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犬の外耳炎はどのような病気?症状や原因などを徹底解説

犬の外耳炎はどのような病気?症状や原因などを徹底解説

犬の病気のひとつとしてよく耳にする「外耳炎」。
いったい何が原因で、どのような症状を引き起こすのでしょうか。ここでは、犬の外耳炎の原因や症状、治療法などについてご紹介します。

1.犬の外耳炎とは

犬の耳は、耳の外側から内側にかけて外耳→中耳→内耳と続きますが、この中の外耳道(耳たぶから鼓膜へ通じる道)で起こっている炎症のことを外耳炎といいます。
犬の外耳道(がいじどう)は垂直部と水平部で構成されたL字型をしており、通気性がよくありません。そのため、犬は他の動物と比較しても外耳炎を発症しやすいといわれています。

犬種や年齢関係なく、どの犬でも発症する可能性のあるこの外耳炎。放っておくとその奥の中耳や内耳にまで炎症が広がり、最悪のケースではすぐ隣に位置する脳にまで影響が出てしまうこともあるため、早期発見と適切な処置が大切になります。
また、再発・慢性化しやすいのもこの外耳炎の特徴。ときには治療が難しくなり、痛みやかゆみなど犬にとってはかなりつらい状態となります。重篤な症状になる前にしっかりと治療しましょう。

2.犬の外耳炎の症状

犬の外耳炎の症状

外耳炎の症状

・耳のかゆみ、痛み
実際に飼い主にはわからないものですが、犬にとっては非常につらい症状の一つです。

・耳が赤く腫れる
外耳道の中までは確認することができませんが、耳介(耳たぶ)が赤い、出血する、などの症状が見られます。

・耳垢や膿の増加による悪臭
耳垢が増えたり膿が出ることもあるため、そこから独特な臭いがします。

外耳炎のサイン

・頭を振る
・頭や耳を掻く
・頭や耳を家具や床にこすりつける
・耳のまわりを触られるのを嫌がったり怒ったりする
・他の犬からしきりに耳を舐められる
・呼びかけに気づきにくくなる

3.犬の外耳炎が起きる原因

犬の外耳炎が起きる原因

外耳炎を発症する原因としてはさまざまなものがあげられます。

原因1

アレルギー性皮膚炎

食べ物やハウスダスト、ノミ・ダニなどに対して、過剰に免疫が反応することによって発症する皮膚炎。アレルギーを持つ犬は皮膚のバリア機能が低下するため、外耳炎を発症しやすくなります。

原因2

脂漏性皮膚炎

皮膚のターンオーバー(表皮の角化細胞が生まれてから剥がれ落ちるまでの課程)が何らかの原因で異常をもたらし、皮膚が脂っぽくなったりフケが多く出る皮膚炎。湿りやすい犬の耳の中はこの脂漏性皮膚炎を発症しやすく、それが引き金となって外耳炎になってしまうことがあります。

原因3

耳ヒゼンダニなどの寄生

犬の外耳道に寄生し卵を産み付け、幼虫の状態から成虫になるまで、犬の耳の中で過ごすダニの一種。表皮に発生する耳垢や組織液を餌にしながら耳の中に居座り続けることによって炎症を起こし、外耳炎発症の原因につながります。

原因4

異物混入

ダニなどの寄生虫だけではなく、散歩中に草むらや藪へ入ってしまうと耳の中に植物の葉や種、虫などが入ってしまうことがあります。ときには犬自身の毛が耳の中に混入してしまうことも。それによって耳の中に炎症が起こり外耳炎を引き起こすことがあります。

原因5

内分泌疾患や免疫介在性疾患などの病気

内分泌疾患にもさまざまありますが、そのひとつである甲状腺機能低下症は、高齢になるとみられることが多い疾患。甲状腺からでるホルモンが体の代謝を調整するために皮膚の免疫力を下げ、外耳炎を引き起こすことがあります。
このような免疫力を下げる内分泌疾患として、犬では副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や性ホルモン失調症なども挙げられます。
また、免疫介在性疾患は若齢犬でも発症がみられることもあり、同じく免疫力を下げる病気です。

原因6

腫瘍、ポリープなどによる耳道の占拠

何らかの炎症による刺激や、もともと持っている耳垢腺と呼ばれる分泌腺が腫れてしまい、やがてそれがポリープになることがあります。それによって耳道の通気が悪くなり、外耳炎を引き起こすことがあります。

原因7

耳道が狭い、耳毛が多い

生まれ持った耳の構造で、耳道が狭かったり耳毛で埋め尽くされている犬は耳の通気性が悪く、これも外耳炎の原因となることがあります。

原因8

梅雨時など季節性による温湿度環境

梅雨時や夏場など、気温や湿度が高い時期はどうしても耳の中もジメっとしてしまいます。このような季節性の要因も耳の通気を悪化させ、外耳炎を引き起こす原因となります。

4.犬の外耳炎の治療方法(動物病院の場合)

犬の外耳炎の治療方法(動物病院の場合)

病院での治療方法

  1. 問診・触診

    まずは自宅での様子を飼い主からヒアリングしたり、実際に耳に触れてみて痛がるかどうかなどを確認します。

  2. 耳の中の状態を見る

    動物病院には、「耳鏡(オトスコープ)」と呼ばれる耳の奥の状態まで見ることのできるスコープがあります。この耳鏡を使って耳の中までしっかりと見て、炎症の程度や鼓膜の異常、異物の有無などを確認します。状態次第でこの先の治療方法も変わるため、非常に大切なステップとなります。

  3. 耳道内の洗浄

    洗浄液を使いながら耳垢や膿を取り除き、耳道をきれいな状態にします。耳の中が汚れていては、どんなに投薬をしても効果が出にくいもの。このあとのスムーズな治療のためにも必要な処置となります。
    ただし、炎症が重度である、鼓膜が破れているなど洗浄ができないケースもあり、その場合は麻酔によって鎮静化させての治療や、高度治療が可能な二次施設への紹介となることもあります。

  4. 投薬

    菌の繁殖やかゆみを抑えるための投薬をします。スポットタイプの点耳薬が主ですが、最近では粘度の高いゲルタイプの点耳薬も出てきて、薬剤効果の持続性が高いため自宅での点耳が必要なく管理が容易なものもあります。獣医師と相談しながら適したタイプを選びましょう。

  5. 発症原因や症状レベルごとのアプローチ

    外耳炎発症原因を突き止めるため、視診、オトスコープでの検査、耳垢の細胞検査、重度の場合CTやMRIが必要になることがあります。
    例えば、耳ヒゼンダニの寄生が耳垢検査にて確認できた場合には駆虫薬の投薬を。オトスコープにて外耳の炎症が見られた場合には炎症止めの点耳薬を投薬するなど、必要に応じた処置を行います。

  6. 外耳炎を引き起こした原因に対する治療

    炎症を抑え、かゆみや痛みを取り除いてあげる処置はファーストステップとしてもちろん大切ですが、そもそもの発症原因を知りその治療を行うことも非常に大切です。血液検査やレントゲン、エコーなどで基礎疾患を調べるなどし、問題があった場合はそこに対する治療も継続して行います。

治療費

動物病院によって異なりますが、項目としては初診料(再診料)、洗浄や投薬などの処置費用、処方薬費用、検査費用などがあげられるでしょう。
症状のレベルや選ぶ薬の種類、治療が必要なのは片耳だけか、それとも両耳ともなのかなど、状況によっても大きく変わってきます。

一般的には処置費用で1,000~3,000円、処方薬で3,000~5,000円ですので、おおよそこのくらいの金額がベースとなるでしょう。

5.犬の外耳炎の予防方法

犬の外耳炎の予防方法?

残念ながら、絶対に外耳炎にかからないようにする予防策はありません。ただし発症リスクを軽減させることはできます。
本来犬の耳には耳の中を正常な状態に保つ自浄作用やバリア機能があります。耳介環境の悪化・先天的な耳道狭窄(耳道が狭い状態)・耳毛が多い、などが原因でこの機能が作動しなくなり発症リスクが高まるといわれていますが、この中でもまず「耳介環境の悪化」は飼い主によって防ぐことができるはず。

それには日々の暮らし方、つまり飼育環境が大きく影響します。まずはこの飼育環境をしっかりと整えることが、外耳炎の発症のリスクを軽減させる対策といえるでしょう。

飼育のポイント1

室温、湿度を適切に保つ

あきらかに暑すぎたり湿度が高くジメジメしているときは、室内を心地よく過ごせる程度の 状態にしましょう。反対に冬場の過度な乾燥も皮膚にはよくありません。そのような時には加湿をするなど工夫を心がけます。

飼育のポイント2

寝床の環境を整える

普段使用している犬の寝床を衛生的な状態にしておくことも大切です。長い間寝具を洗濯していなかった…なんてことはありませんか?ペタッと耳を床につけて眠る犬も多いため、このような不衛生な寝具は外耳炎発症のリスクを高めてしまいます。
常に寝具をきれいな状態にしておく、季節によっては通気性の良い素材に取り替えるなど、寝床の環境づくりにも気を付けましょう。

飼育のポイント3

散歩や遊びの場を見直す

例えば、まったく整備のされていない草むらや藪の中へ勢い良く入り込んだり走り回ることは、耳の中に異物が入ってしまう危険性を高めます。自然の中で遊ばせるときには、しっかりと整備された、きれいな環境で遊ばせるようにしましょう。

6.自宅でのケア方法と注意点

外耳炎の予防策として耳の衛生状態を保つことは大切ですが、間違ったケア方法ではかえって耳の中を傷つけてしまい、トラブルを招くことも。
自宅でケアする場合はイヤークリーナーを含ませたコットンやガーゼを使用しながら、目に見える範囲の汚れをふき取る程度で済ませましょう。
綿棒や指を耳の奥まで入れることは、鼓膜を傷つける危険があるためNGです。

7.外耳炎になりやすい犬種

外耳炎になりやすい犬種の特徴として、アレルギー性皮膚炎を発症しやすい、先天的に耳の構造が特徴的である(垂れ耳や自毛の量が多い)、皮脂腺が大きく皮脂が多く出る、などがあげられます。これらの特徴を持つ代表的な犬種は以下のものになりますが、どれかひとつの特徴を持つ犬、複合的な理由で発症しやすい犬など、その理由はさまざまです。

  • ビーグル
  • シュナウザー
  • 柴犬
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー
  • ダックスフンド
  • コッカー・スパニエル
  • シー・ズー
  • フレンチ・ブルドッグ
  • ヨークシャー・テリア
  • プードル

など

8.外耳炎が疑われたら?やってはいけないNG行為

外耳炎が疑われたら?やってはいけないNG行為

外耳炎が疑われる場合はすぐに動物病院へ連れて行き、獣医師による適切な治療をしましょう。
自宅で念入りな耳の掃除をしたり、自己判断のみで処置をするのは悪化の原因にもなりかねません。まずは動物病院で適切な治療をしてもらうことはもちろんのこと、例えば使用したい市販薬などがある場合にもその使用方法や使用頻度を確認するなど、獣医師に相談することを心がけましょう。

9.まとめ

かゆみや痛みなど、犬にとっては非常につらい症状を伴う外耳炎。
まずは日々の飼育環境を整えることで発症リスクを抑えていきましょう。
もしも外耳炎が疑われる場合は自己判断でのケアは控え、できるだけ早く動物病院で受診をしてくださいね。

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 勤務医 獣医師 高柳 かれん先生

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