【獣医師監修】マイクロチップって必要?メリット、デメリット、登録について…飼い主さんが知っておきたいこと
2022年6月1日より販売される犬猫にはマイクロチップの装着が義務となりました。 それによって、飼い主さんにはグッと身近になったマイクロチップ。
- マイクロチップって何?
- 必ず装着しないといけないの?
- メリットは?
- デメリットは?
- 登録の方法は?
飼い主さんが知っておきたいマイクロチップのポイントについてまとめました。
2022年6月1日より販売される犬猫にはマイクロチップの装着が義務となりました。 それによって、飼い主さんにはグッと身近になったマイクロチップ。
飼い主さんが知っておきたいマイクロチップのポイントについてまとめました。
目次
①販売される犬猫にはマイクロチップ装着の義務
②マイクロチップを装着した犬猫を迎えたら、飼い主さんの情報に変更登録する義務
③マイクロチップ未装着の犬猫には、なるべく装着することが推奨される
④マイクロチップの情報登録は指定登録機関へ
⑤マイクロチップの情報に変更があった場合には変更手続きが必要
⑥自治体によってはマイクロチップの登録が鑑札代わりにもなる
⑦「マイクロチップ装着証明書」と「登録証明書」は大事なので保管を
マイクロチップとは、動物の体内に埋め込むごく小さな細いカプセル状の器具で、それぞれのチップに記録されたオリジナルの15桁の数字を専用のリーダーで読み取ることで個体の情報(登録された飼い主さんの名前や住所など)がわかる仕組みです。
その大きさは直径が1.4mm、長さが8.2mm程度(※1, 2)。
日本ではISO(国際標準化機構)規格11784と11785のマイクロチップが用いられていますが、他国で同様のISO規格のもの(15桁)を装着した場合は、そのまま新制度「犬と猫のマイクロチップ情報登録」に登録することが可能です。
しかし、9桁や10桁など規格が異なるマイクロチップが装着されている場合は新登録制度に登録することはできず、改めて規格が合致するマイクロチップを装着し直さなければなりません(※1)。
大切な犬や猫に装着するマイクロチップ。実際どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
実際、海外ではマイクロチップが装着されていたことで行方不明になった犬猫が数年後に戻って来た例が複数あります。
マイクロチップは見た目ではわからないため、リーダーがない状況でも極力早くに犬猫の身元を確認できるよう、マイクロチップと併せて迷子札もつけておくことが推奨されています。
また、環境省のマイクロチップに関するパンフレットによれば、国内において装着後の副作用による障害はほとんど報告がないとしています(※2)。
世界的に見ると、これまで脊髄損傷や腫瘍化などの報告がまったくなかったわけではありませんが(※3, 4, 5)、世界小動物獣医師会(WSAVA)ではごく稀なことで、マイクロチップの有効性は健康リスクを上回ると表明しています(※6)。
安全に動物の個体識別ができるマイクロチップですが、「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正により、このマイクロチップに関する環境が大きく変わりました。
飼い主さんも知識としてぜひ知っておきたい7つのポイントをご紹介します。
2022年6月1日より、ペットショップやブリーダーなどが販売する犬猫にはマイクロチップの装着が必須となりました。
法改正の動きを知り、施行前より販売用の子犬子猫にマイクロチップを装着していた販売者もありましたが、今後は購入する犬猫にはすべからくマイクロチップが装着されていることになります。 したがって、購入費用にはマイクロチップ装着費用が加算されていることがあります。
販売された犬猫、またはすでにマイクロチップを装着した犬猫を譲り受けた場合、そのままでは販売者や元の飼い主さんの情報がマイクロチップに書き込まれていることになります。
その犬猫が迷子になり、マイクロチップのデータを読み取ったとしても、販売者や元の飼い主さんのことしかわからず、新しく飼い主さんとなった方の元へ戻ることは難しくなってしまいます。
マイクロチップは“現在の”飼い主さん・所有者の情報を書き込む必要があるため、マイクロチップを装着した犬猫を迎えた場合には、迎えた日から30日以内に所有者として飼い主さんご自身の情報へと変更登録しなければなりません。(ただし、生後90日以内の子犬子猫の場合は、生後90日を過ぎてから30日以内)
また、マイクロチップ装着済の犬猫を飼っており、その子を誰かに譲渡する場合も、その日までに情報の変更登録をする必要があります。
所有者 | 必要な作業 | 期日 |
---|---|---|
ペットショップ (犬猫を仕入れた場合) |
情報の変更登録 | 犬猫を取得してから30日以内、または販売までに |
ペットショップ (自家繁殖場合) |
装着、登録 | 生後120日以内、または販売までに |
ブリーダー | 装着、登録 | 生後120日以内、または販売までに |
飼い主 | 情報の変更登録 | 犬猫を迎えてから30日以内 (生後90日以内の子犬子猫は、生後90日を過ぎた30日以内) 譲渡の場合は譲渡するまでに |
マイクロチップを装着していない犬猫を飼っている、または譲り受けた場合は、法的に装着が義務とはなっていませんが、なるべく装着することが推奨されています(努力義務)。
このケースでは装着するか、しないか、飼い主さんの判断に任されるわけですが、装着したい場合には動物病院でお願いすることになります。
マイクロチップを装着した場合は、誰が飼い主・所有者であるのか、情報を登録しなければ意味がありません。
これまでその情報を登録できる民間登録機関には以下がありました。
しかし、マイクロチップ環境が変更されるに伴い、公益社団法人 日本獣医師会が国の指定登録機関として情報管理を担当することになりました。(注意:これまで日本獣医師会が民間登録機関として行ってきたAIPOとは別)
これまでは迷子犬のマイクロチップの情報を読み取っても、複数の登録機関に照会せねばならないということもあったはずです。そうした手間も省き、今後は情報の一元化を目指すということでしょう。
では、愛犬愛猫にマイクロチップを入れたとして、 現状ではどこに登録したらいいのか?
すでに民間機関に登録してある場合はどうするのか?
と迷うのではないでしょうか?その答えは…
環境省が管轄し、日本獣医師会が管理する新たなマイクロチップ情報登録制度(犬と猫のマイクロチップ情報登録)に登録することになります。
環境省「動物の愛護及び管理に関する法律に基づく 犬と猫のマイクロチップ情報登録/オンラインでマイクロチップ情報を登録しましょう」
https://reg.mc.env.go.jp/
新登録制度に改めて登録しなおさなければいけないというわけではありません。そのままでも大丈夫です。
ただし、新登録制度に移行登録したいという場合は、日本獣医師会に問い合わせをすることになります。
改正法の施行前には、新登録制度に移行登録を希望する飼い主さんのために手数料無料で手続きができるサイトが用意されていましたが、6月30日で受付終了となっています。
飼い主さんが変わることはもちろん、住所や電話番号が変わった、改姓したというような時には、マイクロチップ情報の変更手続きが必要になります。
狂犬病予防法により、狂犬病予防注射の接種と在住する市区町村への登録が義務付けられており、これを済ませると注射済票と鑑札がもらえることはご存知でしょう。
狂犬病予防法には「特例(ワンストップサービス)」というものがあり、これに参加する市区町村の場合、マイクロチップの新制度「犬と猫のマイクロチップ情報登録」に登録すると、同時に該当する市区町村に必要な情報が通知され、これをもって狂犬病予防法による登録および鑑札発行が済んだと見なされます(生後91日以上の犬に限る)。
ただし、注意したいのは、狂犬病予防法に関連する登録手数料は別途支払う必要があるということ。詳しくは自治体にお問い合わせください。
マイクロチップの装着をした獣医師から発行されるのが「マイクロチップ装着証明書」、飼い主・所有者の情報を登録すると発行されるのが「登録証明書」です。
登録をする際にはマイクロチップ装着証明書が必要となりますし、登録証明書は情報の変更手続きをする際にも必要になります。また、犬猫を譲渡する時にはこれら2つの書類を一緒に付けて引き渡さなければなりませんので、無くさずに大事に保管することをおすすめします。
最後に、飼い主さんたちはマイクロチップをどう考えているのでしょうか?見てみましょう。
株式会社バイオフィリア、弁護士ドットコム株式会社、ペットメディカルサポート会社の各社では飼い主さんたちに向けてマイクロチップに関するアンケート調査を行っています(※7, 8, 9)。
それによると、「マイクロチップの装着または義務化に賛成(どちらかというと賛成を含む)」という人は約8割でした。
一方、「すでにマイクロチップを装着している」飼い主さんは、犬で約6割。
それに対して、「装着しない」という人はおよそ3~6割いました。
装着したくない、または迷っている人の理由としては、やはり「体に異物を入れることへの不安」がほとんどで、特に老犬を飼っている飼い主さんは心配なようです。
2020年4月~2021年3月の一年間で、自治体に引き取られた犬猫のうち所有者不明であったのが5万9,253頭でした(※10)。
悲しいかな家に戻れぬまま殺処分される犬猫もいるという現実、災害時の混乱、愛犬愛猫が行方不明になった時のいたたまれなさなどを考えればマイクロチップは有効性の高い身元確認の方法と言えるでしょう。
一方で、安全性に対する不安がいまひとつ払拭しきれない飼い主さんもいるようですが、獣医師が正しく装着すれば動物の体に負担をかけることはないと言われています。
まだマイクロチップを装着していない犬猫と暮らしている飼い主さんは、愛犬愛猫が万が一行方不明になった時に備え、かかりつけの獣医師と相談の上マイクロチップを装着するかどうか検討してみてください。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
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監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。