役に立ったらシェア!

【獣医師監修】犬のおすわりの教え方は?しつけ方のコツやできない場合の解決策

【獣医師監修】犬のおすわりの教え方は?しつけ方のコツやできない場合の解決策

愛犬に教えておきたいさまざまなしつけ。
中でも「おすわり」は、基本のしつけとしてしっかりと覚えさせておきたいものです。

でも、いつ、どんな方法でしつけるのが良いのか、悩んでしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。
ここでは「おすわり」を身に付ける必要性から、そのトレーニング方法やコツをご紹介します。

1.犬におすわりを教える理由

犬の「おすわり」とは、犬がしっかりとおしりを地面につけて座っている体勢のことをいいます。この体勢は犬の興奮状態にある気持ちを落ち着かせるため、突発的な犬の問題行動や、重大な事故を未然に防ぐことができるもの。
つまり、犬とその周囲の人がより平穏に暮らしていくためには欠かすことのできない、非常に大切なしつけです。

また、同じようにトレーニングをしておきたいしつけとして「待て」や「伏せ」がありますが、「おすわり」はそれらの“基本体勢”。
おすわりができることによって、他のしつけもスムーズにトレーニングできるようになるため、まずはおすわりをしっかりと身に付けておきたいものです。

2.おすわりを教えるメリットは?

おすわりを教えるメリットは?

メリット1

他者への攻撃を防ぐ

例えば、お散歩中に別の犬と出会ったときや、家族以外の人が近づいてきたときなどに、犬は興奮して飛びついたり、激しく吠えたりしてしまうことがあります。このようなときにおすわりを指示することによって、問題行動を抑えトラブルを回避することができます。

メリット2

交通事故を防ぐ

お散歩中、ふとした瞬間に愛犬が車道に飛び出してしまいそうになった経験はありませんか。また、何らかの原因で突然リードが外れてしまう、といったこともあるかもしれません。そんな緊急時に「おすわり」は、交通事故から愛犬を守るものとなります。

メリット3

生活に必要な基本的マナーが身に付く

信号待ちやドアマナーが必要なシーンなど、その場でじっと待っていなければならない状況は、生活の中で必ず発生するものです。そんな、社会で生きていくうえで不可欠となる基本的マナーを身に付けることで、自らの命を守るだけではなく、他者との共存を円滑なものにします。

メリット4

他のしつけトレーニングの基本が身に付く

前述にもあるように、「待て」や「伏せ」などのしつけは、おすわりの体勢からトレーニングをするため、おすわりができることによって、これらのしつけトレーニングがスムーズになります。

3.おすわりの練習はいつから?

おすわりの練習はいつから?

子犬の時期の練習がベスト

子犬は吸収力が高いため、しつけトレーニングをスタートするのは子犬のうちが適しているといわれています。
しつけの基本となるおすわりは、生後3ヶ月くらいからトレーニングするのが良いでしょう。

ただし、子犬との生活でまず大切なのは、飼い主さんとの信頼関係の構築。
慌てることなく、まずは日々のスキンシップやコミュニケーション、アイコンタクトなどで確かな信頼関係を育み、しっかりとした基盤が作られたうえでトレーニングをスタートしましょう。

⇒参考記事:【ドッグトレーナ監修】子犬のしつけポイントを初心者にも分かりやすく解説!「おすわり」「待て」が自在にできる愛犬に!
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/900

成犬でもトレーニングはできる

おすわりなどのしつけをトレーニングしないまま成犬になったとしても、決してもう身に付かないわけではありません。それまで一緒に暮らしてきた中で、しっかりと信頼関係が築かれていれば大丈夫。
子犬へのしつけと比べると少し時間がかかってしまうかもしれませんが、根気よくトレーニングしていけば、成犬でもおすわりができるようになります。

4.犬のおすわりの教え方

犬のおすわりの教え方

準備

おやつ

「おすわりをするといいことがある」という認識を持たせるために、上手にできたときのご褒美としておやつを用意しましょう。

愛犬の好きなおやつがベストですが、トレーニング中は複数回与えることになるため、カロリーが低いものや、小さめのもの、小さくちぎったものなどがおすすめです。

アイコンタクトはできる?

どのしつけトレーニングでも、アイコンタクトは基本中の基本。
飼い主さんとしっかりと目が合うことで信頼関係が確かなものとなり、指示を聞く態勢を取るべき合図ともなります。

集中できる環境を作る

しつけを教えるときには、犬を集中させることが大切。
テレビがついている、近くで子供が遊んでいる、おもちゃが転がっている…などの環境では集中ができません。しっかりと集中できる環境を作りましょう。

実践

  • ステップ1

    犬のおやつを手に握り、アイコンタクトを取ります。

  • ステップ2

    その手を犬の頭上よりも少し上に上げます。
    おやつを見上げた犬が自然に腰を下ろせばOK。

  • ステップ3

    しっかりとおしりが地面についている状態でおやつをあげます。
    このとき、おやつだけではなく、きちんと褒めてあげることも大切です。
    犬にとっては褒められることも立派なご褒美。「上手にできたね」「いい子だね」など、笑顔で声をかけてあげましょう。

  • ステップ4

    ステップ3までできるようになったら、今度はおしりが地面についた瞬間に「おすわり」と声を掛けます。

  • ステップ5

    ステップ4を何度も繰り返し練習し、犬が立っている時に「おすわり」の声だけで座ることができるようになったら成功です。

5.犬におすわりを教える際の注意点

注意点① 指示語は1つに統一

「おすわり」と同じ意味で「シット」など他の言葉を使うこともできますが、トレーニングをスタートする時点で必ず1つの言葉に決めておき、必ず家族全員で統一させることが大切。

同じ「おすわり」でも、相手によって違う言葉で求められると犬は混乱し、スムーズなトレーニングができなくなってしまいます。

注意点② おしりを押さない

上手におすわりできないからといって、愛犬のおしりを手で押して座らせるような行為はNG。恐怖心を覚えてしまうため、トレーニングが楽しいものではなくなってしまいます。
はじめは上手にできなくても、無理に座らせるようなことはせず根気よく進めましょう。

注意点③ トレーニングは短時間で

犬の集中力は5分~、長くても10分程度と言われてます。
トレーニング=嫌なものという認識にならないためにも、たとえ上手にできない日があっても、10分以内には切り上げるようにしましょう。

6.おすわりがうまくできないときの解決策

おすわりがうまくできないときの解決策

おすわりがなかなか上手にできないときには、このような方法を試してみてください。

おやつを握った手を上に上げても、後ずさりしてしまうときは?

しつこく追いかけたり、おしりを押して無理やり座らせるような行為はNG。
うしろに壁があるところを選べば、後ずさりしても壁に当たって止まることができます。

おやつを握った手に飛びついてしまうときは?

手を上げる位置を高くしてみましょう。
その際は、高く上げた手によって愛犬とのアイコンタクトが遮られないように注意が必要です。

どうしてもうまくいかないときは?

どうしてもトレーニングが上手にできないときは、しつけ教室を利用するのも1つの手です。おすわりを身に付けるだけではなく、なぜ飼い主さんとのトレーニングが成功しないのか、そこにある根本的な原因などの相談にも乗ってくれるので、他のしつけトレーニングにも大いに役立つでしょう。

7.おすわり以外に教えてあげたいしつけ

おすわり以外にも、教えておきたいしつけはさまざまあります。
どのしつけも、愛犬の命はもちろん、問題行動や他者とのトラブルを防ぎ、愛犬の幸せな暮らしを守るもの。一度に全てを教え込むことはできませんが、飼い主さんも楽しみながら、根気よく1つずつトレーニングをしていきましょう。

呼び戻し(おいで)

「呼び戻し(おいで)」は、飼い主さんが遠くにいる犬を呼んだときに、近くに来させるしつけです。
トラブルを回避させる他、災害などの有事の際に、確実に飼い主さんの元へ来させることができるようになります。

静止(待て)

「静止(待て)」は、飼い主さんの指示と同時に動きを止め、許可が出るまでその場でじっとさせるしつけです。
交通事故や、犬が口にしてはいけないものへ飛びついて食べてしまうのを防ぐことができます。

ハウス

「ハウス」は、犬がケージやクレートなどにスムーズに入り、そこで安心して過ごすことができるようになるためのしつけです。
愛犬の苦手な環境下でも心を落ち着かせることができるようになり、お出かけ時や災害時の避難先などでも役に立ちます。

ふせ

「ふせ」は、犬が肘とおなかを地面に密着している体勢のことをいいます。
この体勢を保ち、かつ犬がリラックスした状態でいられることが、本来の正しい「ふせ」。
興奮する気持ちを落ち着かせ、突発的な危険行為を防ぐことができます。

8.まとめ

犬の「おすわり」は、犬とその周囲の人がより平穏に暮らしていくためには欠かすことのできないしつけ。また、「待て」や「伏せ」など、他のしつけの基本となるため、子犬のうちから覚えておきたい非常に大切なものです。

「おすわりするといいことがある!」「トレーニングって楽しいな」
そんな風に感じさせる工夫をしながら、飼い主さんも楽しんでチャレンジしてみてください。

監修いただいたのは…

獣医師・博士(獣医学)
増田 宏司先生

<職歴>
・2004~2006東京大学大学院 ポストドクトラルフェロー(学術研究支援員)
・2006~東京農業大学農学部 講師
・2012~東京農業大学農学部 准教授
・2015~東京農業大学農学部 教授

<学歴>
東京大学大学院 農学生命科学研究科
獣医学博士課程修了(2004)

<専門分野>
動物行動学、行動治療学

獣医師・博士(獣医学) 増田 宏司先生

<著書>
『犬の幸せ♡私の幸せ~ワンコ先生が教える動物行動学~』恒文社(2009)
『このくらいはわかって!ワンコの言い分』さくら舎(2012)
『バイオセラピー学入門 人と生き物の新しい関係をつくる福祉農学』講談社(2012)
『犬語ブック』日本文芸社(2013)
『東日本大震災からの真の農業復興への挑戦』ぎょうせい(2014) など

新着記事

犬と暮らす犬と暮らす

猫と暮らす猫と暮らす