【獣医師監修】猫が便秘になった時の症状は?原因や対処法を徹底解説
「3日以上出なくて、猫の下腹部が張ってきた……」。
人の場合、3日ほどの便秘であればそこまで深刻に捉えないことかと思いますが、猫の場合は、その便秘に重大な病気が隠れていることがあります。
病気の早期発見、早期治療のために、便秘の飼い猫を動物病院へつれていく目安、日ごろからできる便秘対策法などについて紹介します。
「3日以上出なくて、猫の下腹部が張ってきた……」。
人の場合、3日ほどの便秘であればそこまで深刻に捉えないことかと思いますが、猫の場合は、その便秘に重大な病気が隠れていることがあります。
病気の早期発見、早期治療のために、便秘の飼い猫を動物病院へつれていく目安、日ごろからできる便秘対策法などについて紹介します。
目次
原因1.脱水
原因2.食物繊維不足
原因3.腸の機能の低下
原因4.トイレが快適じゃない
原因5.腫瘍やポリープ
原因6.神経異常
水分不足を解消!
運動不足を解消!
トイレをいつも清潔に!
自宅でもできるマッサージ
便秘から疑われる病気
動物病院を受診する目安
サプリメントで解決はNG
家庭で浣腸は命にかかわる危険性アリ
【水分不足】ウェットフード
【腸の動きが弱っているなら】食物繊維が豊富なフード
猫の種類や大きさにもよりますが、通常、猫は1日に1~2回排便を行います。毎日出ない時も、1~2日後にツヤのあるうんちをたっぷりしていれば問題ありませんが、3日以上でなければ便秘を疑い、5日以上でないと明らかな異常と考えます。
また、頻度だけでなくうんちの状態も観察するようにしましょう。
健康状態の猫のうんちには充分な水分が含まれているため、ツヤが見られます。対して、便秘の猫の場合は、絞りだしたような細長い便やコロコロとした小さな便などが、どちらも少量しか出ません。この場合、排便後も、腸の中に便が残っており、便秘になっている可能性が高いです。
もともと猫は砂漠に住む動物で、犬などと比べると水を飲む量が少なく、腸の中で便が固くなる傾向があります。そのため、日頃から適度に水分を飲んでいるかどうか飼い猫の様子を観察すると共に、自然と水分を摂取できる環境を整えてあげることが望ましいです。
では飼い猫が便秘であると判断できる状況はどのようなものなのでしょうか?以下、6つのいずれかに当てはまったら、飼い猫は便秘の可能性が高いと言えます。
下腹部にゴロゴロと固い感触があると、そこに硬くなった便がある可能性があります。また、同じく便秘の場合、お腹を触ろうとすると嫌がる猫もいるようです。
猫が便秘になる原因には、以下のようなものがあります。
原因1
もともとあまり水を飲まない動物である猫は水分が不足しがち。しかし、しっかりと水分を含んだツヤのある便をつくるためには、水分が不可欠です。特に冬場は水分摂取量が不足しがちです。
原因2
穀物フリーフードの中には、食物繊維が少なく、便秘になりやすいものもあるので注意しましょう。
原因3
運動不足や加齢により筋力や腸の機能が低下すると、腸の収縮運動が弱まり、うまく便を押し出せなくなることがあります。これにより便が腸に滞留し、便秘になります。
原因4
環境変化に敏感で、キレイ好きである猫は、食事をする場所とトイレの場所が近い、トイレが汚れている、急にトイレ環境が変わった、などをストレスに感じてしまいます。トイレに行くのを嫌がるがあまり排便を我慢し、便秘になってしまうのです。
便意を我慢しつづけることで、便意が起こりにくくなるなどし、便秘が慢性化してしまいます。また、頻繁にトイレの置き場所やトイレ砂などを変えるのも猫は嫌がる傾向があるので注意が必要です。
原因5
腸内に腫瘍やポリープができた影響で、便秘を引き起こすことがあります。また、肛門付近が炎症で荒れている場合も、痛みを恐れて排便を避け、便秘になることがあるようです。
原因6
脊髄の疾患で神経に異常があると排便障害が引き起こされることもあります。
充分な量の水分を摂取させること。飲み水の容器はいつも清潔な状態を保ち、そこに清潔で新鮮な水を用意します。飲む量が少ない場合には、水を飲む容器を複数用意し、いろいろな場所に置いて飲む機会を増やしたり、水分が豊富なフードを与えたりしてみましょう。
ただし、人間が便秘予防に飲む“高マグネシウム”のような硬度が高い水を猫に与えると結石を引き起こす可能性が高くなるので絶対に与えないでください。
日ごろから適度な運動をさせ、筋力、腸の機能が衰えないようにすることが大切です。おもちゃを与える、キャットタワーを用意するなどして、飼い猫が自ら楽しく運動する環境づくりを工夫してみましょう。飼い猫が自ら積極的に動かない場合には、一緒に遊んであげると運動不足解消になります。毎日5~10分ほどでも良いので、意識して運動させるようにしましょう。
また、肥満の猫は、標準体型の猫と比べて便秘のリスクが高くなる傾向があります。体型を保つ意味でも、常日頃の適度な運動は必要です。
今のトイレ環境が、飼い猫にとって快適なものになっているか、今一度見直してみましょう。
猫はストレスや環境変化に敏感なので、「清潔に保とう!」と急にトイレ砂をすべて新しいものに変える…などは逆効果。砂を変えるときは、今まで使用していた砂:新しい砂=5:1の割合にするなど、少しずつ慣らすようにしましょう。
快適に、安心してトイレできる環境を整えることが便秘の予防となります。
自宅でできる5~10分ほどのマッサージ法についても紹介します。
飼い猫の皮膚を傷つけることなどないように、爪を短く切り、先が尖っていないかなど丹念に観察しましょう。
また、飼い主さんの手が冷えていると猫はびっくりしてしまいます。事前にお湯で手を温めるなどすると良いでしょう。
飼い猫がのんびりくつろいでいるときに、優しく頭を撫でるところから始めます。気持ちよさそうな様子なら、前足→背中→しっぽ→後ろ足の順でやさしく撫でていきます。
手を前後に動かしながら、脇腹を優しく揉んでいきます。おなか全体を揉むことで腸を刺激していきます。
このとき強い力で押すのではなく、優しく触れるように心掛けてください。猫が嫌がらない範囲で、あくまでスキンシップの延長として行いましょう。
次に猫を横向きや仰向けして、指先で“の”の字をえがくように、お腹を時計回りに撫ぜていきます。お腹を触られるのを嫌がるようなら無理をせず、後ろ足の付け根あたりを背中側からやさしく揉んであげると良いでしょう。
人間と違い、猫の便秘の原因はどれも甘く見てはいけないものばかり。多くの場合、何かしらの病気が関連しています。
猫の便秘に隠れた病気の一部を紹介します。
肛門の一部が切れて出血したことなどにより引き起こされる痛み。肛門腺が炎症を起こし“肛門腺炎”になった場合にも、排便時に痛みを感じることから、痛みを避け便秘になることがあります。
腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症などの影響で脱水となり、水分不足のため便秘になることもあります。
直腸に腫瘍やポリープができたり、骨盤が骨折したりしたために、便が通過できなくなり便秘になった状態です。
→ひどい便秘が慢性化してしまった場合、大腸が伸びて巨大化する“巨大結腸症”を引き起こしてしまうこともあるので、注意が必要です。
などの症状が見られたら、病気の可能性があります。これらの症状に当てはまらなくとも、3日以上うんちが出ていなければ、動物病院の受診を検討してください。
特に飼い猫が高齢の場合には、大腸癌や腎臓病などの可能性もあります。
動物病院を受診すると、まずはじめに触診やレントゲンなどで便の量や消化器官に異常がないかどうかを検査します。
その結果を元に、便秘の原因となっている病気に対して治療が行われますが、特に原因となる病気がない突発性の便秘の場合には、療養食の指導を受ける他、整腸剤、便を柔らかくする薬などの投薬、浣腸などの処置が行われます。
療養食や投薬、浣腸などを行っても、自力で便を出せなかったときに行う処置のひとつです。獣医師が肛門から直接手をいれて、便を掻き出します。
ただし、腸の壁を傷つけてしまったり、腸が破れたりする危険性のある処置のため、猫が動くことのないように麻酔をかけて行うこともあります。
前述した“巨大結腸症”などを起こしている場合には、手術を検討することもあります。
手術にて、伸びた大腸を切除し、短くする処置を行います。リスクとしては、手術の合併症として、慢性的な下痢になってしまうことがあります。
また、事故による骨折などで、骨盤が狭くなっていたり、歪んでいたりする場合には、便が通るようにするために、骨盤を広げる手術を行うこともあります。
飼い猫の便秘に気づいた場合、安易に市販のサプリメントや便秘薬などで解決しようとするのは避けましょう。病気の早期発見、早期治療が遅れる原因となります。
まずは動物病院で獣医師に相談し、便秘の原因を知るのが、便秘改善の近道です。
また、獣医師に指示を受けた場合を除き、肛門に綿棒を入れる、自力で浣腸するなどの処置も厳禁です。
人間と同じ感覚で安易に行うと、吐糞をしたり、体温が急激に変化したり、腸が破れて死亡したりと、命にかかわる危険があります。赤ちゃん用の浣腸ふくめ、人間用の浣腸は愛猫に重篤な副作用を引き起こすケースがあります。
飼い猫の異変を感じたら、まずは動物病院を受診し、獣医師に相談しましょう。その上で、獣医師の指導のもと自宅での浣腸を行う場合もあります。
獣医師に相談しながら、原因別に以下のようなフードを与えるのが良いとされています。
工夫しても飼い猫がなかなか水を飲まず、水分不足のために便秘を引き起こしている場合には水分量の多いフードやおやつを活用するのがおすすめです。
普段ドライフードを与えているなら、ウェットフードに変えてみたり、ドライフードに鶏のだし汁などをかけてふやかして食べさせたりするのも良いでしょう。
対して、フードにオリーブオイルをかけるなどは避けましょう。一時的に便が柔らかくなるかもしれませんが、脂で便が緩くなっているにすぎません。栄養バランス的な観点からも、肥満の原因となるためおすすめできません。
食物繊維が豊富に含まれたフードに変えてみるのもおすすめです。食物繊維は腸に刺激を与え、消化した食べ物を体外へ排出させる運動を活発化させる作用があります。飲みこんでしまった毛玉も一緒に外へ排泄されやすくなるので、おすすめです。
改善が乏しい場合は獣医師の指導の元、便秘対策用の療養食などを検討しましょう。どちらにせよ指導が必要となりますが、動物病院で処方されるものと、市販で購入できるものがあります。
人間におきかえると「たかが便秘」と軽く考えてしまうかもしれませんが、猫の場合には、その多くに原因となる病気があるので注意が必要です。逆に異変にすぐ気づくことで、病気の早期発見、早期治療ができるので、普段から飼い猫のうんちの状態、頻度の他、下腹部に固いゴリゴリがないかなど、スキンシップを通じて気にかけるようにしてあげてください。
そもそも、もともと野生の動物だった猫は、自分が弱っているときに、本能的にそれを悟らせないようにしようと隠してしまう傾向があります。
だからこそ、一見元気そう、いつもと変わりなさそうという場合にも、3日以上飼い猫がうんちをしない場合には、動物病院の受診を検討してください。
この記事が、愛猫との幸せな日々を、より永く、健やかにつないでいくヒントとなれば幸いです。
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監修いただいたのは…
猫専門病院 Tokyo Cat Specialists 院長
獣医師 山本 宗伸先生
猫専門病院 Tokyo Cat Specialists
(https://tokyocatspecialists.jp/clinic/) 院長。
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道へ。
都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat
Specialistsで研修を積む。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。