【獣医師監修】ゴールデン・レトリーバーの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!
ゴールデン・レトリーバーは人好きで穏やかな大型犬。一方で、子犬のようなやんちゃさが長く続き、タフで活発な犬種でもあります。日本の住宅事情に反して、大型でも安定した人気を誇り、今やすっかり家庭犬としての座を得ました。
そんなゴールデン・レトリーバーと暮らす際に知っておきたいポイントをご紹介します。
ゴールデン・レトリーバーは人好きで穏やかな大型犬。一方で、子犬のようなやんちゃさが長く続き、タフで活発な犬種でもあります。日本の住宅事情に反して、大型でも安定した人気を誇り、今やすっかり家庭犬としての座を得ました。
そんなゴールデン・レトリーバーと暮らす際に知っておきたいポイントをご紹介します。
目次
ゴールデン・レトリーバーの入手先
ゴールデン・レトリーバーを迎えるときの費用相場は?
一般的に、ゴールデン・レトリーバーは子犬の頃のやんちゃさが成犬を過ぎてもなお続き、落ち着くまで3年程度はかかると言われます。フレンドリーで穏やかな“大人の”ゴールデンに育つまで、飼い主さんにはおおらかさと忍耐も必要です。
もっとも、犬種にはそれぞれ傾向的な気質や特性、行動というものがありますが、この犬種だからこういう性格をしていると断言できるものではありません。
最近、犬の行動特性は遺伝と関連するものの、犬種との関連はわずか9%にすぎないという研究結果が発表されました(※1)。
つまり、犬種から行動特性を予測するのは難しく、個々に違いがあるということ。
行動は気質・性格とも関係します。それを考えるならば、代々受け継がれた穏やかさや活発さ、利発さをもつゴールデンを、よりゴールデンらしく育てられるかは、飼い主さんの接し方や、環境、経験などが大きく関係するということでしょう。
ゴールデン・レトリーバーの歴史は繁殖記録などの調査により、1864年に始まったと言われています。
イギリスの実業家、そして上院議員でもあったトゥィードマウス卿が理想的な鳥猟犬の育成を目的に作出した犬種で、ブラックのウェイビーコーテッド(またはフラットコーテッド)・レトリーバーから生まれたイエローの犬(名前はヌース)が原点となりました。
そのヌースとトゥィード・ウォーター・スパニエルとの交配からスタートし、アイリッシュ・セターやウェイビーコーテッド(またはフラットコーテッド)・レトリーバーなどの血を配することでゴールデン・レトリーバーの基礎がつくられたと伝えられています。
ゴールデン・レトリーバーの体高は51~61cm、体重は24~34kg程度。 原産国のイギリスタイプと、ゴージャス感のあるアメリカタイプがおり、イギリスタイプの犬はやや小柄で、ワーキングドッグらしい渋味のある美しさがあります。
両タイプとも重たいと言うほどではないながら、筋肉質でがっしりとした体形をしており、垂れた耳と柔和な顔つきが親しみやすさを感じさせます。
口はやや幅と深みがあり、獲物であった水鳥を傷つけないよう柔らかく咥えることができる“ソフトマウス”の持ち主であることは特徴の一つです。
そして、フェザリング(飾り毛)のある尾はオッターテイル(カワウソのような尾)と呼ばれ、その尾を水平に上げた姿はまさにゴールデンらしいシルエットを描き出します。被毛はダブルコートで、フラットもしくはややウェイビー。ゴールドまたはクリーム系の毛色となり、イギリスタイプの犬では白っぽいクリームが一般的です。
ゴールデン・レトリーバーを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。
1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。
2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。犬を購入後は、飼い主さんの連絡先などの情報を変更登録する必要があります。
環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「令和4年6月1日から開始するマイクロチップ登録制度に関する飼い主の方向けQ&A」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html
入手先1
ペットショップで販売される犬は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子犬です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子犬の生年月日は確認するようにしましょう。
子犬を選ぶ際には、できれば親犬を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。
入手先2
ブリーダーは特定の犬種にこだわりをもって繁殖しており、その犬種についての知識も豊富です。
子犬の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。
予約をすれば見学も可。親犬を見られる率が高い点はプラスポイントです。 なお、場合によっては子犬が産まれるまで数ヶ月待たなければならないこともあります。
入手先3
行き場のない犬はまだまだ多くおり、そうした犬を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、すでに成犬であることが多く、老犬である場合も珍しくありません。
入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。
犬は子犬から飼わなければならないということはありません。成犬でもしつけ直すことは可能です。何より、辛い思いをした分、人の愛情に飢えている犬も多いもの。時間をかけて気持ちが通じ合う一瞬が訪れた時の嬉しさは代えがたい宝となることでしょう。
ゴールデン・レトリーバーと暮らしたいと思った時、保護犬の里親になる選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。
現在、子犬の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、犬をお迎えください。
その結果、ゴールデン・レトリーバーを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものものまで含みます)。
ゴールデン・レトリーバーを迎える場合の費用の目安
項目 | 費用の目安 |
---|---|
ゴールデン・レトリーバーの子犬の価格 | 27万円~ |
狂犬病予防注射 | 3,000円~5,000円程度 |
注射済票 | 500円程度 |
犬の登録料 | 3,000円 |
混合ワクチン(5種~10種) | 5,000円~1万円程度(※2) |
犬用ベッド | 5,000円~3万円程度 |
サークル・ケージ | 1万円~15万円程度 |
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 | 5,000円~1万7,000円程度 |
トイレ・トイレシート類 | 8,000円~1万5,000円程度 |
ブラシ・コーム・爪切り類 | 6,000円~1万円程度 |
首輪・リード類 | 4,000円~1万円程度 |
おもちゃ類 | 1,000円~3,000円程度 |
合計 | 約5~25万円程度+子犬の価格 |
※価格はあくまでも目安であり、販売者や子犬の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
※狂犬病予防法により、犬を手に入れてから、もしくは生後91日以上たってから30日以内に狂犬病予防注射を受けることが義務付けられています。ただし、病気や高齢など事情があって接種できない場合は、届け出をすることで免除が可能となります。接種場所は自治体による集合注射と動物病院とがあり、費用に若干の違いがあります。
※鑑札と注射済票は犬の身につけることが法的に義務づけられていますが、現在、注射済票に関しては各自治体でいろいろなデザインがあります。
⇒厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/10.html
ゴールデン・レトリーバーに限らず、子犬にとって大事なことの一つが社会化です。
生後3週齢~12週齢にかけての「社会化期」にある子犬は好奇心が旺盛で、いろいろな物事を吸収しながら犬として生きていく上での基礎を築いていきます。
特にこの時期には子犬にとってトラウマにならない範囲で、人や物、音、環境などいろいろなものに慣らすようにしましょう。
その後は警戒心が勝ってきますが、同じく子犬の成長には大事な時期です。引き続き社会化に努めましょう。
ゴールデン・レトリーバーは健康的な犬ですが、やはり気をつけたい病気やケガもあります。
たとえば、運動器疾患はよく見られるので、関節ケアはもちろん、体重管理や環境改善(滑りやすい床は避けるなど)は大切となります。
また、ゴールデン・レトリーバーは腫瘍・癌ができやすい傾向にあり、早期発見早期治療のためには定期的な健康診断も大事となるでしょう。
その他、遺伝性の白内障や進行性網膜萎縮症などの眼疾患、アレルギー性皮膚炎、胃拡張・胃捻転症候群、外耳炎などにも注意が必要です。
子犬~若い犬では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。
股関節に緩みが生じ、歩行に支障が出る運動器疾患。7割が遺伝的要素、3割が環境的要素に関係すると言われ、生後1年未満で発症することが多い。
肘関節を構成する骨の成長に異常が生じ、歩行障害が見られる運動器疾患。生後5ヶ月~10ヶ月頃に発症することが多い。
外耳炎では痒みや痛み、赤み、腫れ、耳だれなどが見られ、慢性化すると耳介が肥厚したり、外耳道が狭くなったりすることがある。耳が垂れた犬種は外耳炎になりやすい。
白内障には、先天性白内障・若年性白内障・老齢性白内障・他の病気やケガに起因する二次性白内障などがある。ゴールデン・レトリーバーでは遺伝的な白内障が懸念される。
そして、成犬~高齢犬では、以下のような病気に注意が必要です。
高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まるのに加え、ゴールデン・レトリーバーは骨肉腫や肥満細胞腫、悪性リンパ腫、組織球肉腫などの腫瘍・癌ができやすい犬種の一つとされる。
若い頃からこれらの病気があり、適切な治療を行わなかった場合、加齢にともない症状が悪化したり、重度の関節炎になったりすることがある。
胃拡張は加齢にともなう胃周辺の靭帯の緩みや、食事直後の運動、多量の飲水などがきっかけとなって起こり、胃が捻じれる胃捻転に進行すると緊急を要する状態となる。
認知症に関連する行動が12歳の犬で53%、13歳で70%、15歳では86%に一つ以上見られたという調査報告もある(※3)。食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛犬の行動にも注意を。
⇒【獣医師監修】犬の外耳炎の症状とは?原因や治療方法を解説
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/879ゴールデン・レトリーバーの平均寿命は10歳~12歳程度と言われます。
参考までに、東京大学の研究チームがペット霊園のデータを使用して行った日本の犬の平均寿命に関する調査(2018年発表)では、ゴールデン・レトリーバーでの平均寿命は13.1歳、死亡時の最高齢は18.0歳でした(※4)。
ゴールデン・レトリーバーは家庭犬としてのみならず、盲導犬や介助犬、災害救助犬など仕事をする犬としても活躍できる犬種です。しかし、最初から優秀な犬であるわけではありません。もって生まれた気質や能力はもちろん、やはり育て方やしつけ、トレーニングが大きく影響し、犬を変えもします。
彼らの天真爛漫なやんちゃぶりと併せ、それを楽しめるような人に向く犬種と言えるでしょう。また、昨今では高齢期に介護生活を送るケースも珍しくありません。
どうぞ大型犬の介護も視野に入れてゴールデン・レトリーバーとの生活をお送りください。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
※犬は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度など個体差があります。
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2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。