【獣医師監修】猫がくしゃみをする原因とは?
考えられる病気や対処方法をご紹介
飼い猫のくしゃみ。
ふとした瞬間の「クシュン!」というくしゃみは、なんとも可愛らしい仕草のひとつですが、もし連続でしていたり、鼻水が止まらない場合は要注意かもしれません。
飼い猫のくしゃみに隠れているかもしれない病気について説明します。
飼い猫のくしゃみ。
ふとした瞬間の「クシュン!」というくしゃみは、なんとも可愛らしい仕草のひとつですが、もし連続でしていたり、鼻水が止まらない場合は要注意かもしれません。
飼い猫のくしゃみに隠れているかもしれない病気について説明します。
目次
病気1.猫風邪(上部気道感染症)
病気2.アレルギー性鼻炎
病気3.副鼻腔炎
病気4.クリプトコッカス症
病気5.ポリープ、腫瘍
病気6.歯周病
猫がくしゃみをする原因は、大きく分けて2つ。
それは「生理現象」か「病気」かです。
鼻で呼吸する猫は、空気中のホコリや花粉などが鼻に入ると、むずがゆくなって、くしゃみをすることがあります。これは、ただの生理現象なので、鼻孔に入った異物が取れればくしゃみも鼻水も止まります。このときの鼻水は、基本的には透明で、さらっとしているものになります。
注意すべきは、くしゃみを連続でしていたり、鼻水が止まらなかったり、鼻詰まりを起こしている場合です。その他、鼻水に粘り気があり色も黄みがかっていたり、鼻血が混ざって赤くなっていたりする場合にも、病気の可能性があります。このような場合には、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
動物病院に連れていったら生理現象ではなく病気が原因だった!そのような場合に、考えられる病気を一部紹介します。
猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス、細菌などへの感染により、くしゃみ、鼻水、涙、咳など、人間の風邪のような症状が見られます。一部の感染症はワクチンを接種することで予防できますが、体力のない子猫や高齢の猫が発病すると重症化して、最悪の場合、命を落としてしまうこともあるので注意が必要です。
また、ひとえに「猫風邪」といっても、感染したウイルスや細菌によって、見られる症状に違いがあります。感染症の種類を知っておきましょう。
猫ヘルペスウイルスによる感染症で、猫ウイルス性鼻気管炎とも言われます。結膜炎や角膜炎など、目にも症状が出ることがあります。
猫カリシウイルスによる感染症で、口の中に口内炎や潰瘍といった症状が出やすいのが特徴です。口内の痛みからよだれが増えたり、口臭が強くなったりすることもあります。この他、稀に肺炎を引き起こすケースもあります。
微生物・クラミジアの感染で、結膜炎を引き起こします。目の充血や腫れの他、粘りのある目ヤニなどの症状が見られます。
感染力が高いことも特徴で、猫同士が接触すると広がってしまうため、特に多頭飼いをしている飼い主さんは注意が必要です。
上記の感染症の中でも、猫ヘルペスウイルス、カリシウイルスは、症状がおさまった後も、体内にウイルスが残ることがあり、その場合普段は無症状でも、強いストレスがかかった際や、他の病気などで体力、免疫が落ちているときに症状が再発することがあります。
普段から、食事の栄養がとれているか、水分摂取量は適正か、何か強いストレスを感じる原因がないかなどに気をつけ、猫の体力、免疫力を高めることが再発予防になります。
花粉やダニ、ハウスダストなどのアレルギーを引き起こす物質が体内に入ることで、鼻の粘膜が炎症を起こした状態です。
症状としては鼻水、鼻づまり、目の腫れやかゆみ、目ヤニなどが見られます。その他、皮膚にかゆみが出るケースもあります。飼い猫のアレルゲンが花粉の場合には、スギやヒノキなど、季節性のアレルギー鼻炎を人間と同じように発症しますが、花粉症は人に比べると一般的ではありません。
人間のようにアレルゲン検査を受けることができますが、解釈には注意が必要なので、かかりつけの獣医師としっかり説明を受けてから、検査するか判断してください。
鼻の奥にある副鼻腔といわれる部位が炎症を起こした状態です。
多くの場合、ウイルス感染などによる慢性的な鼻炎から、副鼻腔炎は引き起こされます。主な症状として、くしゃみや粘度が高く黄みが強い鼻水、膿が混じった鼻水などが見られます。さらに悪化すると鼻血が出る場合もあります。
副鼻腔は複雑なつくりをしており薬が患部に届きづらいため、完治しないことがほとんどです。
カビの一種、クリプトコッカスが引き起こす感染症です。クリプトコッカスは土壌、鳥の糞など、自然に存在する真菌です。
この菌を吸い込むことで、くしゃみや粘度の高い鼻水、鼻血、目ヤニのなどの症状の他、鼻にしこりができたり、目が腫れたりすることがあります。さらに病状が進行すると、意識や視神経、運動神経などに異変が出る神経症状が見られることもあります。
ただし、この病気に健康な成猫がかかることはめったにありません。猫エイズウィルス感染症のような免疫力が下がる病気などによって、体力、免疫力が下がっているときにかかりやすいので、飼い主さんは庭やベランダに落ちた鳥の糞をすぐに片づけるなど注意するようにしましょう。
鼻にポリープや腫瘍ができた場合にも、鼻への刺激でくしゃみ、鼻血などの症状が見られることがあります。腫瘍が大きくなると、顔が変形してしまうこともあります。
鼻にできる腫瘍には悪性のものが多いため、早期発見、そして早期治療が重要です。
ひどい歯周病が鼻炎を引き起こすこともあります。炎症が鼻腔まで達することで、くしゃみが出ます。
生理現象の「くしゃみ」は、鼻孔に入った異物がとれれば、自然と落ち着くので心配しなくて良いでしょう。しかし、もし連続でくしゃみをしていたり、鼻水が止まらなかったりしたら、早めに動物病院の受診を。鼻孔に何かしらの異常がないか検査することで、症状の早期発見、早期治療が始められます。また、くしゃみが出ていなくても、鼻水が大量に出ていたり、鼻血が出ていたりしたときにも、すぐに受診するようにしましょう。
特に、家に迎えたばかりの子猫などがくしゃみをしている場合には、風邪の疑いが濃厚です。自宅の庭に遊びにきた野良猫と網戸越しに対面するだけでも感染することがあるので、注意が必要です。
猫風邪は放置していると悪化してしまうことがあるので、やはり早めに動物病院を受診するようにしましょう。
極力、飼い猫を外に触れさせないことが、ウイルス等の感染症予防になります。 ここでは今日から改善できるチェック項目を紹介します。
部屋への、花粉やハウスダストの滞留を防ぐために、こまめな掃除を心掛けましょう。空気洗浄機などを活用するのもおすすめです。
部屋を清潔に保つことは、ウイルス性の感染予防にも有効です。
特に冬は、空気が乾燥するため、ウイルスが繁殖しやすくなります。寒くなってきたら部屋を清潔に保つだけでなく、加湿器を活用するなどして、部屋の湿度を適度に保つようにも心掛けたいものです。
ブラッシングは、猫の被毛に付着したアレルゲンとなる物質を取り除くのに有効です。飼い主さんとの良いスキンシップにもなります。
飼い猫が水を怖がる場合は、ドライシャンプーなどを上手に活用してみてください。強いストレスになることがないよう、無理のない範囲で、できる限り衛生的な状態を保てるようにしましょう。
猫風邪の原因となる猫ヘルペスウィルスと猫カリシウィルスは、ワクチン接種で予防することが可能です。
また、無症状の場合にでも病気が進行している場合があります。病気の早期発見のためにも、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
飼い猫の異変に気づくには、普段からよく観察しておく必要があります。
食事の量は減ってないか、水を適度に飲んでいるかなどの日々のチェックを心掛け、ブラッシングもしながら、飼い猫とよくコミュニケーションを取りましょう。体力、免疫ともに低下しない飼育環境を整えることも大切です。
ただ、どれだけ気をつけていても、病気になってしまうことはあります。そこで大切なのが早期発見。日頃から動物病院の検診を定期的に受けるなど、たとえ飼い猫が無症状でも、異常に気づく環境を飼い主さん自身がつくることが大事です。
大好きな飼い猫との穏やかで幸せな日々を保つためにも、日々のささやかな予防を欠かさないようにしましょう。
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監修いただいたのは…
猫専門病院 Tokyo Cat Specialists 院長
獣医師 山本 宗伸先生
猫専門病院 Tokyo Cat Specialists
(https://tokyocatspecialists.jp/clinic/) 院長。
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道へ。
都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat
Specialistsで研修を積む。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。