【獣医師監修】猫のアイコンタクトに込められた意味は?瞬きの速度に注目しよう
猫の瞬きには、実は何かしらの意味があるのをご存知ですか?
無意識のうちに繰り返す私たち人間の瞬きとは違い、猫は意思表示として瞬きをすることがあります。
そこに込められた意味や、反対に瞬きをしない時の気持ちなど、猫の瞬きについて深く知っていきましょう。
猫の瞬きには、実は何かしらの意味があるのをご存知ですか?
無意識のうちに繰り返す私たち人間の瞬きとは違い、猫は意思表示として瞬きをすることがあります。
そこに込められた意味や、反対に瞬きをしない時の気持ちなど、猫の瞬きについて深く知っていきましょう。
目次
私たち人間も常に繰り返している「瞬き」。瞬きによって涙が分泌され、乾燥から目を守ることができたり、ゴミや老廃物を排出できます。
しかし猫にとっての瞬きは、これ以外にも非常に重要な役割が。
それは、猫が何かを伝えたいときの手段─つまり「アイコンタクト」としての役割です。
猫にとって瞬きは、重要なコミュニケーション手段の1つなのです。
元来、猫は瞬きが少ない動物と言われていて、その回数は1分間におよそ3回。人間と比べるとかなり少ない回数です。
ではなぜ、猫は瞬きが少ないのでしょうか。それは、目頭にある薄い膜(瞬膜)の機能が関係しています。「第三眼瞼(だいさんがんけん)」とも呼ばれるこの膜には、猫がまばたきをするたびに目を覆い、目の表面のごみを取りながら油分をなじませる働きがあります。
この第三眼瞼の機能が涙の蒸発を防ぐため、猫の目は乾燥しづらく、少ない瞬きでも生きていくことができるのです。
猫がゆっくりと瞬きをしているとき、それは相手に対して「信頼しているよ」「好きだよ」という気持ちを伝えています。それは瞬きだけではなく、目を細めているときも同じ。
猫が目を細めると、まるで笑っているかのように見えることがありますが、まさにこのゆっくりした瞬きは、人間でいう「笑顔の挨拶」のようなものです。
また、人間から猫に対する瞬きも同じ意味で受け取ってくれるので、愛猫に対して大好きな気持ちを伝えたいときや、愛猫からの愛情表現に応えたいときには、同じようにゆっくりと瞬きをしてあげると良いでしょう。
猫がゆっくりとした瞬きを繰り返すときは、相手に対してより多くの愛情を感じていて、その気持ちを伝えています。
それほどの愛を瞬きで表現するのは意外にも感じますが、そこには「大好き」という気持ちと同時に「目の前には安心できる相手がいる」という気持ちがあるから。
そんな確かな安心感から、わざわざオーバーなリアクションをする必要がない、というネコの心理が働いているのでしょう。
飼い主さんが猫の名前を呼んだり話しかけたりしたときに、鳴き声はなくとも瞬きをしているのを見たことはありませんか?
その瞬きには「はーい」や「聞いてるよ」といった返答の意味が込められています。
犬のように、名前を呼んだらすぐに飼い主さんの所へ来るようなことはあまりないかもしれませんが、猫もこうしてしっかりと呼びかけに応えてくれているのです。
猫がじっと見つめてくるときは、何かを要求しているサインです。
それはごはんが欲しいとき、遊んでもらいたいとき、甘えたいとき…といろいろなケースがあるでしょう。
さらに、鳴きながら見つめる場合は、その要求が強いとき。わがままや甘えん坊の猫の場合、このように鳴き声をあげながら見つめてくることが少なくないでしょう。
多くの動物は、静かに見つめ合うことで敵意を表し、そのアイコンタクトがケンカのきっかけになることもあります。
それは、猫と目が合ったことをきっかけに、瞬きをせずにじっと見つめ続ける場合も同じ。相手に対して「警戒している」サインになります。
この緊張感の中お互いに見つめ合いを続けていると、場合によっては猫が引っ掻いたり噛みついてきたりすることもあるので、すっと目をそらし「こちらには敵意がないんだよ」ということを示してあげましょう。
また、猫の瞬きに対して瞬きなしで見つめ返すのもNG。せっかくの愛情表現を敵意で返していることになるので、こちらもしっかりと瞬きをしながら、愛情のキャッチボールを楽しみましょう。
猫と目が合った場合の対応は?
ふと猫と目が合ったときは、瞬きなしでじっと見つめるようなことはせずに、ゆっくりと目をそらしましょう。
猫も敵対心がなければ、自ら目をそらしてくるはずです。
一方で、猫が愛情や要求を伝えようと“わざと”見つめてくるときは、しっかりとそのアイコンタクトに応えてあげてください。
瞬きをしているか?何か要求されていることはないか?などその気持ちを汲んであげると、良いコミュニケーションがとれるでしょう。
猫が片目をつぶるしぐさを繰り返したり、片目だけ開けづらそうにしているときは、何らかの目の病気が隠れている可能性があります。
以下のような症状がみられる場合は、動物病院へ連れていきましょう。
ケース1
まぶたの内側にある粘膜で、まぶたと眼球をつなぐ役割を果たしている「結膜」が炎症を起こす病気です。ウイルスの感染や異物の混入、アレルギーなどが原因で発症し、片目をつぶる、瞬きが頻繁になる、涙や目やにが増えるなどの症状がみられます。
ケース2
黒目部分を覆っている角膜が炎症を起こす病気で、猫同士のケンカなどで目に傷を負ったことが引き金となって発症するケースが多くあります。
猫にとっては痛みが強く、片目をつぶったり、しきりに目を気にしている様子などがみられます。
ケース3
眼瞼、いわゆるまぶたに傷がついたり、細菌や寄生虫などが原因となってまぶたが腫れあがってしまう病気です。
まばたきが多くなる、涙が増える、目の回りが脱毛するなどの症状がみられます。
ケース4
構造上の異常から、まぶたが内側に反ってしまう病気です。主に下まぶたに起こりやすく、内側に反ったまぶたが眼球に触れるため、猫にとっては強い痛みを感じる病気。
原因は遺伝や体重の極端な減少などで、まぶたの痙攣や涙・目やにの増加、目をしきりにこするなどの症状が起こります。
元来、人間よりも瞬きの回数が少ない猫ですが、その瞬きは何かの意思表示、つまりアイコンタクトとなっていることが多くあります。
それは、相手への好意や、呼びかけに対する返事などを意味するもの。
また、飼い主さんからの瞬きも、しっかりと愛情として受け取ってくれます。
言葉は発することができない猫でも、こうして目と目を使って大好きな思いを伝えることができるのはうれしいですね。
お互いの瞬きに注目して、愛猫との毎日のアイコンタクトを楽しんでみてください!
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「ウンチ」は“臭い”“汚い”だけじゃない、猫の健康を知るバロメーターなのだ!
監修いただいたのは…
獣医師・博士(獣医学)
増田 宏司先生
<職歴>
・2004~2006東京大学大学院 ポストドクトラルフェロー(学術研究支援員)
・2006~東京農業大学農学部 講師
・2012~東京農業大学農学部 准教授
・2015~東京農業大学農学部 教授
<学歴>
東京大学大学院 農学生命科学研究科
獣医学博士課程修了(2004)
<専門分野>
動物行動学、行動治療学
<著書>
『犬の幸せ♡私の幸せ~ワンコ先生が教える動物行動学~』恒文社(2009)
『このくらいはわかって!ワンコの言い分』さくら舎(2012)
『バイオセラピー学入門 人と生き物の新しい関係をつくる福祉農学』講談社(2012)
『犬語ブック』日本文芸社(2013)
『東日本大震災からの真の農業復興への挑戦』ぎょうせい(2014) など