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猫との快適ライフ~トラブル(猫の困った行動)回避の秘訣は環境エンリッチメント~

猫との快適ライフ~トラブル(猫の困った行動)回避の秘訣は環境エンリッチメント~

猫と暮らし始めると、ちょっとどころではない「困った行動」に日々遭遇することがあります。
トイレ以外での粗相や爪を研いでほしくない場所での爪とぎ、夜間の運動会なんてことは猫あるある。このほか、驚くほど高い場所に昇って飾ってある観葉植物や小物を落としたり、食事中のテーブルの上に乗ってご飯をねだったりすることも。

こういった行動の多くは、猫が快適に暮らせるような環境を作ってあげることで回避することができるかもしれません。
いまや様々な動物園や水族館などで話題となっている環境エンリッチメントを愛猫の生活環境にも取り入れていきましょう。

1.叱らなくて済む環境を作ってみましょう

トイレ以外での粗相やしてほしくない場所での爪とぎ、強すぎる甘噛みetc.…。
ついつい叱ってしまいたくなりますが、猫を叱る場合はそのタイミングが大切。間違った叱り方をすると愛猫から嫌われたり恐れられたりするはめになることも。

猫を叱ってしまうのは、猫がその本来持っている習性と人間の都合とが合致しないためかもしれません。では、猫の習性と言われて思いつくことは何でしょう。
代表的なものを幾つかあげてみました。

  • ・ 排泄場所にこだわりがある
  • ・ 狩猟本能がある
  • ・ 綺麗好き
  • ・ 少しずつ食べるのが好き
  • ・ 高い所に昇る
  • ・ 爪を研ぐ
  • etc.

猫がこれらの習性に基づいた行動をのびのびとできるような環境を目指し、猫が快適に過ごせる工夫していくと、叱ること自体が減り、飼い主と愛猫そろっての快適ライフが整ってくるかもしれません。下手に叱って愛猫に嫌われるよりも、叱らずに済む環境を作ってみませんか?

今回はこの中から3つの環境エンリッチメント対策をご紹介します。

2.猫のこだわりを満たす排泄場所

猫のこだわりを満たす排泄場所

猫は排泄場所にこだわりがあります。
排泄は健康の基本なので猫にとってストレスフリーなトイレを用意してあげましょう。

快適トイレ環境のポイント

猫の快適トイレのポイントは5つです。

トイレの形状と大きさ

猫は物陰に隠れ獲物を待ち捕らえる習性があるため、体に匂いがつくことを嫌がります。
また、猫は排泄時、砂を掘る⇒しゃがむ⇒排泄が終わると姿勢を変え砂をかける、という一連の行動をとる習性があります。このため、トイレは匂いがこもりにくい形状で猫が姿勢を変えやすい大きさがお勧めです。

トイレ砂の形状と量

猫は目の細かい大きさが均一な砂(直径6㎜以下)を好み、排泄時に砂を軽く掻いて窪みを作ったり、砂をかけたりする習性があります。この習性を満たす形状の砂を使って、砂の深さが5㎝以上にするのが理想的です。

トイレの清潔さ

少なくとも1日2回はトイレ内の排泄物を取り除きましょう。
トイレ砂は1~2週に1回は全部交換し、トイレ本体は月に1~2回はしっかりと洗浄し、染みついた匂いを除去しましょう。

置き場所

安心して排泄でき、かつ静かな場所で猫が行きやすい距離にトイレを設置しましょう。突然音を立てる洗濯機や冷蔵庫、レンジ、エアコンといった家電製品から離すことが大切です。
食事場所や水置き場、休息場所からも離して設置してください。

トイレの数

猫の頭数+1個以上のトイレがあると理想的です。こまめに排泄物を取り除けない時や愛猫の移動範囲が広い時はトイレの数を増やしてあげましょう。
多頭飼育の場合、色々なものの共有を嫌がる猫もいます。猫それぞれに自分専用のトイレや高い位置にあるプライベートな休息場所、爪とぎ、食器を用意してあげると環境エンリッチメントになります。

粗相の多くは排泄環境が快適でないことが原因とも言われています。猫の理想的なトイレ環境は掃除の手間がかかりますが、粗相の後片づけや猫の健康面でのメリットなどトータルで考えると、一緒に暮らす人間にとっても理想的なものかもしれません。

※粗相には病気や過度なストレス、発情などが原因として関与していることがあります。粗相が続く時、排泄状態がいつもと異なるような時は早めに動物病院を受診しましょう。

3.猫の狩猟本能を満たす環境を

猫の狩猟本能を満たす環境を

猫には狩猟本能があり、遊ぶ時、飼い主さんにじゃれつく時などに、狩猟に関連した行動をとることがあります。この行動は、獲物に対して「忍び寄る」・「追いかける/突進する」・「飛びかかる」・「噛みつく/咥えて振り回す/空中に放り出す」を模したものです。

遊び心を満たすポイント

遊び心を満たすポイントは4つです。

おもちゃの大きさ

猫が咥えられる大きさ・重さのものを選びましょう。猫の頭の1/2~1/3程のサイズがその猫にとって咥えやすい大きさです。
噛んで抱きしめての猫キックが好きな場合は、猫が持ち運べる重さでキックしやすい大きめなおもちゃも用意してあげましょう。

おもちゃの種類と遊び方

猫が獲物とする生き物はネズミやウサギ、鳥、小型の爬虫類、カエル、虫など様々です。これらの生き物に似た形のおもちゃでその動きを真似ると遊び心をくすぐれます。
遊んであげる時間が中々つくれない時は、ひとり遊びができるおもちゃを与えるのもお勧めです。自走式のおもちゃの他、段ボールやバスタブの中にボールを入れておくと、転がる様子に興味をもってひとり遊びをしてくれることも。
猫もずっと同じおもちゃ、同じ遊び方だと生活が単調になり遊びに飽きてしまいます。複数のおもちゃを日替わり・週替わりで与えて飽きさせないようにしましょう。

遊ぶタイミング

ちょっとお腹が減っているような時、起きて排泄を済ませた後、などが猫の遊びたがるタイミングです。
愛猫と目があった時にねだられる前に「おいで」、「遊ぼう」と声をかけてあげましょう。

※ 猫がくつろいで眠っている時に起こして遊ぼうとしないでください。同様に、人が眠っている時に「遊んで」・「かまって」と愛猫がねだってきても応じないようにしましょう。眠っていてもねだれば(時に舐めたり噛んだり引っ掻いたりすれば)起きて遊んでもらえると覚えてしまいます。

遊ぶ時間と回数

猫は短距離選手型なので、遊ぶ時間は1回に5~10分程度にしましょう。
遊ぶ回数は多いほど喜ばれますが、猫の年齢や体力の様子を見ながら調節してください。
年齢を重ねると遊ぶより飼い主さんとの触れ合いを好むようになることもあります。撫でられる時間が長いと嫌がって噛んでしまう子もいるので触れ合う際は愛猫の様子を見て嫌がる前に終わらせましょう。

遊ばせるときの注意点

①清潔に
猫にとってのおもちゃは口に入れるものなので、清潔にすることが大切です。洗濯できるようなものを選びましょう。

②誤食に気をつけて
おもちゃの誤食を避けるため、必ず飼い主さんの目の届く範囲で遊ばせましょう。特に紐状のおもちゃは猫の舌の構造上、喉の奥に入ると飲み込んでしまいがちで危険です。
飲み込んでしまう可能性のあるおもちゃは遊ぶ時以外、愛猫の手の届かない場所にしっかりと仕舞ってください。

③お留守番時のおもちゃ
中にフードが入る知育トイがお勧めです。お留守番前の食事を少なくし、減らした分を知育トイの中に入れておくと肥満の心配もありません。
また、知育トイで遊ばせると、猫の狩猟本能の最終段階、「食べる」までが満たされることになります。知育トイにも色々な種類があるので、愛猫が気に入るものをプレゼントしてみましょう。

④手足をおもちゃにさせない
人の手や足を直接、あるいは数センチの近距離で追いかけさせたり、じゃれさせたりする遊び方は絶対に控えましょう。手足を使って遊んでいると猫は飼い主に忍び寄ったり、飛びかかったり、噛みついたりすることは楽しいこと、やっても良いことだと覚えてしまい、遊びに関連した攻撃性が問題となることがあります。

【関連記事】
※猫の噛み癖でお困りの方はこちらをご覧ください。
猫が噛む理由は?しつけ方や噛みグセを直す方法を獣医師が紹介
本能をくすぐる厳選の猫おもちゃをご紹介

4.美味しく食べられる環境を

美味しく食べられる環境を

猫は体調が悪い時だけでなく、食事環境などに不満があると、食欲が落ちてしまうことがあります。こんな場合、新しいフードに変えると一時的に食欲が復活することがありますが、原因が解消されないと、また同じことの繰り返しになってしまいます。
頻繁にフードを変えないといけない猫の場合、病気がないか動物病院で診てもらうとともに、食事環境やトイレ環境なども見直してみてください。

食事環境のポイント

猫が美味しく食事できるポイントは5つあります。

栄養バランスの取れた食事

栄養バランスの取れた食事は健康に不可欠です。パッケージに『総合栄養食』と記載されているフードで年齢や体調あったもの選びましょう。
ドライフードは酸化しないよう、開封後2週間~1か月以内で食べきれるサイズのものを選ぶのがお勧めです。
ウェットフードは開封後冷蔵保存し、1日以内に使い切りましょう。
『一般食』と記載されているものはおやつやトッピングとして与えるものです。誤って主食としないようご注意ください。

愛猫にあった食事の回数

猫は少量頻回の食事を好みます。成猫では日に2回以上、子猫や老猫では3~4回以上に分けて与えましょう。
肥満気味だったり夜間に活発に動くようであれば、朝や昼の分を知育トイで与えてみましょう。少量頻回の食べ方にもなるうえ、日中の活動量も増えてきます。

食器の種類と置き方

食器の種類や置き方で飲水量や食事量が変わることがあります。陶器製や磁器製はアレルギーの心配がなくお勧めです。フード用は浅めで丸く窪んだものが、お水用は直径が大きいものが好まれがちです。
窮屈な姿勢で食べたり飲んだりすることがないよう、食器は愛猫の飲食しやすい高さに設置しましょう。

置き場所

落ち着いて食べられる静かな場所で食事をさせてあげましょう。家電製品やトイレの近くは音や匂いがストレスとなるので、避けてください。
泌尿器疾患になりやすい猫にとって水分補給はとても大事です。気軽に飲めるよう複数箇所に水飲み場を設置しましょう。また、蛇口やコップから飲むのが好きだったりする猫もいるので、愛猫が好む飲み方でどんどん飲ませてあげてください。

おやつ

おやつはカロリーオーバーや栄養不足といった栄養不良の原因とならないよう、一日に与える量は愛猫の必要カロリーの5~10%以下にしましょう。

【関連記事】
猫のフードって何がいいの?適切な食事回数やフードの選び方、与え方を獣医師が紹介

5.まとめ

猫も日常生活のルールに関するトレーニングはできます。ただ、ルールとして猫の行動を制限する必要が出てきたときは、必ずその代替案/代替物を準備してあげてください。
例えば、絨毯での爪とぎを制限するならば愛猫の気に入る爪研ぎ器を探して与える、蛇口から水を飲むのが好きな猫にキッチンを禁止するなら洗面所で飲ませる、といったようにすると環境エンリッチメントを維持できます。

監修いただいたのは…

獣医師・鍼灸師
竹澤 康子先生

以前、ペピイ動物看護専門学校の非常勤講師して子猫・子犬の育て方の講義などを担当していたご縁からおタケ先生として「じゃれ猫ルーム」を執筆。
鍼灸・漢方をメインとする往診型動物病院を開業準備中。

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