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【獣医師監修】犬に「おいで」と言っても来ない理由は?呼び戻しの教え方を解説!

【獣医師監修】犬に「おいで」と言っても来ない理由は?呼び戻しの教え方を解説!

「呼び戻し(おいで)」は、飼い主さんが遠くにいる犬を呼んだときに、しっかりと飼い主さんの足元まで来ることができるようにするしつけです。

他のしつけと同様に、生活する中で起こりうるさまざまなトラブルから愛犬を守るためには、しっかりと身に付けておくべきもの。しかし、なぜかトレーニングしたはずの呼び戻しが上手にできなくなってしまうケースがあります。

そこにはどんな理由があるのか、見直すべき点などもあわせてご紹介します。

1.犬の呼び戻しの必要性は?

「おいで」と声をかけても来なくなってしまった、とお悩みの飼い主さんは意外にも多いもの。愛犬と一緒に一生懸命トレーニングをして、一度は上手に身に付いたのに、なぜ?と不安になりますよね。

まずはこの「呼び戻し」の必要性をご説明します。

呼び戻しをしつける必要性

ケース1

事故を防ぐ

お散歩中、ふとした瞬間に愛犬が車道に飛び出してしまいそうになった経験はありませんか。また、何らかの原因で突然リードが外れてしまったり、飼い主さんの手から抜けてしまうといったこともあるかもしれません。
万一そのような状況になったとき、呼び戻しのしつけが身に付いていれば、愛犬を交通事故から守ることができます。

ケース2

脱走・迷子を防ぐ

例えば、リードを外して駆け回るドッグランで、何かの拍子で柵の外側へ出てしまったり、ドッグカフェで過ごしているときにリードが外れてしまい、店の外へ飛び出してしまったり…そんなことがあるかもしれません。
また、玄関で飼い主さんが出入りする際に、スルっと外へ出てしまうケースもあります。

どのケースも、もしそのまま遠くへ行ってしまったら…と考えると、とても不安ですよね。
そんなとき、飼い主さんの「おいで」の声にきちんと戻ることができれば、危険な脱走や迷子を防ぐことができます。

ケース3

他者とのトラブルを防ぐ

ノーリードがOKのドッグランも多いですが、ノーリードだからこそ、基本的なしつけ・マナーが身に付いていることが大前提。

楽しさのあまり他の犬へ過度にちょっかいを出したり、大きな声で吠える、噛みつくなど、万一のトラブルが起こった際、離れて遊んでいる愛犬を呼び戻すことができれば、そのトラブルを最小限にとどめることができます。

2.犬に「おいで」と言っても来ない理由は?

犬に「おいで」と言っても来ない理由は?

ではその「呼び戻し」。一度トレーニングしたはずなのに、なぜ愛犬は「おいで」と呼んでも戻って来ないのでしょうか。

理由1:苦手なことをされた記憶がある

例えば歯磨きや爪切りなど、犬の苦手なお手入れをするたびに「おいで」と呼ぶような習慣になっていませんか?このような日常の繰り返しで「呼ばれて行った先では、苦手なことをされる」と学習され、呼んでも来なくなってしまうケースがあります。

見直しポイント

  • まずは楽しくコミュニケーションを

    「おいで」の声で愛犬が足元へ来たら、すぐにお手入れを始めるのではなく、まずはしっかりと褒めたうえで、おもちゃで遊んだりスキンシップを取るなどしましょう。
    犬にとっての楽しい時間を作り、「呼ばれていった先には、楽しいことが待っている」という認識を持たせることが大切です。

理由2:叱られると思っている

飼い主さんから離れたところで遊んでいるときに「おいで」と呼ばれ、戻ったら怒られてしまった…。そんな経験を愛犬にさせてしまっている可能性はないでしょうか。
戻ってきたときに「そんなに遠くに行ったらダメでしょ」などと常に厳しく����っていると、やはり犬は「呼ばれて戻っても叱られるから怖い」という認識になってしまいます。

見直しポイント

  • しっかり褒めて。褒めるときは、ほどよく、やさしく

    呼び戻しが上手にできたら、まずはきちんと戻ってきたことを褒めてあげましょう。
    そのうえで、注意するべきことを伝えるのが大切です。

理由3:本来のゴールを理解していない

「おいで」と言われたら、呼ばれた方向へ向かう。ということはなんとなく理解していても、どんな状況下でも、しっかりと飼い主さんの足元まで行かなくてはいけない、というところまで理解していないのかもしれません。
「おいで」の声に反応しながらも愛犬が途中で止まってしまったときに、飼い主さんの方から迎えに行ったり、手を伸ばしてご褒美をあげるなどしていないでしょうか。このような飼い主さんの反応によって、本来のゴールがわからなくなってしまっている可能性があります。

見直しポイント

  • 短い距離からもう一度練習を

    「おいで」の声に対して、しっかりと足元まで来ることのできる短めの距離から、もう一度トレーニングをやり直しましょう。短い距離で成功したら徐々に距離を伸ばしていきます。
    やはりここでも、「『おいで』の指示に従えば、良いことが起きる」と認識させることがとても大切なので、このような練習方法によって成功体験を重ねることは非常に効果的です。

3.呼んでも来ないのは他にも理由がある?

呼んでも来ないのは他にも理由がある?

いつもは来るけど、その日だけ来ない場合

遊びに夢中になっている、疲れている、体調が悪い、などの理由が考えられます。
もし他にも体調面での異変が感じられたら、動物病院へ相談しましょう。
また、犬はやきもちを焼いて拗ねたりもする動物なので、飼い主さんが他の犬や子供と接しているのを見ると、呼んでも無視することがあります。

だんだんと来なくなった場合

前述でご紹介した「呼んでも来ない理由」の他にも、飼い主さんの所へ行っても特に褒めてもらえないような経験が重なると、犬はだんだんと指示に従わなくなります。必ず褒めることは忘れずにいましょう。

ただし、ここでの褒め方がポイント。オーバーに褒めたり過度なスキンシップを取ることも、犬にとっては“苦手なことをされた”という記憶になってしまうことがあるので、褒めるときはやさしく、適度なコミュニケーションを心がけましょう。
また、シニア犬の場合は徐々に指示に対する反応が悪くなることもめずらしくありません。

4.呼び戻しの教え方

呼び戻しの教え方

「おいで」と言ってもなかなか来てくれない。
いざというときのために練習しておきたい!
そんなときは、あらためて「呼び戻し」のトレーニングをしましょう。

トレーニング方法

  • ステップ1

    犬のおやつを手に握り、立ち上がったまま2~3歩距離を置きます。

  • ステップ2

    犬の顔の高さに手を差し出します。

  • ステップ3

    犬がおやつに反応し、飼い主さんの元へ確実に向かって来ているときに「おいで」と声を掛けます。

  • ステップ4

    飼い主さんのところまで到着し、おやつを握っている手に鼻先をつけたら、手を広げて褒めながらおやつをあげましょう。

  • ステップ5

    ステップ1~4を何度か繰り返しながら距離を延ばしていき、「おいで」の声だけで確実に来るようになったら成功です。

コツ
  • ・公園やドッグランなどで指示を出すことの多い「呼び戻し」ですが、はじめのうちは、しっかりと集中できる自宅で、短い距離から練習をしましょう。
  • ・「おいで」と呼ぶときは厳しい言い方ではなく、明るい声で楽しそうに呼んであげましょう。飼い主さんの表情が硬いと、犬も警戒してしまいます。

5.まとめ

事故やトラブルから愛犬を守る「呼び戻し」のしつけ。
一度はトレーニングをして身に付いていたとしても、さまざまな経験から指示に従わなくなってしまうことがあります。
「おいで」と呼ばれた先に起こった出来事が、犬にとって“嫌な体験”にならないよう、まずはしっかりと褒めることを忘れずに。

いざというときのために確実に身に付けられるよう、“楽しい体験”として積み重ねていきましょう。

監修いただいたのは…

獣医師・博士(獣医学)
増田 宏司先生

<職歴>
・2004~2006東京大学大学院 ポストドクトラルフェロー(学術研究支援員)
・2006~東京農業大学農学部 講師
・2012~東京農業大学農学部 准教授
・2015~東京農業大学農学部 教授

<学歴>
東京大学大学院 農学生命科学研究科
獣医学博士課程修了(2004)

<専門分野>
動物行動学、行動治療学

獣医師・博士(獣医学) 増田 宏司先生

<著書>
『犬の幸せ♡私の幸せ~ワンコ先生が教える動物行動学~』恒文社(2009)
『このくらいはわかって!ワンコの言い分』さくら舎(2012)
『バイオセラピー学入門 人と生き物の新しい関係をつくる福祉農学』講談社(2012)
『犬語ブック』日本文芸社(2013)
『東日本大震災からの真の農業復興への挑戦』ぎょうせい(2014) など

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