし歯肉以外にも炎症が及ぶと「歯周炎」と呼ばれます。
歯肉炎
歯肉溝に食べかすなどがたまり細菌が繁殖。歯は黄色や茶色っぽくなり、歯肉が赤く腫れます。
歯周炎
歯肉溝が深くなり、細菌がさらに繁殖し、バイオフィルム※を作り出す。歯肉の赤みと腫れは増し、歯垢や歯石が増加。口臭が感じられるようになり、場合によっては痛みが伴うことも。
※バイオフィルムとは…
バリアの役割を果たす、ぬるっとした粘膜状の物質をバイオフィルムといいます。抗生剤が細菌まで到達するのを妨げ、薬での治療が困難とされる一因。
慢性歯肉口内炎
歯肉や口腔粘膜が慢性的に炎症を起こしている病態。
歯頸部吸収病巣
歯肉や歯の境からエナメル質が溶け出して顎の骨と癒着する病気。
2.猫は人より歯周病になりやすい
猫の口内環境は人と異なり、虫歯がほとんど無いかわりに、人よりも歯周病になりやすいという特徴があります。そして、歯周病は歯だけの病気ではなく、歯と歯肉(歯茎)の隙間(歯肉溝)で起こるため、見えている歯はきれいでも、外から見えない歯肉溝の中で進行していることがある厄介な病気です。
獣医師でもレントゲンを撮らないときちんとした診断が難しい場合もあります。
3.歯や骨が溶けたり心臓などに悪影響が及ぶことも
歯周病を起こす細菌は歯肉だけに留まりません。歯根部から深部に感染が広がり、炎症が頬に広がったり、顎の骨を溶かしてしまうことも。
また、細菌が血流に乗って全身に運ばれ、心臓や腎臓などの大切な臓器に悪影響を与えることも考えられます。
4.歯石除去だけで歯周病は治りません
スケーリング(歯石除去)で歯の上の歯石を取り除くとキレイになりますが、これだけでは歯周病は治りません。なぜなら、歯周病を引き起こしているのは、歯石ではなく歯垢だからです。歯垢は単なる食べカスではなく、その約70%は細菌です。それが歯肉溝の中で増殖し、歯周病が起こります。
歯垢が石灰化してできる「歯石」の状態では、細菌は死滅しており、体に悪影響を及ぼすことはないです。ただし、歯石が付着すると歯の表面に凸凹ができて歯垢が付きやすくなり、細菌が増殖しやすい環境になるので、除去すること自体は大切です。
5.麻酔を怖がりすぎて歯のトラブルの治療が遅れないように
進行した歯周病の治療はおおむね麻酔をかけて行います。麻酔のリスクを必要以上に恐れて治療をためらう飼い主さんもいらっしゃいますが、そのために歯周病の処置が遅れると愛猫の体への危険度を高めてしまいます。もちろんリスクはゼロではないので、麻酔をするときには事前に検査をして、安全に麻酔をかけることができるかどうかを判断します。万が一、麻酔当日の体調が悪そうな場合は中止することもできます。
6.まとめ
歯周病はデンタルケアの実践で、ある程度予防できます。猫の歯垢は約7日間で歯石に変わりますが、歯石になると歯磨きだけでは取れなくなります。できれば毎日お家でデンタルケアをしてあげましょう。
食事を食べにくそうにする、口臭がする、口のまわりがヨダレで汚れている、歯茎があかくなったり腫れたりしている、しきりに口を引っ掻くような動作をするなどがあれば、お口のトラブルかも?また、すでに歯周病などの病気になっている場合は、歯みがきをすると痛みを感じます。あまりにも嫌がるようでしたら、歯周病になっている可能性もありますので、動物病院で診察してもらい、きちんと診断。治療をしてから歯みがきをしましょう。
歯周病は「見えない所で起こる病気」。セルフケアだけでなく定期的にかかりつけの獣医師さんのチェックを受けて、気になることはご相談を。適切な処置と正しいデンタルケアで愛猫の健康を守ってあげましょう。