犬に寄生するノミの対処法を解説!見つけ方や駆除方法、治療・予防方法について
犬、猫、人間などの血液を好み、寄生・吸血しながら生きるノミ。
犬の皮膚炎や病気のみならず、飼い主さんの病気を引き起こすこともある、とてもやっかいな寄生虫です。
一匹のノミが卵を産みどんどんと増殖していくため、まずは一匹でも未然に防ぎたいものですよね。また、万一寄生してしまったときのために、正しい対処法を覚えておくのがベストです。
そこで今回は、犬のノミの見つけ方や駆除方法、治療・予防方法についてご紹介します。
1.犬に寄生するノミの特徴
世界中で多くの種類が生息するノミですが、犬に寄生するノミは「猫ノミ」が多いと言われています。大きさは約1.5〜3mmで平べったいゴマ粒のような形をしており動物の血液を好むため、犬や猫などの体に寄生して吸血します。
大きな特徴としてはそのジャンプ力。高さ30cmほど飛び跳ねることができるため、最初に寄生したところから周囲の人やカーペットなどに飛び回りながら卵を産み増殖していきます。また卵は幼虫→さなぎ→成虫と成長していきますが、犬に寄生して吸血をするのは成虫のみです。
2.犬に寄生するノミは人間にもうつる?
ノミは犬や猫に限らず人間に寄生することもあるため、ペットから飼い主さんへうつってしまう可能性があります。
人間にノミが寄生すると、かゆみやブツブツなどの皮膚症状が出ることも。
ペットだけのこと、と決して油断せず、飼い主さんも十分な注意が必要です。
3.ダニとの違いについて
ノミと同じように犬に寄生して吸血する虫として、ダニがあります。
どちらも小さな害虫で、吸血された時の症状も似ているため混同してしまいがちですが、実は全く別のもの。ではノミとダニ、どのような違いがあるのでしょうか。
ノミとダニの違いは?
ノミは人や犬猫など恒温動物の体に住みつきますが、ダニは動物以外にも食糧や服の繊維の中など、さまざまなところに住みつきます。
成虫しか吸血をしないノミと違い、ダニは成虫になる前でも吸血を繰り返し行います。しかしその吸血には平均で3~5日間、長い場合は10日以上と時間をかけ、この間は産卵しません。そのため、早めの駆除ができれば周囲での増殖の可能性はノミよりも低くなります。
ダニを見つけた際の対処法
ダニは口吻(こうふん)という器官で、しっかりと皮膚にくっつきながら吸血しているため、無理に引っ張るのはNG。ダニ自体は取ることができても、口吻が犬の体内に残ってしまい、吸血によるアレルギー性皮膚炎や感染症の原因になることがあります。
必ず外部寄生虫駆除薬を使用して自然に落ちるのを待つか、かかりつけの動物病院で適切な処置をしてもらいましょう。
⇒犬のダニ(マダニ)対策!ダニを見つけた時の対処法と予防法を獣医師が解説
4.ノミはどこから発生するの?
増殖量やそのスピードが非常にやっかいなノミですが、そもそもはじめの一匹目はどこから発生し犬に寄生するのでしょうか。
その経路を知ることが、寄生虫対策の第一歩です。
ノミの寄生経路
地面や草むらなどにひそんでいたノミの成虫が、散歩中の犬に飛びつき寄生するのが一番多いケースと言われています。また、隣にいる飼い主の服などに飛びついたノミが家の中に持ち込まれ、犬に寄生することもあります。
ノミに寄生されている犬とドッグランなどでじゃれ合ったり交流することによって、寄生してしまうことがあります。
犬に寄生するノミの大半は「猫ノミ」のため、犬猫ともに飼育している場合は要注意。また、野良猫が家の周辺を出入りしている環境も、ノミが寄生する経路となりやすいものです。
5.ノミの寄生リスクを高める要因
目には見えづらいノミを一匹残らず回避することは難しいでしょう。ですが、ノミに寄生されるリスクを軽減させることはできます。
まずはリスクを高める要因をしっかりとチェックし、ノミ対策に活かしていきましょう。
予防薬を投与していない犬は、ノミが寄生する可能性が高くなります。
ノミは、フケやホコリ、湿った場所を好む害虫。例えば飼い主の服などから運ばれたものでも、不衛生な環境下でカーペットやソファなどに卵や幼虫が住み着くと、やがてそれは増殖し犬に寄生してしまいます。
シャンプーやブラッシングを定期的にしていないと、その不衛生な体がノミの住処になってしまいます。また、万一の寄生に気が付くことができず、増殖の原因にもつながります。
6.ノミの寄生によって起こる病気
では、もしもノミが寄生してしまったら、どのような病気を引き起こしてしまうのでしょうか。
万一の時の症状やサインについて覚えておきましょう。
アレルギー性皮膚炎
皮膚が点々と赤くなっていたりジュクジュクしている、毛が薄くなっている箇所があるなどの症状がみられます。しきりに体を搔いていたり、地面に体をこすりつけていたら皮膚炎のサインといえます。
貧血
ノミに吸血されるため、体内の血液が減少し貧血を起こしてしまいます。特に子犬は重症化しやすく、ふらつきや食欲不振が見られる場合は貧血を起こしている可能性も。口内粘膜が白くなるのも貧血症状の特徴です。
瓜実条虫症
グルーミングなどをきっかけに、瓜実条虫(サナダ虫)の幼虫が潜んでいるノミの成虫が犬の体内へ入ると感染します。
症状としては下痢や食欲の低下などが見られ、犬は肛門にかゆみや違和感を覚えるため、しきりに肛門を舐めるようなことがあればサインといえるでしょう。罹患時には肛門部分に白い虫が見えるので、その場合はすぐに動物病院へ連れていきましょう。
7.ノミを見つける方法
どんなにノミ対策をしていても、100%の予防はなかなか難しいもの。大切なのはできるだけ早い段階で気がつくことと、スピーディーかつ正しい処置です。
では、どのようにノミを発見し、もし見つけた場合はどのように対処するのがよいのでしょうか。
犬に寄生するノミは1.5〜2㎜くらいの大きさのため、犬の体表をよく観察すると発見することができます。こまめに犬の体を見てあげることが早期発見につながるでしょう。 実際にノミの姿が見えなくても、0.5㎜くらいの小さい粒状の卵や、黒い点々(ノミの糞)を目にするケースもあります。
より確実に発見できるのはブラッシングです。できるだけ目の細かいクシを使って丁寧に犬の毛をブラッシングしましょう。ブラッシング後、黒い粒がクシについたら湿らせたティッシュの上に乗せ、その粒がティッシュの上で溶け、赤茶色になったら要注意。それはノミが犬の血を吸って排泄した糞で、ノミに寄生されている可能性が高いといえます。
8.ノミを発見したときの対処法
ノミを発見したとき、あわてて手でつぶすようなことは絶対にしてはいけません。
もしもノミが卵を持っていた場合、つぶしたときにその卵が周囲に飛び散り、むしろ増殖が拡大してしまいます。また、その飛び散った卵が万一犬や人の口内に入ってしまうと、前述の瓜実条虫への感染リスクが高まります。
ただし、上記の対処法は自宅でできる応急処置です。なるべく早めにかかりつけの動物病院へ行き、適切な処置をしてもらいましょう。動物病院ではすぐに駆虫薬が投与され、その後24時間以内にほとんどのノミは体表から落ちてなくなります。
市販の寄生虫駆除剤やノミ取り用の首輪などもありますが、アレルギーなどを引き起こす可能性もあるため、自己判断はせずに獣医師へ相談するのがベストです。
またその後は、ノミの寄生によって他の病気を引き起こしていないかを確認することも大切。動物病院ではそのあたりもしっかり検査してくれるので安心ですね。
9.ノミの予防法
ほんの小さなノミですが、一匹でも寄生されると重大な病気にもつながるあなどれない存在であることがわかりましたね。
一番は寄生されないようまずしっかりと予防すること。そして万一の際の被害を最小限にとどめることです。日常的なケアを心掛け、ノミの被害から大切な愛犬を守りましょう。
定期的に予防薬を投与しましょう。市販薬もありますが、動物病院で適切なものを投与してもらうのがベストです。
ノミは草むらなどに潜んでいる可能性が高いため、いつもの散歩コースにそのような場所があったらコースを見直し、草木の多い場所は避けるようにしましょう。
部屋のホコリや食べかすなどはノミのエサになり増殖を引き起こします。一匹でもノミが部屋にいた場合にはこのような不衛生な環境が被害を拡大させるため、常にしっかりと掃除をし、清潔な飼育環境を心がけましょう。
散歩へ出た日にはシャンプーをする、定期的にブラッシングをする、など、こまめなケアがノミの早期発見と被害拡大防止につながります。
10.まとめ
たった一匹の寄生から、大きな病気を引き起こすこともあるノミ。とてもやっかいですね。
冬場であってもすでに部屋の中には卵や幼虫がいるかもしれないため、油断は禁物です。健康習慣のひとつとして、まずは定期的な予防薬と飼育環境の確認を。そして万一のときには動物病院へ連れて行きましょう。
愛犬はもちろん、飼い主やドッグランなどで一緒に触れあう他の犬を守るためにも、しっかりとノミ対策を徹底させてください。
監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。