【獣医師監修】猫は犬より太りやすい?猫の肥満に潜む危険と、肥満度チェック・ダイエット方法を紹介!
ペットの室内飼いが多くなった現代、犬や猫における肥満の割合は年々高まる傾向にあります。中でも猫は犬よりもその割合が高く、獣医師はもちろん、飼い主にも愛猫の肥満に対するより高い意識が求められるようになりました。
うちの猫はダイエットが必要?
ダイエットってどうすればよい?
そもそもなぜ猫は太りやすいの?
ここでは猫の肥満・ダイエットについてひもといていきましょう。
ペットの室内飼いが多くなった現代、犬や猫における肥満の割合は年々高まる傾向にあります。中でも猫は犬よりもその割合が高く、獣医師はもちろん、飼い主にも愛猫の肥満に対するより高い意識が求められるようになりました。
うちの猫はダイエットが必要?
ダイエットってどうすればよい?
そもそもなぜ猫は太りやすいの?
ここでは猫の肥満・ダイエットについてひもといていきましょう。
目次
猫の肥満症が引き起こす病気
計画的な食事制限
定期的な運動
無理なく計画的にダイエットさせる
獣医師とともに健康維持を
「我が家の愛猫、ちょっと太りぎみで格好わるいから減量しないと…」
このように、以前はペットが太っていることは、単に“体型(ビジュアル)の話”として捉えられていました。しかし近年、そこには健康寿命を脅かす大きな危険が潜んでいることが問題視されています。太った猫の体は、内臓脂肪がたまり炎症が長く続いている状態。つまりそれは立派な“病気”で、「肥満症」ともいわれています。さらにはその炎症状態は、二次的にさまざまな病気を引き起こすとても恐ろしいもの。そのため、太り過ぎてしまったペットにはダイエットが必要となるのです。
では、猫の肥満が引き起こす病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
病気①
インスリンの不足により、代謝に機能に異常をきたす病気。肥満が原因で糖尿病を発症する猫のほとんどが、「2型(インスリン非依存症)糖尿病」と呼ばれるもので、初期症状としては過食、飲水量が増える、尿量の増加などが見られます。
病気②
肝臓に過剰な脂肪が蓄積することで、肝機能障害を起こす病気。
ほとんどの猫は無症状で、血液検査をしてもなかなか異常値が見つからない場合が多いですが、進行すると肝硬変に移行することもあるため、できるだけ早期の発見が求められます。
病気③
心筋肉の異常によって、心臓の働きが弱くなる病気。肥満の猫は多量に蓄積した脂肪によって心臓に負担がかかり発症してしまいます。通常無症状が多いですが、突然死の恐れもあります。
病気④
肥満状態のペットにはよく見られるもので、猫の腰、膝、肩、ひじに重度の負荷がかかり、関節炎を引き起こします。猫にとってその痛みはとてもつらいもの。関節炎が原因となり、衰弱に苦しむケースもあります。
猫は犬と比べても太りやすく、日本における猫の過体重・肥満は約40%と推定されるともいわれています。ではなぜ猫は太りやすいのでしょうか?
原因①
猫は糖を分解する能力が低く、その機能は犬の半分以下しかありません。そもそも猫は肉食動物であるため、意図的に糖を与えなくてもアミノ酸などを使って自身で糖を合成することができる能力があるのです。しかしペットフードも日々進化し、現代の飼育されている猫が口にするフードは必要な栄養素がバランス良く配合されたもの。それが時として、猫にとってはオーバーカロリーになってしまいます。摂取し過ぎた糖はエネルギーにならずに脂肪として蓄積されるため、この特殊な代謝機能を持つ猫は太りやすいのです。
原因②
毎日のお散歩やドッグランなど、外に出て運動をする機会が多い犬と比べて、猫はなかなか活発な運動がしづらいもの。特に加齢とともに運動量は減っていくため、年老いた猫は若い時と同じ食事量を続けることによりカロリー過多になり、それが脂肪として蓄積されてしまいます。
では、実際ペットの肥満状態はどのように判断するのが良いのでしょうか。その評価方法としてもっともポピュラーなのは、9段階の結果に分けられる「ボディ・コンディション・スコア」(以下、BCS)です。獣医師のもとでも、ダイエットを始める判断基準として利用されているものですが、実際にはどのように測られ、どのような診断基準なのでしょうか。
① 体を横から見て、ウエスト部分にどのくらいくびれがあるかをチェックします。
② 体を上から見て、ウエスト部分にどのくらいくびれがあるかをチェックします。
③ 肋骨をなでて、どのくらい骨が浮き出ているかをチェックします。
④ ウエストの部分を触り、どのくらいくびれがあるかをチェックします。
⑤ 腰の骨を触り、どのくらい浮き出ているかチェックします。
何よりも大切なのは、まず大切な愛猫を太らせないこと。前述のように、肥満は二次的な病気を引き起こすリスクが非常に高いため、これは立派な「予防医学」となります。しかし万一肥満状態になってしまったら、食事の調整や運動によってダイエットを計画しましょう。
食事制限は正しいプランに沿って計画的に行うことが大切です。次の3つのステップを意識して開始しましょう。
STEP1
ダイエットフードへの移行やフード量を減らすにも、どんなフードをどのくらい与えるべきなのか、飼い主ではなかなか判断が難しいもの。まずは獣医師とともに目標体重を算出し、正しい目標値や一日に摂取するべき適正カロリーを把握することからスタートします。
STEP2
ダイエットフードへの移行をはじめます。ただし突然全ての食事を変えるのではなく、緩やかな移行期間を設けるのが大切。急激な変化は猫の内臓にも負担がかかり非常に危険です。
2~3週間ほどかけて、ゆっくりと移行していきましょう。
STEP3
こまめに体重を測定しながら丁寧に経過観察をしていきます。また、その経過を獣医師へ共有しながら、しっかりとプランに沿ったダイエットができているかを都度確認することも大切。望ましい体重減少が見られない場合は、一日の摂取量やフードのタンパク質の配合などを見直す必要があるでしょう。
前述にもあるように、運動不足は猫の太る原因として大きく占めるもの。犬と違って定期的なお散歩や外での活発な運動をしない猫ですが、室内でも運動を心がけ、定期的に体を動かすことが大切です。
まずは5分間ほどの遊びから始めて、次第に長く、毎日15分間くらいの運動が習慣になるのが理想的です。
ぜひ工夫をしながら、愛猫に合った運動方法を探してみてください。
工夫①
猫じゃらしやレーザーポインターなど、さまざまなおもちゃがたくさんあります。
市販のおもちゃでなくても手作りのものや、ただ段ボールの中に入るのが好きな猫もいますね。一緒に楽しみながら選んであげるのが良いでしょう。
工夫②
猫の場合、平らな場所を走り回るというよりも、上下に運動できるかどうかが重要なポイント。キャットタワーや段差のある家具などで、垂直運動を増やすように心がけてみましょう。
工夫③
部屋の中に高さのある場所があれば、そこにフードを置いてみるのも良いでしょう。ダラダラ食べを避け、さらに食事の前後に垂直運動もできる、一石二鳥の工夫です。
ダイエット時には猫に負担のかかる“クラッシュダイエット”にならないように注意しなければいけません。そのためには、やはり長い目で見たゆとりあるプランを立てること。そして自己流は避け、定期的に獣医師との連携を図ることが大切です。
早く結果を出したい!そんな焦りからつい急なダイエットを始めてしまいがちですが、これは絶対にNG。急激にカロリーを減らした猫は自分の脂肪を肝臓に取り込みはじめ、それはどんどんと蓄積され、やがて脂肪肝になってしまいます。
健康のために始めたダイエットによって健康を害してしまってはまったく意味がありませんよね。運動量の少ない猫は、一度太った体重を戻すことも簡単ではないもの。
飼い主は「太った分の日数と同じくらい瘦せるための日数がかかる」というくらいの認識をもって、長い目で見ることが大切です。
体重は計測すれば目に見えるものですが、ダイエット中の体の中は飼い主にはわかりません。必ず獣医師にも“伴走者”になってもらい、正しいダイエットが健康的にできているかをしっかりと見てもらいながら進めましょう。
そうすることによって、適切なダイエットプランの継続や見直しを図ることができます。
また、ダイエットをしているペットのコミュニティに参加するのもおすすめ。
情報交換をしながら進める明るくオープンなダイエットは、飼い主にとっても良い環境になるうえ、ダイエットに成功した猫とコミュニケーションを図ることで、目指すゴール(理想体型)が可視化され、飼い主の意識の向上にもつながります。
猫は犬と比べても太りやすく、肥満はさらなる病気をも引き起こす大変危険な状態であることがわかりました。
ダイエットをするにもそれほど簡単ではありません。とにかく大切なのは、愛猫を“太らせない”こと。
食事や運動など、飼い主自身の生活や飼育環境から見直すことで、より長い愛猫との人生を築いていきましょう。
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監修いただいたのは…
獣医師
小林 元郎先生
成城こばやし動物病院
(https://feegoo-seijo.com)代表
(公社)東京都獣医師会副会長
東京城南地域獣医療推進協会理事
1986年 北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業
1990年~1991年 New York州Animal Medical Centerにて研修
1993年 成城こばやし動物病院 開業