【獣医師監修】猫は去勢手術をするべき?時期や費用・助成金について
1匹の母猫を放置すると1年後には50匹ほどに増えると言われており、最近では不妊手術を選ぶ飼い主さんが増えています。
しかし、手術にはメリットもある一方で小さな体にメスを入れるリスクなど、気になる点も多いでしょう。
今回は、不妊手術の中でもオス猫の「去勢手術」について、そのメリットや手術の流れなどをご紹介します。
1匹の母猫を放置すると1年後には50匹ほどに増えると言われており、最近では不妊手術を選ぶ飼い主さんが増えています。
しかし、手術にはメリットもある一方で小さな体にメスを入れるリスクなど、気になる点も多いでしょう。
今回は、不妊手術の中でもオス猫の「去勢手術」について、そのメリットや手術の流れなどをご紹介します。
目次
猫の去勢手術とは、精巣を摘出する外科手術です。
全身麻酔をかけてから精巣付近の皮膚を切開し、精巣を取り出すシンプルなもの。
お腹を切開しないので、メス猫の避妊手術と比べると体への負担は少ないと言えるでしょう。
「動物の愛護及び管理に関する法律」第37条 において、適正飼養が困難な犬猫の繁殖防止が義務化されているのをご存知でしょうか。
猫は一回の出産で複数匹の子猫が生まれます。生まれてくる大切な命のためにも、不用意な繁殖を防ぐことを目的とした去勢手術の必要性は高いと言えるでしょう。
部屋のあらゆるところにおしっこをかける「スプレー行動(マーキング)」は、発情期に盛んになることが多いため、適切な時期に去勢をすることによって改善されることがあります。
オス猫のおしっこはメス猫に比べるとにおいが強いものですが、去勢手術をすることによってそのにおいは和らぎ、メス猫と同程度になると言われています。
生後半年ほどの早期のタイミングで去勢手術を済ませると、性格面での攻撃性が緩和されるケースも。怒りっぽかったり、周囲のネコとのケンカが多い猫でも、そのようなトラブルが減ることがあります。
成熟すると攻撃性や交尾衝動が強くなり、その欲求が満たされないと大きなストレスになってしまいますが、去勢手術によってこうしたストレスが軽減できます。
前述にもあるように、猫は一回の出産で複数の子猫が生まれてきます。飼育環境が適切に整わない限り、不用意な妊娠を防ぐことが、結果として大切な命を守ることへとつながります。
精巣を取るので精巣腫瘍を予防でき、前立腺の病気の発生率を低下させることができます。また、オス猫同士のケンカが少なくなるため、感染症のリスクも減らすことができます。
ホルモンバランスの影響で食欲が増え、運動量も減るため、手術前と同じ食事量をとっていると太ってしまいます。獣医師と相談しながら、低カロリーのフードや運動量の調整で適切な体重管理を心がけましょう。
当然ですが、一度去勢手術をすると、その猫の血を引いた子猫を迎え入れることはできません。未来に望む家族の姿や飼育環境についてしっかりと考えたうえで、判断することをおすすめします。
麻酔や手術そのものが体へ悪影響を及ぼすことはほとんどありませんが、家族以外の人や動物病院に慣れていない猫は、長時間病院で過ごしたり手術を経験すること自体が負担になり、自宅に帰ってから調子を崩してしまうことがあります。
また、自宅で術後の傷口を舐めてしまい、感染症を起こしてしまうケースもゼロではないため、自宅に帰ってからの注意や観察は必要です。
性成熟が始まる前の生後6ヶ月頃に去勢手術をするのが一般的です。
予防接種が終わっていること、ダニ・ノミ・寄生虫の駆除が終わっていることを条件とする動物病院が多いため、それらも含めたトータル的な計画として、かかりつけの獣医師と相談しておくのが良いでしょう。
ちなみに、保護施設などでは生後2〜4ヶ月といった早期に去勢手術を行い里親に渡すケースもありますが、健康上の大きな危険性はないとされています。
全身麻酔をするため、その麻酔における過敏反応のリスクはゼロではありません。
中には死亡してしまうケースもありますが、その報告例はごく稀なもの。かつ手術前には必ず麻酔に対する検査も行われるため、過度な心配は必要ないでしょう。
5,000~40,000円と、動物病院や入院の有無などによって変わってきますので、かかりつけの動物病院に事前に確認しておくのが良いでしょう。
ペット保険は補償対象外です。
自治体によっては猫の去勢手術に補助制度が設けられており、去勢手術のための助成金を受け取ることができます。条件や金額は自治体によって異なりますが、申請書や実際に発生した手術費用の領収書などを提出することによって、助成金が振り込まれるといったものになります。
助成金制度を利用する場合は、お住まいの自治体に問い合わせをしてみてください。
手術日までは、愛猫の体調に変化がないかを観察しておきましょう。
全身麻酔時の嘔吐や誤嚥を防ぐため、手術の12時間前からは絶食をさせます。
まずは、問診や触診、視診などでしっかりと手術前検査が行われ、手術可能と判断された場合のみ手術となります。全身麻酔をかけ剃毛や消毒を済ませたうえで、精巣付近の皮膚を1~1.5cmほど切開し精巣を摘出し、止血・縫合をして終了。所要時間はおよそ10分程度です。
体の状態に問題がなければ、その日のうちに帰宅できるケースもありますが、必要に応じて1泊程度入院することもあります。
3.退院後
退院後は、傷口をなめないようにエリザベスカラーを着けながら安静に過ごし、自宅では数日間抗生剤を服用します。
また、去勢手術を終えた猫は、精神的にも肉体的にも大きなストレスを抱えています。
自宅に戻ってからも元気がなかったり落ち着かないケースがありますので、状態が安定するまでは寄り添いながらケアしてあげましょう。
数日後に経過観察のための診察を行い、問題がなければ終了となります。
去勢手術のタイミングが遅かった場合など、去勢手術後にも猫が発情してしまうことがあります。このようなときは、まずは手術を行った獣医師へ対応策を相談しましょう。相談する際は、いつ頃から、どのような様子で発情が見られるかなどを詳しく共有できると良いでしょう。
また、ストレスが原因で再発情してしまうこともあります。ストレスを抱える原因がないかも振り返りながら、思いつくものがあればそれを取り除く工夫もしてみてください。
適正飼育のできない猫の繁殖を防ぐためには、去勢手術の必要性は高いものと言えるでしょう。しかし飼い主さんによっては、心配な点やデメリットもある可能性があります。
手術の適切なタイミングは、生後6ヶ月頃と生まれて間もなくのこと。飼い主さんのライフスタイルや飼育環境などを鑑みたうえで、早めに検討しておくことをおすすめします。
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監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。