【ドッグトレーナ監修】子犬のしつけポイントを初心者にも分かりやすく解説!「おすわり」「待て」が自在にできる愛犬に!
「我が家に子犬がやってくる!」
子犬を迎え入れるときには、喜びとワクワクでいっぱいになりますよね。
ただ一方で「しつけ」についてもしっかりと考えておかなければいけません。犬のしつけは、自らの身を守るだけではなく、ともに生きる周囲の人とのトラブル防止など、犬と人間が幸せに暮らしていくうえでは欠かせないもの。
ここではさまざまあるしつけの中でも、どんなものをどのタイミングでトレーニングするのがよいのかをご紹介します。
1.子犬へのしつけはいつはじめる?
子犬を迎え入れたとき、しつけはいつからスタートすれば良いの?と悩まれる方もいるのではないでしょうか。
「犬のしつけ」とひとことで言ってもさまざまものがあり、それぞれに適したしつけのタイミングがあります。
例えば「トイレトレーニング」は、迎え入れたらすぐに教えるべきものですし、この時期のスキンシップ、つまり「触られるトレーニング」をすることによって、「人間から触られることは怖いことではない」という安心感を覚えることもとても大切です。
また、生後2ヶ月くらいの犬は「怖かったらお母さんのところに戻る」という本能がすでに備わっているため、飼い主さんが“お母さん犬”の代わりとして子犬の命を守っていくうえで、「おいで」は早い時期にしっかりと教えておきたいものです。
その後、生後3ヶ月くらいから、言葉やハンドシグナルを使ったしつけトレーニングを進める…といったように、これからはじまる愛犬との幸せな暮らしのために不可欠なものをピックアップしながら、順を追ってスタートしていくのが良いでしょう。
2.子犬のしつけを行う前に必要なこと
しつけをするうえで大切なのは、愛犬との信頼関係をしっかりと築いておくことです。 まずはこれらのコミュニケーションを習慣とし、スムーズなしつけの基盤づくりをしておきましょう。
アイコンタクトがとれるようにする
愛犬とのアイコンタクトはしつけの基礎。飼い主さんの目を見ながら心を通わせ合うことができるように、トレーニングをしておきましょう。
アイコンタクトをとるためのトレーニング方法
- ①犬のおやつを手に握る。
- ②匂いをかがせて興味を持たせる。
- ③おやつを持っている手を、飼い主さんの目線と犬の目線の間に持ってく。
- ④名前を呼びながら、飼い主さんと目が合ったタイミングでおやつをあげる。
- ⑤アイコンタクトができたことを褒める。
しっかりと抱っこしてあげる
正しい犬の抱き方をしていない場合、犬の体に負担がかかるだけでなく、不安や警戒心の増長にもつながってしまいます。
子犬を抱く際のポイント
- ・正面からではなく、犬の横側から抱き上げます。
- ・腕の中では、犬の背中と地面ができるだけ平行になるように抱きましょう。こうすることによって、犬の背中や腰への負担がかかりにくくなります。
子犬の時期から人に触れられる経験を持つ
人から体を触られることに慣れていない犬は、触られることに不安や恐怖を感じやすく、攻撃的になりやすくなります。これでは人との信頼関係を築きにくく、しつけもスムーズにできません。
子犬の頃から家族みんなでスキンシップをとるなどしながら、子犬の時期から人に触れられる経験をたくさんさせてあげてください。
3.いちはやくトレーニングしたい子犬のしつけ
呼び戻し(おいで)
「呼び戻し(おいで)」は、飼い主さんが遠くにいる犬を呼んだときに、近くに来させるしつけです。
しつけることのメリット
- ・お散歩やドッグランなどで、飼い主さん自身や他者とのトラブルを回避させることができる。
- ・災害などの有事の際に、確実に飼い主さんの元へ来させることができる。
など
しつけ方法
- ①犬のおやつを手に握り、立ち上がったまま2~3歩距離を置きます。
- ②犬の顔の高さに手を差し出します。
- ③犬がおやつに反応し、飼い主さんの元へ確実に向かって来ているときに「おいで」と声を掛けます。
- ④飼い主さんのところまで到着し、おやつを握っている手に鼻先をつけたら、手を広げて褒めながらおやつをあげましょう。
- ⑤ ①~④を何度か繰り返しながら距離を延ばしていき、「おいで」の声で確実に来るようになったら成功です。
しつけのポイント
- ・犬のしつけには集中が必要です。公園などでトレーニングする機会も多い「呼び戻し」ですが、はじめのうちは人気や交通量の少ない静かな場所を選びましょう。
- ・「おいで」と呼ぶときは厳しい言い方ではなく、明るい声で楽しそうに呼んであげましょう。
おすわり
「おすわり」は、犬がしっかりとおしりを地面につけて座っている姿勢のことをいいます。
しつけることのメリット
- ・すべてのしつけの基礎となるため、その他のしつけもスムーズにトレーニングできる。
- ・信号待ちやドアマナーなど、生活に必要な基本的マナーが身に付く。
しつけ方法
- ① 犬のおやつを手に握り、アイコンタクトを取ります。
- ② その手を犬の頭上よりも少し上にあげると、おやつを見上げた犬は自然に腰を下ろします。
- ③ しっかりとおしりが地面についている状態で、褒めながらおやつをあげます。
- ④ ③までできるようになったら、今度はおしりが地面についた瞬間に「おすわり」と声を掛けます。
- ⑤ ④を何度も繰り返し練習し、犬が立っている時に「おすわり」の声だけで座ることができるようになったら成功です。
しつけのポイント
- ・愛犬のおしりを手で押して座らせるような行為は、恐怖心を覚えてしまい逆効果に。はじめは上手にできなくても、無理に座らせるようなことはせず根気よく進めましょう。
静止(待て)
「静止(待て)」は、飼い主さんの指示と同時に動きを止め、許可が出るまでその場でじっとさせるしつけです。 それは時に長い時間に及ぶかもしれませんし、飼い主さんと の距離がある状況かもしれません。 また、目の前にどんなに刺激的なもの(好物や興味の対象など)があったとしてもそれは同じです。
このように「待て」の一言で、「時間」「距離」「刺激」の全てに対して待つことができるようになるのがゴールと言えます。
しつけることのメリット
- ・お散歩やドッグランなどで、自身や他者とのトラブルを回避させることができる。
- ・交通事故などの危険から身を守ることができる。
- ・犬が口にしてはいけないものを落としてしまったときに、飛びついて食べてしまう(誤飲事故)のを防ぐ。
など
しつけ方法
- ①犬のおやつを手に握った状態でおすわりをさせ、そのまま1~2秒待ちます。
- ②動き出す前(しっかりとおすわりができている間)に、褒めながらおやつをあげます。
- ③①の待つ時間を1秒ずつ延ばし、<おすわり→10秒待つ→おやつ>ができるまで繰り返し練習します。 待てずに動いてしまったらもう一度やり直しですが、このときは確実に待っていられる秒数まで戻り、“成功させる”ことを重視してください。
例えば7秒で動いてしまったら、もう一度目標を3秒まで戻し、次は4秒…と繰り返します。 このように、成功体験を増やしていくことがとても重要なポイントとなります。
- ④③までできるようになったら、おすわりから2秒後に「待て」と声を掛けます。
<おすわり→(2秒後)「待て」→10秒待つ→おやつ>
- ⑤ ④ができるようになったら、1歩ずつ距離を置いていきます。
<おすわり→(2秒後)「待て」→10秒待つ(10秒数えながら1歩下がる)→おやつ>
- ⑥ここまでできるようになったら解除語を覚えましょう。おやつを上げるタイミングで「よし」と声を掛けます。
<おすわり→(2秒後)「待て」→10秒待つ(10秒数えながら1歩下がる)→「よし」と声を掛けながら手を開いておやつ>
- ⑦下がる距離を少しずつ延ばしながら練習し、5歩下がった距離でも待てるようになったら成功です。
しつけのポイント
- ・「待て」の他にも「ステイ」などの言葉がよく使われていますが、いろいろな言葉を使うと犬は混乱してしまいます。しつけに使う言葉は必ず1つに特定し、家族全員で統一させましょう。
- ・秒数を延ばす、距離を延ばす…と根気のいるしつけですが、あせらずにゆっくりと、愛犬のできるペースを見ながら進めていきましょう。
トイレトレーニング
トイレトレーニングは、さまざまある犬のトレーニングの中でも、いち早く身に付けさせたいトレーニングですよね。粗相が重なると飼い主さんの負担も大きなものになるため、子犬を迎え入れたらできるだけ早くトイレを覚えさせましょう。
しつけることのメリット
- ・粗相の後始末やニオイトラブルなど、飼い主さんの負担を軽減させることができる。
- ・外出先や万一の際の避難所などでも、スムーズに排泄ができるようになる。
- ・散歩に出られない雨の日や、思うように散歩ができないシニア期に入ったときにも、問題なく家の中で排泄ができるようになる。
しつけ方法
- ①子犬を迎えたらまずはサークルを用意し、その中にトイレトレーと寝床をセットします。 (犬は”寝床では排泄をしない”という習性を持つため、サークルの中で寝床の認識を持つことができれば、必然的にトイレトレーを“排泄場所”と認識するようになります)
- ②ソワソワと周囲の匂いを嗅ぎ始めたり、ウロウロして落ち着きがなくなったりしたらトイレのサイン。はじめのうちは、飼い主さんがそんな“排泄サイン”をキャッチして、サインが見られたらトイレまで連れて行ってあげましょう。
- ③上手にできたら褒めることを忘れずに。これをくり返していくことでトイレトレーニングが身に付いていきます。
しつけのポイント
- ・犬は、 寝起きや食後、運動のあとに排泄をする傾向にあるため、はじめのうちはそのタイミングでトイレに連れて行ってあげましょう
- ・愛犬の排泄サイクルを記録しておき、そのサイクルに沿ってサポートしてあげると、成功体験が増えていきます。
4.これも覚えさせたい子犬のしつけ ー応用編ー
ハウス
「ハウス」は、犬がケージやクレートなどにスムーズに入り、そこで安心して過ごすことができるようになるためのしつけです。
しつけることのメリット
- ・大きな音が鳴っている、家族以外の人が家の中にいるなど、愛犬の苦手な環境下でも心を落ち着かせることができる。
- ・ペットホテルや災害時の避難所など、慣れない環境下でのストレスを軽減させることができる。
しつけ方法
- ①まずはケージやキャリーなどを家の中に置き、そこに自由に出入りすることができる環境を作りましょう。
- ②おやつをハウスの中に投げ入れながら、ハウスに入る練習を繰り返します。
- ③次に、おやつを投げ入れるタイミングで「ハウス」と声をかけ、食べて振り返ったタイミングでもう一つ奥へ投げ入れます。その後、一度ハウスの外へ出してから同じことを繰り返し、何度かできるようになったら、投げ入れるおやつの回数を増やしていきます。
- ④ ③ができるようになったら、おやつを食べている間に静かに扉を閉め、食べ終わらないタイミングで扉を開けます。
- ⑤ ④を繰り返しハウスにいられる時間が長くなってきたら、飼い主さんはハウスから少し離れた所(目の届く位置)へ移動します。
- ⑥ 扉を閉めた状態で飼い主さんが離れても、犬が落ち着いていられるようになったら成功です。
しつけのポイント
- ・嫌がる愛犬を無理にハウスへ押し込んだり、抱っこしながら入れるのはNG。ハウスは穏やかに過ごすことのできる“安心”で“楽しい”場所であると認識させることが大切です。
- ・扉を閉めるトレーニングでは、愛犬が「あけて」と要求する前に扉を開けるのがポイント。 うまくタイミングを見計らって、ハウスに対しての不安な気持ちをなくしてあげましょう。
ふせ
「ふせ」は、犬が肘とおなかを地面に密着している姿勢のことをいいます。 この姿勢を保ち、かつ犬がリラックスした状態でいられることが、本来の正しい「ふせ」です。
しつけることのメリット
- ・興奮する気持ちを落ち着かせることができる。
- ・何かをしようとしてもまずは体を起こさなければいけないため、突発的な危険行為を防ぐことができる。
しつけ方法
- ①犬のおやつを手に握り、おすわりをさせます。
- ②おすわりをした犬の鼻先に手を近づけ、その手を鼻先からそのまま下へとまっすぐ、床につくまで移動させます。
- ③犬が下を向いたら、床に沿って犬の前方へ手を移動させます。
- ④ 犬が食べ物を追うと同時に、肘とおなかを床につけて“ふせ”の姿勢になったタイミングで、誉めながらおやつを与えます。
- ⑤ ④を繰り返しできるようになったら、“ふせ”の姿勢になるタイミングで「ふせ」と声を掛けます。
- ⑥ ⑤を繰り返し「ふせ」の声だけでできるようになったら成功です。
しつけのポイント
- ・おやつを持った手を動かすときは、ゆっくりと。早く動かしてしまうと、犬が目で追うことができず、スムーズにトレーニングを進めることができません。
- ・“ふせ”の姿勢をしているときには、飼い主さんもリラックスしながら声をかけましょう。褒めてあげたり優しくなでてあげることによって犬の心も穏やかになり、本当の意味での“上手なふせ”ができるようになります。
5.しつけ以外にもやっておきたい「環境整備」
子犬にとって日々の生活は“はじめて”のことだらけ。どうしたら良いのかわからなかったり、やってはいけないことの判断がつかないシーンがたくさんあります。 そんな子犬をアクシデントから守るためには、飼い主さんがしっかりと生活環境の整備をしてあげることが大切です。
部屋はきれいに
犬はあらゆるものを口に入れてしまうため、誤飲事故を未然に防がなければいけません。飼い主さんの小物や、犬が食べてはいけない食べ物などが床に転がらないよう、部屋は常にきれいにしておきましょう。
コンセントやコードにはカバーを
コンセントやコードを直接かじってしまうと、感電してしまう恐れがあります。必ず専用のカバーを付けておきましょう。
ゲートや柵の設置
玄関からの急な飛び出しを防ぐために、ゲートや柵を適切な場所に設置します。 またキッチンも、火や刃物を扱っていたり、犬が食べてはいけない食材が転がっている可能性があるため、ゲートなどが設置してあると安心です。
6.子犬をしつける際のポイント
失敗しても叱らない
トレーニングが上手にできなかったとしても、叱るのはNG。飼い主さんに叱られることで、トレーニングに恐怖心を抱いてしまい、その後のトレーニングもスムーズにいかなくなってしまいます。また、叱ってしまうと飼い主さんとの信頼関係も悪化しかねないため、飼い主さんは常に冷静に、そして気長にトレーニングをしていきましょう。
集中できる環境で
犬のしつけトレーニングには“集中”がとても大切です。周囲に犬の興味が湧くような物事があったり、騒々しかったりする環境では集中できないため、しっかりと集中できる環境・タイミングを選び、トレーニング時間も短時間で済ませるように心がけましょう。
コマンドは統一させる
例えば「待て」と「ステイ」など、指示したい内容が同じものであるにも関わらず違った言葉で伝えてしまうと、犬は混乱してしまいます。
必ず一つのしつけに対するコマンドは同じもので統一させるようにし、家族間でもバラバラにならないよう注意しましょう
7.子犬の「社会化教育」も忘れずに
しつけをスタートさせるまでの間、つまり生後1~3ヶ月の時期も、子犬の成長にとってはとても大切なものになります。この時期は「社会化期」といわれるもので、できるだけ外の環境に触れながら、さまざまな経験をさせてあげることが必要です。
例えば母犬や兄弟犬のいる小犬にとっては、喧嘩をしたり怒られたりすることで覚えることがたくさんありますし、飼い主さんに新しく迎え入れられた子犬にとっても、車や工事などの大きな音、すれ違う飼い主さん以外の人間など、外の環境に慣れることから社会性が身に付いていきます。 これから待っている心身の成長のために、この時期は存分に“体験”からの学びをさせてあげましょう。
8.まとめ
犬のしつけは、犬と人間が幸せに暮らしていくうえで必要なもの。だからこそ、子犬の時期からしっかりと身に付けることが大切です。
どんなしつけも、はじめは上手にできないかもしれませんが、怒ったり焦ったりするのはNG。しつけが身に付いたその先には、穏やかで幸せな生活が待ってるよ!という気持ちで、愛犬と一緒に楽しみながらトレーニングしていきましょう。
監修いただいたのは…
ペットケアサービスLet’s代表/ Japanペットケアマネージャー協会代表
三浦 裕子先生
ペットケアサービスLet’s(http://lets-pet.com)では、犬のデイケアサービスや老犬介護、リハビリテーション、犬のがっこう、問題行動 改善などを行う。
著書に「7歳からのシニア犬とのしあわせな暮らし方」「4歳からはじめる愛犬の健康生活習慣」がある。