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【獣医師監修】犬の皮膚病の症状は?原因や主な病気、予防法を解説

犬の皮膚病の症状は?原因や主な病気、予防法を解説

愛犬がしきりに体を掻いている。最近フケの量が増えてきた…。
もしかしたらそれは、何かしらの皮膚病にかかっているかもしれません。

皮膚病にはどのようなものがあるのか、その症状や原因は?など、犬の皮膚病について詳しくご紹介します。

1.犬が皮膚病になる原因

犬が皮膚病になる原因

原因1

アレルギー

アレルギーとは、ウイルスや細菌等の病原体から体を守る「免疫システム」が、食べ物や花粉などに過剰に反応し、それが身体症状となって表れる状態を言います。

原因2

細菌の感染

皮膚のバリア機能や免疫力が低下すると、もともと皮膚の表面に常在している黄色ブドウ球菌などが、皮膚の内側に侵入し増殖することがあります。そして細菌感染を起こし、皮膚症状となって表れます。この細菌感染による皮膚病として代表的なものが「膿皮症(のうひしょう)」。
皮膚のバリア機能が発達していない子犬にも多く見られます。

原因3

真菌(カビ)の感染

真菌(カビ)も皮膚に常在しているものですが、皮膚のバリア機能や免疫力が低下したときや、アトピー性皮膚炎など皮膚の病気にかかっているときに繁殖して、皮膚病を引き起こします。
「皮膚糸状菌症」や「マラセチア性皮膚炎」が代表的なものです。

原因4

寄生虫の寄生

ノミ、ヒゼンダニ、マダニなどの寄生が、皮膚病の原因となることもあります。
アレルギーの一種である「ノミアレルギー」や、強いかゆみを伴う「疥癬(かいせん)」などが挙げられます。

原因5

内分泌疾患

内分泌疾患とは、膵臓や副腎、卵巣、精巣など、生きていくうえで欠かすことのできない「ホルモン」を生成する内分泌器官が、何らかの原因で不具合を起こしてしまう病気です。
中でも「甲状腺機能低下症」や「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」は、脱毛や皮膚炎症状が出ることがあります。

原因6

ストレス

生活環境の変化や飼い主さんとのコミュニケーション不足などでストレスを感じると、犬は体を舐め続けてしまうことがあります。それによって皮膚が赤くなったりただれてしまい、皮膚病を引き起こすことがあります。

2.犬の皮膚病の症状

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毛が抜ける

皮膚病の症状の1つとして多く見られるのが脱毛です。何らかの疾患、つまり“内的要因”による脱毛は、ごそっときれいに毛が抜けるケースが多く、かゆみやストレスでかきむしってしまう“外的要因”による脱毛は、被毛が切れてまばらに抜けることが多いです。

発疹

ブツブツと赤みをおびているものや、中に水がたまっている水疱、膿がたまっている膿疱など、ケースによってさまざまです。

かさぶたやフケが多くなる

皮膚をかきむしることにより出血してしまったり、水疱や膿疱ができると、やがてそれがかさぶたになることがあります。また、皮膚病にかかっていることによって皮膚のターンオーバーに異常をきたし、フケが増えることもあります。

かゆみ

脚を使って皮膚をかくような仕草以外にも、しきりに皮膚をなめる、かむ、壁や床にこすりつけるといった行為もかゆみを感じているサインです。 犬にとっては我慢できないものでもあるので、かきむしってしまうことによって皮膚症状が悪化することもあります。

3.代表的な犬の皮膚病

代表的な犬の皮膚病

アトピー性皮膚炎

空気中の花粉やカビ、ダニなどの物質が原因となって出るアレルギー反応です。強い皮膚のかゆみが長く続くため、頻繁にかくことによって脱毛してしまうことも。
このアトピー性皮膚炎は遺伝的な要因が関与していて、柴犬、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズー、トイ・プードル、パグなどが発症する可能性の高い犬種と言われています。

食物アレルギー

愛犬が口にする食べ物に含まれる特定の成分を原因としたアレルギー反応で、一般的なアレルゲンとしては、牛肉、乳製品、穀類(小麦、穀物、大豆)、鶏肉、卵が挙げられます。
かゆみに加え、下痢や外耳炎を併発する場合もあります。食物アレルギーの発症に年齢は関係なく、新しいフードだけでなく、長い間食べ続けていたものが原因となるケースもあります。

膿皮症

細菌感染を原因とした皮膚病の1つで、かゆみや発疹、脱毛、黄色味を帯びたフケなどがみられます。背中や腹部に症状が出やすいのが特徴で、細菌が好む高温多湿の時期に症状が悪化する傾向があります。

皮膚糸状菌症

「皮膚糸状菌」という真菌が原因となって起こる皮膚病。
常在菌ではあるものの、免疫力が低下し皮膚のバリア機能が落ちることによって、異常繁殖し感染してしまいます。
皮膚が柔らかい目や口、耳の顔周りなどに発症しやすく、症状としては脱毛や皮膚の赤み、フケなど。人間にも感染する、人獣共通の感染症です。

脂漏症

過剰な皮脂の分泌や、反対に皮脂が極端に減ってしまい、皮膚の角質化が急激に進むことによって起こる皮膚病です。
皮脂が過剰な場合(脂性脂漏症)は体がベタベタし、脱毛やフケの症状が。減ってしまった場合(乾性脂漏症)は皮膚がカサつき、毛ツヤが悪くなります。

マラセチア性皮膚炎

「マラセチア」という真菌の繁殖が原因となって起こる皮膚病です。指間周りに多く発症し、その他にも耳や口周り、あご、内ももなどの皮膚がべたつき、独特なにおいがすることもあります。
マラセチアも常在菌の1つですが、犬の皮脂をエサに生きているため、皮脂が過剰に分泌される脂漏症の犬によく見られます。

ノミアレルギー

寄生されたノミの唾液が原因となって起こるアレルギー反応です。たとえ吸血された所が1ヶ所であっても、かゆみは非常に強いのが特徴。
かゆみから、犬は背中や後ろ足・おなか・しっぽなどをかみ、体表にはノミやノミんのフン(黒い点状のもの)が見られる場合もあります。

疥癬(かいせん)

ヒゼンダニの寄生によって起こる皮膚病で、こちらも強いかゆみを伴います。
かゆみの他にも、厚みのある黄色味を帯びたフケが見られ、他の犬への感染力が非常に強いのも特徴です。

4.犬の皮膚病の治療法

犬の皮膚病の治療は、次のような流れで進められることが多いです。
費用については、検査の種類や回数、保険加入の有無などによって変わるため、確認が必要な場合は診察前に動物病院へ問い合わせましょう。

治療の流れ

  • 1.検査

    まずは獣医師が患部を観察し、皮膚細胞診(必要に応じて生検)、被毛の検査、ウッド灯検査(※)などによって状態を把握します。
    さらに全身状態の把握が必要な場合は、血液検査や画像検査を実施することもあります。

  • 2.洗浄・投薬

    必要な場合は患部の洗浄、外用薬・内服薬などの塗布をしながら、症状の改善を確認していきます。

  • 3.皮膚症状の原因となる全身症状の治療

    全身状態に異常があり皮膚症状が出ている場合はその治療を開始し、コントロールしながら患部をケアしていきます。

※ウッド灯検査…皮膚糸状菌症が疑われるときに行う検査。ウッド灯と呼ばれる紫外線を患部周辺に照射し、緑色の蛍光を発することによって皮膚糸状菌症への感染確認をすることができます。

5.皮膚病になりやすい犬種はあるの?

皮膚病になる可能性はどの犬種にもありますが、とくになりやすいと言われているのは、フレンチブルドッグ、パグ、シーズー、柴犬、ゴールデンレトリバーなどです。
フレンチブルドッグやパグは、顔にシワが多いため汚れがたまりやすく、細菌が繁殖して皮膚病を引き起こすケースが。柴犬やシーズー、ゴールデンレトリバーなどは、アトピー性皮膚炎になりやすい犬種とされています。

また、皮膚のバリア機能が低い子犬や老犬、ノミ・ダニなどの寄生虫対策をしていない犬も要注意です。

6.犬の皮膚病の予防法と対策

犬の皮膚病の予防法と対策

適度な室温・湿度を心がける

室温・湿度が高い環境では皮膚が蒸れ、反対に乾燥によっても皮膚のバリア機能が失われてしまいます。
犬にとって適度な室温・湿度を心掛けましょう。

アレルギー対策

アレルギー対策には、衛生的な飼育環境が大切です。こまめな部屋の掃除や布団、クッションなどの洗濯を心がけましょう。
また、定期的なシャンプーやブラッシングによって、皮膚の健康状態がしっかりと保たれ、バリア機能も高くなります。

寄生虫対策

ノミやダニの寄生虫予防として一番有効なのが、予防薬の投与です。
獣医師に相談しながら、定期的に行いましょう。

栄養バランスを心がける

前述にもあるように、免疫力や皮膚のバリア機能が低下することによって菌などに感染し、それが皮膚病を引き起こしてしまうケースが少なくありません。
毎日のごはんで、皮膚に必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

ストレスの少ない生活を

お留守番が多かったり、生活環境の急激な変化などは犬にとっては大きなストレスです。
退屈な気持ちやストレスから犬が体を舐めすぎてしまわないよう、コミュニケーションを楽しみながら愛犬のストレスを軽減させることも、皮膚病予防の1つです。

7.まとめ

犬の皮膚病にはいろいろなものがあり、細菌・真菌の感染、アレルギー、ノミやダニの寄生など、その原因もさまざま。いずれの皮膚病も脱毛やフケなどの症状に悩まされ、中でもかゆみは、犬にとっては非常につらいものです。

衛生面、食事面などの生活環境を整えることや、寄生虫の定期駆虫など対策をしながら、愛犬を皮膚病から守っていきましょう。

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 獣医師 高柳 かれん先生

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