猫のワクチン接種が必要な理由や予防接種の種類・費用、副反応のリスクについて解説!
細菌、ウイルス、寄生虫など、猫の周りには感染症の危険が潜んでいます。
「うちは外に出していないから」という方も安心はできません。実は、家の中にいても感染リスクがあるのです。
一体どんな感染症があるのか、どんな予防法や治療法があるのか、副反応や費用についてもくわしく見ていきましょう。
細菌、ウイルス、寄生虫など、猫の周りには感染症の危険が潜んでいます。
「うちは外に出していないから」という方も安心はできません。実は、家の中にいても感染リスクがあるのです。
一体どんな感染症があるのか、どんな予防法や治療法があるのか、副反応や費用についてもくわしく見ていきましょう。
目次
どのような感染症に対して有効なの?
ワクチン接種前に気を付ける点
ワクチン接種後に気を付ける点
猫の感染症の発症率はどれくらい?
感染経路① 飛沫感染
感染経路② 飼い主からの感染
感染経路③ 母子感染
ワクチン接種の目的は猫を病原体から守ること。細菌やウイルスといった目に見えない危険な病原体は、猫のすぐそばに潜んでいます。発症時の重症化を防ぐうえで、ワクチン接種はとても有効です。
完全室内飼育でも安心はできません。網戸越しに外猫とご挨拶したり、屋外でなでた外猫のウイルスが衣服に付着したりして、家の中にウイルスが紛れ込んでくる危険性は十分あります。そして、感染症の中には発症すると有効な治療法がないものも。
愛猫と長く健やかに暮らしていくために、ワクチン接種をおすすめします。
ワクチンには、すべての猫に接種することが望ましい「コアワクチン」と、生育環境やライフスタイルに応じて接種する「ノンコアワクチン」があります。
「コアワクチン」で予防する感染症は、とても感染力が強く感染規模も広いため、完全室内飼育であってもワクチン接種をおすすめします。混合ワクチンは3種、4種、5種の3つあり、完全室内飼育の猫はコアワクチンのみで構成された3種混合ワクチンを、屋外で遊ぶ猫はコアワクチンとノンコアワクチンを組み合わせた5種混合ワクチンを、というように猫のライフスタイルに合わせて選びます。
地域で感染症が流行している場合もありますので、まずはかかりつけの獣医師に相談してみましょう。
熱、くしゃみ、鼻水といった風邪に似た症状が見られることから、猫風邪とも呼ばれます。重症化すると肺炎や脱水症状を起こして、死に至るケースもあります。
熱、くしゃみ、鼻水、口内炎や舌の潰瘍、肺炎などさまざまな症状が見られます。近年は、致死率が高い「強毒全身性猫カリシウイルス」の感染が報告されています。
激しい嘔吐、下痢、高熱を引き起こし、子猫の場合は1日で死に至るケースもあります。感染力がとても強く、猫ジステンパー、猫パルボとも呼ばれます。
結膜炎、目やに、くしゃみが主な症状です。人やその他の哺乳類、鳥類にも感染する人獣共通感染症の1つ。重症化すると肺炎を引き起こし、命に関わる危険性があります。
発熱、貧血、食欲不振が主な症状です。感染時の年齢によってウイルス増殖の割合が異なります。子猫が感染すると体内でウイルスが増え続けて、生命が脅かされる可能性があります。
発熱、下痢、口内炎、鼻水、体重減少などが主な症状です。人には感染しません。感染している猫にかまれた猫は、その唾液によって感染します。
狂犬病は致死率100%の恐ろしい病気です。人畜共通感染症の1つで、発症すると有効な薬はありません。
混合ワクチンは3種、4種、5種の3つあり、猫のライフスタイルに合わせて選びます。かかりつけの動物病院にてご相談ください。
すべての猫に感染リスクがある猫ウィルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症に対応したワクチンです。いずれの感染症も感染力が強く、空気感染する恐れがあります。
3種混合ワクチンに、ノンコアワクチンが追加されたワクチンです。ノンコアワクチンは、猫クラミジア感染症、猫白血病ウイルス感染症。外出の頻度、飼育環境、地域の感染状況に合わせて選びましょう。
混合ワクチン接種にかかる費用は動物病院によって異なりますが、3種で3,000円~5,000円程、5種で5,000~10,000円程が目安です。
ワクチン接種は病気の治療ではなく予防行為にあたりますので、ペット保険の対象外というケースが少なくありません。ペット保険に加入されている方は保険内容をチェックしてください。
ワクチンの種類 | 価格の目安 | |
---|---|---|
混合ワクチン |
3種 |
3,000~5,000円程 |
4種 |
4,000~8,000円程 | |
5種 |
5,000~10,000円程 | |
7種 |
7,000~13,000円程 | |
コアワクチン |
猫ウィルス性鼻気管炎 |
6,000円程 |
猫カリシウイルス感染症 |
7,300円程 | |
猫汎白血球減少症 |
3,000~6,000円程 | |
ノンコアワクチン |
猫クラミジア感染症 |
4,500~7,000円程 |
猫白血病ウイルス感染症 |
40,000円程 | |
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズウイルス) |
4,300円程 | |
狂犬病 |
3,000~6,000円程 |
犬のワクチン同様、生後2か月頃が1回目のタイミングです。
子猫は初乳を通じて母猫から免疫をもらいますが、その効果は45日から90日程で減少。そのため生後2か月頃にワクチン接種1回目、1回目から約3~4週間後に2回目、2回目から約3~4週間後に3回目を接種。この「3回接種」が世界的に推奨されています。最後の3回目から約1年後、成猫としての1回目を接種します。
ワクチン接種に適した時期は猫の健康状態に応じて判断します。
かかりつけの獣医師にご相談ください。
6か月齢までに3から4回、6か月から1才のタイミングで追加接種というのが、ガイドラインに定められた接種パターンになります。以降、年1回接種するのが一般的です。
接種パターンは飼育環境に応じて獣医師が判断しますので、かかりつけの動物病院にてご相談ください。
健康を脅かす感染症を防ぐためにワクチンは欠かせないものですが、人のワクチン同様、副反応はゼロではありません。特に子猫の場合は注意が必要です。ワクチン接種の前後で気を付ける点をチェックしておきましょう。
健康な体に病原体の種を植えつけて免疫力を育てるのが、ワクチンによる免疫増強の仕組みです。食欲がなかったり、体調が思わしくなかったりする時は、ワクチン接種の可否を含め、まず獣医師に相談しましょう。
また、治療中の病気や服用中の薬がある場合も、必ずかかりつけの獣医師に申告してください。
副反応はワクチン接種の約10分後から数時間後に出てきます。ワクチンはできるだけ午前中に接種し、午後もできるだけ在宅して、愛猫に異変が見られた場合はすぐ動物病院に電話をして指示を仰いでください。
接種して1週間は安静にさせましょう。興奮する遊びや激しい運動、シャンプーは避けてください。
接種して2~3週間は免疫が作られていない可能性がありますので、外出させないことをおすすめします。他の猫と接触する場所に連れて行くのは、接種後3週間を過ぎてからが良いでしょう。
日本小動物獣医師医学会の報告によれば、何らかの副反応があった事例は全体の1.25%(2008年4月から2012年7月までに行われた10620接種のうち133接種)です。その内訳は「元気がない、食欲がない(117例)」「発熱(66例)」「アナフィラキシー(1例)」。
副反応には、注射部位にしこりの発生、顔面の腫れ、皮膚のかゆみ、下痢などもあります。アナフィラキシーは非常に少ない発症率ですが、発症する場合は接種後10分程で起こります。チアノーゼや嘔吐、呼吸困難などの症状が見られた場合は、すぐ動物病院に連れて行きましょう。
【参照】「猫のワクチン接種後の急性副反応に関する調査」
ワクチンで予防できる感染症は、いずれも感染力が強く、抗体がなければいつ発症してもおかしくありません。ワクチンを接種しなかったばかりに、愛猫を苦しめてしまったり、高額な治療費がかかったりするのは避けたいところ。ペット保険はワクチン接種を条件にしているケースが多く、ワクチン接種をしていない状態で発症した場合は保証の対象外になる可能性がありますのでご注意ください。
また、ペットホテルでもワクチン接種証明書の提示を求められることがあります。ワクチンを接種したからといって、100%感染症を防止できるわけではありません。しかし、その感染率を大幅に下げ、発症した場合には重症化を防止できます。
愛猫はもちろん、他の猫を守るためにもワクチン接種は有効なのです。
日本獣医内科学アカデミー2009年大会の報告によれば、猫ウィルス性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染症は全感染症の約70%。そして完全室内飼育の猫が倍増した近年、猫汎白血球減少症は約1%に激減し、猫免疫不全ウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症よりも少ない感染症になったといわれています。
屋外で遊ぶ猫は、ウイルスや細菌に接触する機会が多いため、感染リスクは高くなります。しかし、他の猫とほとんど接触しない完全室内飼育の猫でも、感染リスクがゼロになるわけではありません。
ウイルスを含む唾液や排泄物を、網戸越しにご挨拶した外猫からもらってしまったり、衣服や靴の裏に付着して飼い主さんが室内に持ち込んでしまったりすることがあります。野良猫が多い地域は特にご注意ください。庭やベランダにウイルス感染した猫が入り込むと感染リスクが高まります。
かわいい野良猫を見かけた時、思わずなでていませんか。飼い主さんが感染している野良猫をなでたり、洋服や靴にウイルスを含んだ唾液や排泄物が付着したりすると、危険なウイルスを家の中に持ち込んでしまいます。
母猫がウイルス感染していると、胎盤や母乳を通じて子猫に感染するケースがあります。グルーミング時の唾液、排泄物への接触で感染することもあります。
かわいい愛猫にはできるだけ長く健康に過ごしてほしいもの。不特定多数の猫と接する屋外は感染リスクが高く、事故の観点から見ても完全室内飼育が推奨されています。
万が一、感染症を発症した場合はかかりつけの獣医師にご相談ください。多頭飼育の場合は、感染した猫を隔離し、食器やトイレなど使用していたものすべてを消毒しましょう。
後悔しても時間は戻りません。
年1回のワクチン接種で、命を落とす危険から守ってあげてください。
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くわはら動物病院 院長
獣医師 桑原 岳先生
「No!ストレス」を目指した診断と治療、適切な予防プログラムによる動物たちの健康増進、体全体を見通す『総合診療』、国際水準の『ねこ診療』を基本理念とするくわはら動物病院。平野区で開業して71年。歴史あるホーム動物ドクターとして獣医療活動を続けながら、地域に貢献しています。