犬と暮らし始めて、最初にやること!~義務とおすすめ、8項目~
犬と暮らし始めて、最初にやること!~義務とおすすめ、8項目~
犬と暮らし始めた飼い主が遵守しなければいけない「狂犬病予防法」や「動物愛護法」を知っていますか? 犬と暮らすためには知っておかなければいけない法律です。
今回は、狂犬病予防法に基づく飼い犬登録や狂犬病予防注射、犬の健康を維持するために必要な動物病院での健診や病気の予防、動物愛護法に基づくマイクロチップ装着について、8つの項目としてまとめました。必要性は?何をいつまでに?費用は?など、いろいろ気になることがあると思います。義務と任意で行う各種病気の予防などについて、その時期や金額も合わせてご紹介します。
目次
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1.犬と暮らし始めたら、やるべき義務とおすすめ!(8項目)
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動物病院での健診
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各種感染症の混合ワクチン接種
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狂犬病予防注射接種
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飼い犬登録
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不妊・去勢手術
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マイクロチップの装着(挿入)
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フィラリア症の検査と予防薬の投与
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ノミとダニなど外部寄生虫の予防
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2.まとめ
犬と暮らし始めたら、やるべき義務とおすすめ!(8項目)
犬と暮らし始めたら、やるべき義務とおすすめを、8項目に分けて説明します。
動物病院での健診
犬と暮らし始めたら、動物病院へ行ってみましょう。緊張するのは人も犬も一緒です。最初は犬の便や尿を持参して検査だけをしてもらうなど、動物病院の雰囲気に飼い主がまず慣れ、その後、犬を連れて行ってあげるのもいいでしょう。犬にとっても飼い主にとっても動物病院(獣医師や動物看護師)との良き出会いはとても大切なことです。信頼できる動物病院で健診を受けることで、犬の状態が正確に把握でき、安心して、犬との暮らしのスタートを切ることができます。
また、生後数ヶ月の子犬の場合、感染症に対する免疫を持っていない場合もあります。他の動物達との接触を防ぐため、そして緊張や不安を軽減するためにも、使い慣れたキャリーバッグに入れて動物病院へ連れて行きましょう。そして、健診が終わり説明を受ける時には、獣医師や動物看護師には遠慮せずに、犬と暮らすことに対する不安や疑問を相談すると良いでしょう。
【必要な費用】
1万円前後
※検査内容・動物病院によって異なります。
各種感染症の混合ワクチン接種
ほとんどの子犬が最初に受けるのが各種感染症の混合ワクチンです。各種感染症を予防するワクチンは「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」に大別されます。
●コアワクチン
死に至る重大な感染症にかからないよう、犬の生活環境に関わらずすべての犬に推奨されるワクチン。
対象となる病気:犬ジステンバー・犬伝染性肝炎・犬パルボウィルス感染症・犬アデノウイルス(Ⅱ型)感染症
●ノンコアワクチン
住んでいる地域や、飼育環境によって接種が推奨されているワクチン。
対象となる病気:犬パラインフルエンザ感染症・犬コロナウイルス感染症・レプトスピラ症
母犬からの移行抗体の消失が個体によって異なるため、子犬期にはワクチンを2~3回接種する必要があり、翌年からは1~3年ごとの接種が推奨されています。接種するべきワクチンの種類や時期の詳細については、動物病院で相談の上決めると良いでしょう。また、子犬期では、ワクチン接種を終えるまで散歩を控えるように指導を受ける場合があります。しかし、生後2~4ヶ月の大切な犬の社会化期に外部環境を経験させないと社会性を身に着けにくくなり、外が怖くて歩けない、人や犬に吠えるなどの問題行動が出やすくなるので、注意が必要です。抱っこして外の社会を経験させる、首輪やハーネス、リードの装着に慣れさせるなど、可能な限り本格的な散歩に向けた準備をしておきましょう。
【必要な費用】
一回のワクチン接種料:8,000円前後
狂犬病予防注射接種
狂犬病予防法に基づき、年一度の狂犬病予防注射は所有者に課せられた義務です。初年度は、生後91日以降であれば、早急な接種が義務付けられています。
狂犬病は、病名の中に「犬」という漢字が入っているため、犬だけがかかる病気と思いがちですが、すべての哺乳類が感染します。そして、有効な治療法がなく、発症すると致死率がほぼ100%の病気で、海外では毎年5〜6万人もの人が感染し、死亡しています。日本では、犬への狂犬病予防注射接種を義務付けることで、国内での蔓延を防いでいます。
また、各市区町村では飼い主登録(鑑札)と注射済票の発行によって、管理しています。地域によっては、毎春(3〜6月)集合注射を実施しています。集合注射以外にも動物病院での接種も可能です。
【必要な費用】
予防注射接種料:2,750円(大阪市)
注射済票交付手数料:550円(大阪市)
※地域によって異なります。
飼い犬登録
狂犬病予防法に基づき、生後91日以上の犬と暮らすためには「飼い犬登録」が義務化されています。子犬を迎えた場合は、生後91〜120日の間に手続きをします。通常は住んでいる市区町村で登録申請し、鑑札を発行してもらいます。また、動物病院でも手続き代行をしているケースもあるので、かかりつけの獣医師や動物看護師に聞いてみましょう。
【必要な費用】
登録及び鑑札交付手数料:3,000円(大阪市)
※地域によって異なります。
不妊・去勢手術
共に暮らす犬の出産(繁殖)を計画しないのであれば、避妊・去勢手術について検討しましょう。女の子の場合は卵巣、あるいは卵巣と子宮を、男の子の場合は睾丸を摘出する手術です。不妊・去勢手術には、メリットとデメリットがあります。
●不妊手術(女の子)
メリットは、卵巣や乳腺に発生する腫瘍や子宮蓄膿症などの病気予防や、発情期における食欲や情緒の不安定などを予防できます。 デメリットとしては、一部の犬種や手術時期によって、尿のおもらしや骨肉腫の発生率の増加、ホルモンバランスの崩れによる被毛の変化、肥満があげられます。
●去勢手術(男の子)
メリットは、精巣腫瘍、前立腺肥大(良性)、会陰ヘルニアなどの病気の予防やマーキングの軽減(全く効果がない場合もある)、発情期における興奮や落ち着きのなさの予防や軽減などがあります。 デメリットとしては、女の子同様にホルモンバランスの崩れによる毛質の変化や肥満の他に、因果関係ははっきりしていませんが、悪性の前立腺癌の発生率が増加するという報告もあります。 不妊・去勢手術後の肥満については、術後のホルモンバランスの変化に伴う基礎代謝の低下が主な原因となって、太りやすくなります。理想的な体重を維持できるように、日頃の運動と食事のバランスに気をつけてあげましょう。 また、不妊・去勢手術に関しては、飼い主や家族内でも意見が分かれるので、獣医師と十分に相談した上で決めることをおすすめします。
【必要な費用】
去勢手術:15,000~25000円
不妊手術:30,000~50000円
※動物病院によって、麻酔や手術の方法、入院日数などが異なり、費用も大きく異なります。
マイクロチップの装着(挿入)
犬の個体識別のためや迷子対応のために、マイクロチップの装着(挿入)が推奨されています。マイクロチップは、直径およそ1~2mm、長さおよそ8〜12㎜の円筒状の形をしています。注射針よりも少し太い挿入機器を使って、犬の頸部皮下に挿入し、専用リーダーによって、飼い主情報を読み取ります。
2019年6月に改正された動物愛護法に基づき、ペットショップやブリーダーから迎え入れる犬には2021年6月からマイクロチップの装着が義務付けられています。
そして既に、マイクロチップを装着しているペットショップやブリーダーもあります。マイクロチップが装着されていない場合には、動物病院に相談して、装着後必ずデータ登録をしてください。データ登録することで、災害時や迷子になった時の所在確認を容易にします。また、動物病院によっては、不妊・去勢手術を受ける際に装着を勧められることもあります。
【必要な費用】
装着費用:5,000円前後 ※自治体によっては助成金制度あり。
登録料:1,050円
フィラリア症の検査と予防薬の投与
犬フィラリア症とは、犬糸状虫と呼ばれる寄生虫の感染子虫が、蚊の媒介によって体内に入り、体内を移動しながら成長を続け、成虫となって心臓や肺動脈に寄生することで引き起こされる疾患です。 循環不全や呼吸不全に伴う息切れや咳、腹水や胸水の貯留など、犬の体にさまざまな障害を引き起こします。 最悪の場合、死に至る可能性も……。
しかし、犬フィラリア症は、予防薬を投与することで、確実に感染を防ぐことができます。予防薬を投与する前には、必ず感染の有無を調べるための検査を受けましょう。そして、予防には内服薬が広く使われています。蚊が活発に活動する4月または5〜12月の間、月に1回飲ませる必要があります。内服薬には錠剤や粉薬の他におやつのような風味をつけたチュアブル錠などもあります。一年に一度の皮下注射による予防も可能ですが、あまり普及していません。このほかにも、皮膚に滴下するタイプもあります。また、内服薬や滴下タイプの薬にも、ノミやダニなどの外部寄生虫や他の内部寄生虫の予防を兼ねたものもあります。獣医師や動物看護師のアドバイスを受け、犬の性格に合わせてストレスのかかりにくい方法を選びましょう。
【必要な費用】
小型犬の場合、年間5,000〜10,000円
※犬の体重によって必要な薬の量が異なります。
ノミとダニなど外部寄生虫の予防
ノミやダニなど外部寄生虫対策として、ホームセンターやペットショップなどで、防虫スプレーやノミ除けの首輪やシャンプーなど、さまざまな商品が販売されていますが、動物病院で相談の上、予防するようにしましょう。ノミやダニの寄生は、意外と厄介です。効能に加え、安全基準などが設けられている適切な動物用医薬品を使って予防することをおすすめします。山や川での遊びを好む犬はもちろん、公園での散歩やドッグランの利用など、他の犬との接触が多い場合には、ノミやダニに感染する可能性も高くなります。また、完全室内飼育といっても感染する可能性はあります。ノミやダニは病気を媒介する可能性もあり、予防薬でしっかりと守ってあげましょう。
ノミやダニの予防には、主に皮膚に滴下するタイプの薬と内服薬がよく使われています。予防薬の投与は月に一度です。前述したように、ノミとダニの予防に加え、フィラリア予防を兼ねた薬もあります。
【必要な費用】
8,000〜12,000円
※犬の体重や予防薬のタイプによって異なります。
まとめ
毎年必要なことは次の通りです。
狂犬病予防注射は、法律により年に一度(4月1日から6月30日の期間)の接種が義務付けられているため、犬の健康に異常がない限り、必ず受けましょう。
健康診断は義務ではありませんが、犬の健康を維持するため、そして、病気や異常を早期に発見して対応するためにもとても重要です。少なくても年に一度、高齢になれば年に2~3度ぐらいは、健康診断に連れて行くことをおすすめします。
また、フィラリアやノミ・ダニなどの寄生虫の予防も毎年続けてあげることが大切です。
各種感染症の混合ワクチンも義務ではありませんが、多くの感染症は発病すると重症化し、命に関わる病気です。かかりつけの動物病院で適切な間隔(1~3年毎)で接種することをおすすめします。
病気やケガをした時にだけ動物病院を利用するのではなく、健診や病気の予防を徹底することで、犬との暮らしをより楽しいものにできると思います。人と犬との心身の健康維持を大切にしましょう!
お話を伺ったのは…
動物看護師
富永 良子さん
18年間の動物病院勤務を経て、2017年よりフリーランスの動物看護師として活動中。「犬や猫ともっと楽に、もっと楽しく暮らそう♪」をモットーに、犬や猫の心の健康を大切にした育て方や暮らし方の提案に力を入れている。現在は、動物病院でパピークラスやノーズワークレッスンを開催。ペット共生型有料老人ホームで高齢者とペットとの暮らしのサポートも行っている。