【専門家監修】猫に「待て」は教えられる?その意味と教える際の注意点を解説!
愛猫に「待て」を教えることってできるのかしら──?
猫の飼い主さんの中には、そんな疑問を抱いたことがある方もいるかもしれません。
犬へのしつけとして代表的な「待て」ですが、猫にも教えることはできるのでしょうか。
また、果たしてその意味は?
ここでは、猫へのしつけ「待て」について解説します。
愛猫に「待て」を教えることってできるのかしら──?
猫の飼い主さんの中には、そんな疑問を抱いたことがある方もいるかもしれません。
犬へのしつけとして代表的な「待て」ですが、猫にも教えることはできるのでしょうか。
また、果たしてその意味は?
ここでは、猫へのしつけ「待て」について解説します。
目次
犬のように期待しない
一貫性を持つ
「待て」といえば、一番には犬に対するしつけをイメージするでしょう。
実際に犬にとっての「待て」は、犬とその周りで暮らす人間が幸せに共生していくうえで、欠かすことのできないしつけの一つで、多くの犬がトレーニングによって習得しています。
では、猫はどうでしょうか?
猫はしつけや芸などをしない動物というイメージが強いですが、決して“教えられない”わけではありません。
ただ着目するべきは、猫に「待て」を教える“意味”です。
一般的にペットのしつけとして教える「待て」とは、「行動を静止して、その時間を保つこと」を意味します。
例えば犬の場合、“衝動的な行動”を防ぐことができるのがこの「待て」。
飼い主さんが未然に気付き「待て」を使って制止させることで、散歩中の交通事故や、ドッグランでの犬同士のけんかなど、トラブルや危険を回避することができます。
また、他にもさまざまなしつけを覚える犬は、「待て」による感情のコントロールが、あらゆるしつけトレーニングのベースになるともいえます。
一方で猫は、室内飼育の大半で散歩や外出の機会はあまりなく、犬のようにいろいろなしつけトレーニングをすることもありません。
またそもそもの習性として、飼い主さんに対する期待感や“従順であろう”とする気持ちも、犬と比べればやや低い動物といえます。
そんな猫に「待て」を教える機会や必要性は、基本的にはあまりないと言えるでしょう。
しかし場合によっては、「待て」の習得が役に立つケースも考えられます。
次にご紹介するケースを参考にしながら、まずは飼い主さんが愛猫の性格や行動特徴をもとに、その必要性を考えてみてください。
ケース1
あなたの愛猫は、いつもどんな様子でごはんを食べますか?
ゆっくりと落ち着いて食事をする猫もいれば、ごはんとわかったとたんに興奮してしまい、グルグルと動き回ったり、飼い主さんに飛びついてくる猫もいるでしょう。
そんな、落ち着いた食事をとることが苦手な猫の場合、飼い主さんは毎回のごはんの準備も一苦労。
このようなケースでは、「待て」のしつけが効果を発揮するかもしれません。
食事の前に一度”待つこと”を覚えることが落ち着いた摂食行動につながり、飼い主さんのスムーズな給餌や、猫の体にも負担がかかる「暴食」の抑止にもつながります。
ケース2
後述でご紹介しますが、猫へ「待て」をしつけるときは、ごはんの時間を使ってトレーニングをします。
猫にとってごはんは、一番”要求”の高いもの。つまり、ごはんを目の前にしたトレーニングによって、愛猫の”素”が見えやすくなると言えます。
「思っていた以上に、上手に我慢ができた!」
「こんなにイライラしてすぐに投げ出してしまうとは…」
など、「待て」のトレーニングをじっくりと観察することによって、飼い主さんにとっては意外な発見や、それまで気が付かなかった愛猫のパーソナリティを知ることができるかもしれません。
そしてそこで得た気づきは、その後の愛猫との向き合い方や接し方に役立つこともあるでしょう。こうして得ることができた愛猫へのより深い理解によって、絆が強くなることも期待ができます。
ケース3
普段は家の中で過ごしている愛猫が、ふとしたきっかけで外へ出てしまいそうになった…そんなヒヤッとした経験はありませんか?
室内飼育の猫が多い昨今ですが、意外にも外への逃走や迷子件数は多いもの。
特に、普段から興奮しがちな猫や、好奇心が旺盛な猫は要注意です。
そんな性格の猫に「待て」をしつけることによって、逃走などの思わぬ事故を防ぐことができるかもしれません。
この場合、まずは基本的な「待て」のトレーニングをしたのちに、扉や玄関など逃走の危険性のある特定の場所一か所ずつで、コマンドを覚えさせる必要があるでしょう。
では、もし猫に「待て」を教える場合、どのようなトレーニング方法が良いのでしょうか。
トレーニングのステップ例をご紹介します。
ステップ1
食事を用意し、猫の動きが落ち着くまでじっくりと待ちます。
ステップ2
何かをきっかけに猫が座ったタイミングで、ごはんを与えます。
ステップ3
次の食事の際にもステップ①から始め、ステップ②では座ってから1秒後(一呼吸おいて)にごはんを与えます。
ステップ4
このステップを毎回の食事で繰り返し、ステップ③では、座ってからごはんを与えるまでの時間を1秒ずつ徐々に延ばしていきます。
ステップ5
【座る→待つ→ごはん】の流れを習得したと判断できたら、ここではじめて「待て」の言葉を覚えさせます。
これまでのステップ②では、座った後には声をかけずにいましたが、ここでは座ったタイミングで「待て」と伝えます。
食事のタイミングに限らず、「待て」の合図だけで
待つことができるようになったらトレーニング成功です。
繰り返しになりますが、猫は元々持ち備えた性格や習性が犬とは異なります。
とても気分屋で飽きっぽい面があるので、決してすぐにしつけを覚えるとは限らないのです。「昨日はトレーニングできたのに、今日はそっぽを向いてしまう」なんてことはよくあることでしょう。
そんなときに怒ったり声を荒げたりするのはNG。飼い主さんは、冷静に対応しなければいけません。
猫にしつけをするということは、それだけ根気の要ることなのだ、という自覚を持つことが大切です。
「待て」の習得までトレーニングを続けるのであれば、必ず一貫性を持って進めるようにしましょう。
例えば、「まぁ今日はやらなくてもいいか」などと日によって態度を変えるようなことがあると、トレーニングがスムーズに進みません。
ここでも、飼い主さんの根気が非常に重要な要素となります。
猫にも「待て」を教えることはできますが、基本的には教える重要性はそこまで高くありません。
ただし、“食事の際に落ち着いていることができない”といった問題を抱えている場合は、「待て」の習得が役に立つこともあります。
また、しつけのトレーニングが愛猫への理解を深めるきっかけになることも。
それまで気が付かなかった愛猫の性格や真の姿を知ることが、共に仲良く暮らしていくうえで役に立つかもしれないですね!
犬注目記事
子犬を迎えたなら知っておきたい「子犬に多い病気、気をつけたい症状」
背骨の骨同士の間にある椎間板が変性・変形することで神経症状を引き起こす「椎間板ヘルニア」を知る
膝の骨がずれて跛行する関節疾患「膝蓋骨脱臼」を知る
脳神経細胞の一時的障害によって発作が起こる「てんかん」を知る
猫注目記事
子猫を迎えたなら知っておきたい「子猫に多い病気、気をつけたい症状」
猫の皮膚病、それ放っておいても大丈夫?
毛布をはむはむ、ちゅぱちゅぱ… 猫の“ウール・サッキング”とは?
「ウンチ」は“臭い”“汚い”だけじゃない、猫の健康を知るバロメーターなのだ!
監修いただいたのは…
東京農業大学 農学部動物科学科 動物行動学研究室 教授
内山 秀彦先生
麻布大学 動物応用科学専攻修了(博士)
ヒトと動物の関係学会 常任理事
主な専門は「ヒトと動物の関係学」。
特にアニマルセラピーによる癒やしのメカニズムや猫と人との関係について研究している。