犬の便秘の原因とは?症状から解消方法まで解説
いつもより愛犬のうんちの回数が少ない?最近コロコロうんちが多いかも…。もしかしたらそれは、便秘の症状かもしれません。大切なのは早期発見と適切なケア。ここでは犬の便秘の原因から対処法、NGケアなどをご紹介します。
いつもより愛犬のうんちの回数が少ない?最近コロコロうんちが多いかも…。もしかしたらそれは、便秘の症状かもしれません。大切なのは早期発見と適切なケア。ここでは犬の便秘の原因から対処法、NGケアなどをご紹介します。
目次
こんなケアはNG
Q1.ヨーグルトやオリーブオイルは与えてもよい?
Q2.サプリメントは有効?
Q3.どうやって水を飲ませればよい?
ほとんどの犬には毎日の排泄パターンがあり、その習慣を意識していれば、愛犬の便秘にもいち早く気が付いてあげることができるでしょう。では、そもそもなぜ犬の便秘は起こってしまうのでしょうか。犬が便秘になる原因はさまざまあります。
原因①
人間と同じように、腸内環境をよい状態に保つために欠かせないのが食物繊維。毎日適量摂取することで健康的な便通が期待できますが、食物繊維には不溶性と可溶性があり、不溶性繊維を過剰に摂取すると便が大きくなりすぎたり固くなったりと、排便がしづらくなってしまいます。食物繊維を摂取していても便秘の症状がある場合には、不溶性のものに偏り過ぎていたり、適量の域を超えているかもしれません。獣医師に相談をしながら食事内容を見直しましょう。
また、水分不足も便秘の原因になります。例えば水分の摂取量が減りがちな寒い時期は、フードに水分を含ませるなど、意識的に補給する工夫をすると良いでしょう。
原因②
環境の変化に敏感な犬は、例えばトイレの場所を移動させたことによって気持ちが落ち着かない、などの理由で排便を我慢してしまうことがあります。引っ越し時や一時的にホテルなどへ預けた時には注意深く見てあげましょう。また不衛生なトイレも、犬が排便を我慢してしまう原因となります。人間も汚いトイレはできれば行きたくないものですよね。常にきれいな状態で、愛犬が落ち着ける環境にしてあげましょう。
原因③
運動不足のまま過ごしていると、腸の動きが悪くなり便秘を引き起こします。腸内環境のためにも、散歩やドッグランなどで定期的に運動をする習慣を身に付けましょう。また、散歩の時に排便をする犬の場合、散歩のリズムや回数が変化するとうまく排便のタイミングが取れなくなり便秘になってしまうことがあります。ルーティンが変わった時などは、これまで通りの排便ができているかを気にかけてあげると良いでしょう。
原因④
例えば肛門の周りに炎症や腫瘍がある場合や、被毛や髪の毛、ぬいぐるみの布などの異物を飲み込み、それが腸や肛門に詰まっている場合は、排便時に痛みを伴うためスムーズな排便ができなくなってしまいます。また、老化による筋力の衰えも、いきむ力の低下によって便秘を引き起こします。
原因⑤
何らかの病気が引き金となって便秘になってしまうことがあります。原因となる病気については、後述で詳しく見ていきましょう。
犬の便秘にはさまざまな原因が考えられますが、もしも病気が便秘を引き起こしている場合はできるだけ早く気が付き、その原因となる病気の治療が必要です。
犬の便秘を引き起こす病気としては、次のものがあげられます。
犬の便秘を引き起こす病気
・直腸憩室…直腸の一部が袋状にふくらみポケットのように空洞ができる病気。後述の会陰ヘルニアと併発するケースが多く、排便が困難になるなどの症状が現れます。
・肛門のう炎…マーキングに使う分泌液を出すための「肛門のう」に炎症が起こる病気。痛みやかゆみから、おしりを引きずるようにして歩く、しきりにおしりを舐めるなどのサインがあります。
・腸閉塞…腸がふさがれている、もしくは何らかの異物が腸内で障害物となり、腸が正常な機能を果たせなくなってしまう病気。悪化すると死にも至るケースがあります。
・直腸脱…肛門から直腸が反転して出てしまう病気。
など
会陰(陰部から肛門にかけて)の筋組織にヘルニアが起こる病気。
本来は骨盤内にあるはずの臓器や脂肪が逸脱することで、肛門付近が腫れてしまいます。発症するのはほとんどがオスです。
前立腺が炎症を起こす、腫瘍化するなどがあげられます。この前立腺はオスにしか存在しないものです。
脊髄の炎症や損傷などによって神経伝達に異常が生じると、排便機能が正常に働かなくなります。
体の代謝を活性化するホルモンに異常をきたすと、体のあらゆる機能の働きが鈍くなり、それに伴って腸の蠕動運動も低下するため便秘になります。また、慢性腎臓病は主な症状の一つとして“脱水”が起こる病気です。体が脱水をおこしていると腸内で形成された便からも水分を吸収しようとするため、硬い脱水便が形成され便秘を引き起こしてしまいます。
犬の便秘とは、いったい何日間うんちが出ない状態をいうのでしょうか。犬は一日に平均1~3回の排便をするのが通常ですので、2日間うんちが出続けない状態が続いたとしたら、それは便秘状態といえるでしょう。
動物病院へ行くべきか悩むところかもしれませんが、3日以上出ない場合は獣医師に相談しましょう。ここでは、自宅でもできる対処法をご紹介します。
便秘が続いた時の対処方法
対処方法①
軽度な便秘の場合は、水分を取ることによって便が柔らかくなり、便秘の症状が緩和されることもあります。常にお水が飲みやすい状態にしておく、飼い主から水分補給を促してあげるなどしましょう。水をあまり飲まない場合は、ドッグフードをぬるま湯でふやかしたり、少量の野菜をドッグフードと一緒に与えるなど、食事で工夫をしてみてください。
対処方法②
散歩へ出たり運動をする元気がありそうな場合は、適度に体を動かしてみましょう。運動することによって消化器官の働きが活発になり、便秘が改善される可能性があります。ただし、便秘に加えその他の体調に異変がみられる場合は無理に運動をさせるようなことはせず、病院へ連れていきましょう。
対処方法③
年齢や体の大きさなどの理由から与えているフードが愛犬にフィットせず、うまく消化ができないケースがあります。また、人工的な添加物によって消化不良を引き起こすことも。今一度、日頃与えているフードに表示されている成分表などを確認し、獣医師に相談しながら食事を見直してみましょう。
対処方法④
おへその周りにある「天枢(てんすう)」というツボや、みぞおちとおへその間にある「中かん」というツボが便秘解消に効果的といわれています。愛犬がリラックスできるようコミュニケーションをとりながら寝ころばせ、おへそから時計回りにゆっくりと円を描くようになでていきます。ただし、あきらかに体調が悪そうな時や愛犬が嫌がるときには、マッサージは控えましょう。
いろいろ試してみたけれど、やっぱりなかなかうんちが出ない…。そんなとき、心配だからといって自己流のケアを試してしまうのは大変危険です。NGケアは絶対にせずに、便秘が続くようなら動物病院へ連れていきましょう。
こんなケアはNG
市販の便秘薬や浣腸などがありますが、飼い主の自己判断でこれらを使用するのはとても危険な行為です。薬の投与は必ず獣医師の判断のもとに行ってください。人間用の整腸剤を投与できるケースもありますが、これも自己判断はNG。用量や用法は必ず獣医師に相談してから投与しましょう。
飼い主が綿棒で肛門を刺激するケアは、肛門や肛門の奥を傷つけてしまう可能性があり大変危険です。また、この綿棒ケアを続けることが愛犬の癖になってしまい、綿棒でケアをしないと排便できなくなってしまうことも。そうなると、長い目で見た便秘の改善方法としては逆効果になります。自己流の綿棒ケアは行わないようにしましょう。
前述にもあるように、1日に平均で1~3回の排便をする犬にとっては、2日間うんちが出ない状態は便秘といえるでしょう。さらに3日目も出ない場合は動物病院へ連れていき、獣医師に診てもらうことをおすすめします。
また、うんちが出ていたとしても、普段と比べて水分が少なくてコロコロしている、うんちの出し方がいつもと違う(排便時に震えている、いきんでいる、鳴き声を上げている)などの様子が見られば、早めの受診をしましょう。
うんちが出ないだけでなく他にもこのような症状がみられる場合も、動物病院へ連れていく目安となります。
便秘の症状はとてもつらいものですよね。
うんちを出したくても出せない…そんな苦しみを愛犬が味わう前に、できる限りの予防をしましょう。愛犬の便秘を防ぐためにはどんなことができるでしょうか。
予防方法①
暑い季節だけでなく、冬場もしっかりと水分が取れているかを気にかけるようにしましょう。水は一日に二回ほど取り換えることも大切。常にきれいなおいしい水が飲めるようにしておくと、愛犬もすすんで水分補給がしやすくなります。
予防方法②
便秘対策だけでなく、愛犬の健康維持のためには不可欠な運動。散歩やドッグランなど定期的に体を動かす習慣をつけましょう。
予防方法③
野菜(茹でたキャベツやイモ類など)や食物繊維を多く含んだ市販のドッグフードなどで、日常的に適度な食物繊維を摂取する習慣をつけましょう。
⇒参考記事:愛犬も食べられる春の食材
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/869
予防方法④
トイレはいつもきれいな状態にしておく。引っ越しやトイレの移動などが発生した場合は、寄り添いながら少しずつ慣れさせる。など、ストレスのかからない生活が維持できるようケアしてあげましょう。
予防方法⑤
小さなおもちゃや小物などが床に転がっていませんか?犬にとっては消化しづらい飼い主の食べ物が落ちていたり、ぬいぐるみを強くかきむしって遊んでいる時も要注意です。誤飲や異物の混入は飼い主の注意で防げるもの。十分注意を払って、愛犬のおなかのトラブルを守りましょう。
ヨーグルトは、砂糖不使用のプレーンタイプであれば人間用のものでも与えてOKです。与える量は獣医師に相談するのがベストですが、どんなに多くても大さじ1杯程度の少量にしましょう。
また、オリーブオイルも問題はありませんが、腸内で吸収されてしまうことから与え過ぎには注意です。排便をスムーズにするために与えるのであれば、腸で吸収されない医療用の潤滑油もあるため獣医師に相談しましょう。便が硬くなって排泄しづらいときでも、腸を傷つけることなくスムーズに出す手助けをしてくれます。
日常的に腸内環境を整える、いわゆる“腸活”のためにサプリメントを活用することができます。腸活が習慣になっていれば便秘を引き起こすリスクも減るため、予防としても有効に活用できるでしょう。また、万一便秘になってしまってからでもサプリメントは効果が期待できます。刺激の低い便秘薬「酸化マグネシウム」などもあるので、獣医師に相談してみるとよいでしょう。
水分を取って欲しいけれどなかなか飲んでくれない…そんなときはごはんをウェットフードにしてみましょう。ウェットフードは水分含有量がドライフードに比べ大変高いので、効率よく水分を取ることができます。また、ドライフードに水分を含ませるだけでは食べてくれないときは、その水分をささみや野菜の茹で汁などにしてみると、香りが立ちよく食べてくれるかもしれません。
犬が便秘になる原因はさまざま。おうちのケアで少し様子を見てよい場合もありますが、3日もうんちが出ない状態が続くようなら動物病院へ連れていきましょう。
うんちが出ていない状態を長い間放っておくのは、便秘の悪化のみならず、病気の発見を遅らせてしまうこともあります。元気がない、嘔吐するなど他にも症状がみられる時もすぐに病院へ。自己判断で放置したり、自己流のおうちケアを続けるようなことはせず、獣医師への早めの相談がベストです。
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監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。