役に立ったらシェア!

猫のフードって何がいいの?適切な食事回数やフードの選び方、与え方を獣医師が紹介

猫のフードって何がいいの?適切な食事回数やフードの選び方、与え方を獣医師が紹介

キャットフードには、ドライタイプからウェットタイプまでさまざまな種類があります。袋タイプや缶詰タイプ、国産や外国産、メーカーもたくさんあって数え切れないほど。
最近はプレミアムフードというワンランク上のフードも登場し、猫を飼いなれた飼い主さんでも「試してみたいけどどれが良いの?」「どのメーカーが信頼できるの?」と悩んでしまうかもしれません。

そこで今回は獣医師の村田先生に、フード選びのポイントや適切な与え方をお聞きしました。

1.猫のフードの適正量とは?

フードのパッケージには体重別に、1日に与える量の目安が記載されています。100gあたりのカロリーも記載されていますので、こちらを参考に与えていただくのが良いでしょう。

ドライフードとウェットフードはどう使い分ければいい?

1日分の適正な栄養素とカロリーが摂れるフードなら、どちらを与えても構いません。
知育玩具に入れて与えるのであればドライタイプが良いでしょう。ドライフードであれば投げて与えることもさまざまな場所に隠すこともできるので、捕食本能を満たしたり体を動かしたりするきっかけになります。

飲水量を増やしたい子や泌尿器系の病気を抱えている子には、水分量の多いウェットタイプがおすすめです。どちらにもメリットがあるので、両方食べてくれるように子猫期から与えておくと良いでしょう。

2.猫のフードに適しているのはバランスの取れた「総合栄養食」

人間と猫では、必要な栄養素が異なります。総合栄養食には、猫の体が1日に必要とする栄養素がバランス良く入っており、フードと水だけで健康が維持できる設計になっています。

「フードを手作りしたい」という飼い主さんもいらっしゃるでしょう。しかし、好物だけを与えていると栄養素が不足したり過剰になったりしますので、好物はフードのトッピングやおやつとして与え、主食は総合栄養食の表示のあるものを選ぶのが安心です。

総合栄養食とは?

総合栄養食とは、フードと水だけで健康を維持できるものです。日本では、AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準を採用。「ペットフード公正取引協議会」が分析試験もしくは給与試験を行ったうえで、栄養学の研究に基づくAAFCOの栄養基準をクリアしたものだけに「総合栄養食」の記載を許しています。

一般食とは?

一般食は「おかず」のようなものです。総合栄養食にトッピングして与えてください。
しかし、健康維持に必要な栄養素のすべてをバランス良く含むわけではないので主食にはできません。缶詰やレトルトパウチなどのウェットタイプは水分含有量が多いため、水を飲まない子におすすめです。総合栄養食と混ぜて与えると良いでしょう。

3.猫にフードを与える頻度はどれくらいがいいの?

猫は1日に何度も狩りをして小さな獲物を食べる動物です。1日量をまとめてお皿に入れて与えるのではなく、数回(4~6回)に分けて与えましょう。

犬のように1日2回だけにしてしまうと空腹感が増し、必要量を与えても満腹感が得られなかったり、食べすぎてしまったりする傾向があります。外出中で小分けにして与えることができない時間帯は、知育玩具などに入れて与えると良いでしょう。

4.猫の年齢に応じてフードを与えよう!

猫の年齢に応じてフードを与えよう!

離乳から生後1歳までは、発育に必要な栄養素を十分に含む成長期用フードを与えましょう。離乳食として与える場合はぬるま湯でふやかして与え、成長とともに固めのフードに切り替えていきます。1歳を目安に成猫用フードを与えましょう。

不妊手術をしている場合は、不妊手術をした猫用のフードを選んであげるとカロリーコントロールができます。年齢とともに運動量が減少してきますので、肥満気味の場合は低カロリーのフードを選んでください。

10~11歳になると、本格的にシニア期を迎えます。食事量が減少しますので、少量でもカロリーが摂れるシニア猫用のフードを与えましょう。

5.猫の太りすぎ・痩せすぎはボディコンディションスコアで確認を!

猫の太りすぎ・痩せすぎはボディコンディションスコアで確認を!

痩せすぎ、太りすぎは早めに解消したいもの。ボディコンディションスコアで、愛猫の体型をチェックしてみましょう。

ボディコンディションスコア

痩せすぎ 1

短毛種で肋骨が見える。体脂肪が触知できない。著しい腹部ひだ。腰椎と腸骨がはっきりと見えており、容易に触知できる。

  2

ごく薄い体脂肪が肋骨を被っており、容易に触知できる。腰椎がはっきりと見える。肋骨の後ろに腰がはっきりとくびれている。腹部の体脂肪はごくわずか。

普通 3

均整が取れている。肋骨の後ろに、腰のくびれがある。肋骨はわずかに脂肪に覆われ触知できる。腹部はごく薄い脂肪層に覆われる。

  4

肋骨は中程度の脂肪に覆われ触知困難。腰のくびれはほとんどない。腹部は丸みを帯び、中程度の脂肪に覆われる。

太りすぎ 5

肋骨は厚い脂肪に覆われ触知できない。腰椎部、顔、四肢にかなりの脂肪沈着がある。腹部が膨張し腰のくびれがない。過剰な腹部脂肪。

【参考】「アメリカ動物病院協会(AAHA)栄養評価 犬・猫に関するガイドライン」

猫にフードを与えすぎ?太りすぎた場合のダイエット方法

肥満になったら、ダイエット用フードに切り替えましょう。目分量で与えてはいけません。今の体重ではなく「適正体重の適正量」で、与える量やカロリーをチェック。毎日、計量して与えてください。小分けにして与えると空腹を感じにくくなります。
おやつを与えたい時は1日の適正カロリーからオーバーしないようにご注意を。

また、猫は何らかの理由で食事を食べないと、肝臓に脂肪が蓄積する肝リピドーシスに陥ってしまうことがあるため、急に猫の好みに合わない食事に切り替えたり、過度に食事を制限したりするのはやめましょう。急激な運動も心臓や足に負荷をかけてしまうのでおすすめできません。
太りすぎの場合は、運動方法も含めてかかりつけの獣医師に相談してみましょう。

猫がフードを食べていない?痩せすぎている場合の対処法

もともと猫は寝ていることが多く、犬と違って散歩にも行かないため、体調不良に気づきにくい動物です。食欲がない場合は、体に異常がある場合が多いので様子を見ずにかかりつけの動物病院に相談しましょう。食欲があっても、体重が減っている場合には糖尿病や甲状腺機能亢進症といった病気の可能性があります。

また、口の中に異常があり十分な量を食べていない場合もあります。毎月お誕生日と同じ日に体重測定を行うなど、定期的な体重測定を習慣にしておくと良いでしょう。さらに、体に異常がなくてもストレスなどで食欲が減る場合があるため、特に生活環境が変わった時は気を付けて様子を見てあげてください。

見た目が元気でも動物病院で定期的な健康診断や体格チェックを行い、病気の早期発見に努めましょう。

6.多頭飼いしている場合のフードの与えた方の注意点

多頭飼いしている場合のフードの与えた方の注意点

猫によって食べる量やスピードは異なります。1つのフードボウルでまとめて与えてしまうと、早く食べる子はたくさん食べ、ゆっくり食べる子は少ししか食べられないということも。
そもそも猫は単独で狩りをして、単独で食べる動物です。猫1匹につき1つのフードボウルを用意し、他の猫から離れた場所に置き、自分のペースで食べられるようにしてあげてください。

また、子猫と成猫では与えるフードの種類が異なります。子猫のフードはカロリーが高いので、成猫が食べ続けると肥満の原因に。同じ部屋で与えるとどうしても食べてしまうという場合は、別室で与えるのも1つの方法です。

7.猫用にフードを手作りして与えるのはOK?

人用に味付けされた食べ物を与えるのはNGですが、茹でたササミなどを少量、総合栄養食のトッピングとして与える場合は問題ありません。

しかし、すべてを手作りするには猫の栄養学をしっかりと学ぶ必要があります。人が食べる「肉」と肉食動物の猫が食べる「肉」は異なります。骨や皮、内臓や血液を取り除いた肉は、猫の体に必要な栄養バランスを満たすことができません。しかし、「添加物や保存料が気になってどうしても手作りしたい」とい場合は、一度かかりつけの獣医師にご相談ください。

8.猫が口に入れると危険なもの

猫は犬に比べて美食家で、危険なものを食べてしまうことはあまりありません。ただし家庭内には、猫が意図せず口にしてしまうと危険なものがたくさんあります。

中毒症状としてよく見られるのは、大量のよだれ、嘔吐、下痢。症状が強い場合は泡を吹いたり、ひきつけや痙攣を起こしたりする場合もあります。そのような症状が見られたら、早急に動物病院に連絡してください。その際は可能な限り原因となるものを確認して、伝えるようにしましょう。

また、猫が口に入れると危険なものは日頃からきちんと管理し、猫が誤って口にしないよう注意してください。刺激不足やストレスによって、食べられないものを食べるケースがあります。猫にとって安全な猫草は常備するほか、上下運動をしたり、おもちゃでしっかり遊んだり、猫らしい行動ができる環境を整えてあげましょう。

ネギ類、チョコレート、アルコール

  • 猫にとって危険な食べ物はたくさんあります。直接これらを食べなくても、調理したものに含まれている場合があります。猫がネギ類を好んで食べることは通常ありませんが、玉ネギと一緒に調理した肉類やスープを食べてしまう場合があるため注意が必要です。ネギ類は血液中のヘモグロビンを破壊する成分を含んでいるので、貧血を起こす可能性があります。

  • ネギ類、チョコレート、アルコール

殺虫剤、洗剤、消毒薬

  • 猫が自ら進んで食べることはありませんが、足で踏んでしまったり体にかかったりすると舐め取ろうとして飲み込んでしまいます。猫が意図せず飲み込むことがないよう、管理には十分注意が必要です。

  • 殺虫剤、洗剤、消毒薬

人用の医薬品、サプリメント、アロマオイル

  • 人と猫では肝臓の機能が異なります。たとえ、人にとって無害な物質でも猫が中毒を起こすことは少なくありません。
    また、人と比べてはるかに体が小さいため、人にとって無害な量でも猫には過剰摂取になります。人用の医薬品やサプリメント、アロマオイルは猫に直接与えてはいけません。与えるつもりがなくても皮膚について皮膚から吸収されたり、呼吸とともに吸い込んだり、自分でグルーミングして体内に入ってしまう可能性があります。猫が間違って口にしないよう、安全に管理してください。

  • 人用の医薬品、サプリメント、アロマオイル

観葉植物や切り花

  • もともと猫には草を食べる習性があります。室内飼育下では猫が好きなイネ科の雑草を食べられないので、代用として観葉植物や切り花を食べてしまう場合があります。
    猫にとって有害となる植物はたくさんありますが、特にユリ科の植物は危険なものが多いです。食べるのはもちろん、切り花が生けてある花瓶の水を飲むだけで中毒を起こすケースがあります。室内に観葉植物や生花を置く場合は、猫が興味を示していないか十分に確認してから置くようにしましょう。少しでも興味を示す場合は置くのを諦めるか、猫が絶対に入らない部屋に置いてください。

  • 観葉植物や切り花

その他

  • 猫用おもちゃで遊んでいるうちに食べてしまうケースもあれば、布製品や毛糸製品を好んで食べる猫もいます。犬と違って美食家の猫ですが、食べられないものを食べてしまい消化管に詰まってしまったという事故は意外に多いのです。
    日頃からよく観察し、誤食の危険性があるものは猫が近づけない場所に置くよう心がけましょう。

  • その他

8.まとめ

愛猫のフードを選ぶ時は、「総合栄養食」の記載をチェックしましょう。そのうえで、年齢に適したフードを選んでください。
さまざまなフードを試してみると愛猫の好みが見えてくるはず。猫は食べ慣れないものを避ける傾向があるため、子猫期から同じフードばかり与えていると病気の管理に必要な療法食を食べてくれない場合があります。

また、食欲がなくなった際にも食べられる食事のレパートリーが多いと安心です。子猫期からいろいろな食感や風味の食べ物を与えておくと良いでしょう。
ただし、総合栄養食であっても適正カロリーで与えること。また、喜ぶからといってたくさんおやつや人間の食べ物を与えてはいけません。肥満はかわいい愛猫を苦しめる原因になります。

食事は猫にとって必要な栄養素を取り入れるだけでなく、体や頭を使う大切な機会でもあります。いろいろな場所にお皿を置いたり、知育玩具を使ったり、投げたり、隠したりというように、与え方を工夫すると心身の健康にもつながります。愛猫と長く一緒に暮らしていくために、適切な食事を与えるよう心がけてください。

監修いただいたのは…

もみの木動物病院
獣医師 村田 香織先生

神戸市のもみの木動物病院にて犬や猫の問題行動の治療を行う。犬の幼稚園やしつけ教室を行う㈱イン・クローバー代表。犬や猫が楽しく幸せに暮らすために重要な子犬子猫期の教育を広めるため、執筆・講演活動など多方面に取り組む。著書として「こころのワクチン」「パピークラス&こねこ塾スタートBOOK」など。最近ペットと過ごせるカフェ「ここっと」をオープン、個人Instagram(@murata596)で、ペットとの暮らしを配信中。

もみの木動物病院 獣医師 村田 香織先生

新着記事

犬と暮らす犬と暮らす

猫と暮らす猫と暮らす