【専門家監修】マンチカンの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!
遺伝子変異により誕生した短脚が特徴のマンチカン。
しかし、実際は脚が長いタイプの個体もいます。被毛の長さは2タイプで、毛色も豊富。好奇心が旺盛で活動的、それでいてフレンドリーなマンチカンをご紹介します。
遺伝子変異により誕生した短脚が特徴のマンチカン。
しかし、実際は脚が長いタイプの個体もいます。被毛の長さは2タイプで、毛色も豊富。好奇心が旺盛で活動的、それでいてフレンドリーなマンチカンをご紹介します。
目次
マンチカンの入手先
マンチカンを迎えるときの費用相場は?
原産国:アメリカ/イギリス
犬で言えばダックスフンドやウェルシュ・コーギーのような短脚の猫が生存していることが公に報告されたのはイギリスにおいて1944年のこと。
その後、ロシアやアメリカでも同様の猫が確認されましたが、1983年、アメリカのルイジアナ州にて、Sandra Hockenedel 女史が短脚の放浪猫を発見し、家に連れ帰ったことからマンチカンの新しい歴史がスタートします。
「ブラックベリー」と名付けられたそのメス猫は、後に子猫を産み、その半数近くが短脚だったそうですが、そのうちの「トゥールーズ」という名のオス猫と、母猫ブラックベリーが現代のマンチカンの源流になったと伝えられています。
原産国についてはアメリカ説とイギリス説がありますが、原産国を初報告の地とするのか、繁殖が本格的にスタートした地にするのか、考え方の違いのようです。なお、国際猫協会(The International Cat Association / TICA)のスタンダードには原産国について記載が見られません。
国際猫協会(TICA)はマンチカンの短脚について、「常染色体遺伝子によって引き起こされる」と説明していますが、マンチカンの何よりの特徴は、体の大きさはそのままに脚が短いということ。
しかし、短脚の猫同士の繁殖では奇形や体の障害が出るリスクが高く、それを避けるために短脚同士の繁殖は避けるべきとされ、長脚・中脚タイプの猫と繁殖されるのが一般的です。そのため、マンチカンの中には短脚の他、脚が長いタイプの猫もおり、むしろ短脚タイプは全体の20~30%程度しかいないと言われます。
参考までに、犬では短脚犬種に骨の成長にとって大事な働きをするFGF4(線維芽細胞増殖因子4)という遺伝子の余分なコピーが起こることがわかっています(※1)。
上記のように、マンチカンには短脚と、脚が長めのタイプが存在しますが、短脚の猫は脚が短いだけで、体は中型の猫サイズです。
体重はオスで3kg~4.5kg、メスは2.3kg~3kg程度と言われますが、脚が長い猫ではやや体重が重くなる傾向にあります。
被毛はショートヘアとロングヘアがあり、ロングヘアは長毛と言うよりセミロングほどの長さで、シルキーな手触りが感じられます。
毛色に関しては、発展するにあたりいろいろな猫種と交配されたことから、単色(レッド、ブラウン、クリーム、ブルーなど)や縞模様となるもの(タビー)、複数色の組み合わせ(キャリコ、バイカラー)など多彩であることもマンチカンの魅力の一つです。
マンチカンは遊び好きで好奇心が旺盛、活動的な猫です。
短脚の猫の場合、長脚の猫にジャンプ力は負けるとしても、劣らぬ運動力と素早さで駆け回り、短脚であることを何も気にしていないようにさえ見えます。
子どもや他の動物にもフレンドリーに接することができると言われ、家庭で飼育するにはほど良い気質の持ち主ということでしょう。
マンチカンを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。
1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者はNGと言わざるを得ません。
2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。猫を購入後は、飼い主さんの連絡先などの情報を変更登録する必要があります。
環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「令和4年6月1日から開始するマイクロチップ登録制度に関する飼い主の方向けQ&A」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html
入手先1
ペットショップで販売される猫は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子猫です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子猫の生年月日は確認するようにしましょう。
子猫を選ぶ際には、できれば親猫を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。
入手先2
ブリーダーは特定の猫種にこだわりをもって繁殖しており、その猫種についての知識も豊富です。
子猫の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。
予約をすれば見学も可。親猫や、子猫が育った環境を見られる点はプラスポイントです。
入手先3
行き場のない猫はまだまだ多くおり、そうした猫を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、子猫の他、成猫も多くいます。
入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。
現在、子犬子猫の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、猫をお迎えください。
その結果、マンチカンを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものものまで含みます)。
マンチカンを迎える場合の費用の目安
項目 | 費用の目安 |
---|---|
マンチカンの子猫の価格 | 短脚:15万円~ 長脚:10万円~ |
混合ワクチン(Felv含む) | 3,000円~1万円程度(※2) |
猫用ベッド | 1,000円~5,000円程度 |
サークル・ケージ | 5,000円~1万5,000円程度 |
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 | 3,000円~8,000円程度 |
トイレ・トイレシート類 | 3,000円~7,000円程度 |
ブラシ・コーム・爪切り類 | 3,000円~6,000円程度 |
おもちゃ類 | 1,000円~2,000円程度 |
キャットタワー | 5,000円~2万円程度 |
合計 | 約2万5,000円~7万円程度+ 子猫の価格 |
※価格はあくまでも目安であり、販売者や子猫の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
マンチカンの皮膚・被毛の健康を保ち、毛玉を防ぐには、少なくとも週に1~2回程度のブラッシングが必要です。爪や耳などのお手入れももちろんですが、こういったグルーミングを嫌がらないよう、子猫のうちから少しずつ慣らしていくといいでしょう。
また、マンチカンは活発で好奇心旺盛な猫なので、玄関やベランダなどの隙間から勝手に外へ出ないよう、脱走防止もお忘れなく。
興味深いことに、タフツ大学(アメリカ/マサチューセッツ州)の「Tufts Now」によると、マンチカンには宝飾品やキラキラ光るものを集めて隠すような個体がいるといいます。
犬にも“収集癖”のある個体がいますが、ドーベルマン・ピンシャーでの研究では、収集や常同行動をしやすい犬は、「感情的、認知的、感覚的、運動的機能を支配する特定の脳領域の灰白質の密度が有意に低いこと、また、脳の両側をつなぐ領域にも大きな違いがあることが明らかになった」としています(※3)。
マンチカンではどうなのかはわかりませんが、このような癖のある猫では誤飲の危険もありますし、取られて困るようなものは猫の近くに置かないほうがいいかもしれませんね。
マンチカンは健康的な猫種ですが、やはり気をつけたい病気やケガもあります。
たとえば、尿石症や腎臓病、椎間板ヘルニア、歯のトラブル、毛球症、脱走による事故など。
歯周病は歯だけの問題ではなく、進行すると歯周病菌の毒素が血流に乗って全身に回り、心臓疾患や腎臓疾患など他の病気に悪影響を与えてしまうことがあるので軽く考えることはできません。可能な限り、日々のお手入れのついでに歯や口の中のチェックもするようにしましょう。
子猫~若い猫では、以下のような病気・ケガには気をつけましょう。
特に若い猫では好奇心からちょっとした隙間から外に出てしまうこともある。
毛づくろいの際に飲み込んでしまった毛が吐き出しも排泄もできない場合、最悪、腸閉塞を起こし、手術が必要になることがある。
そして、成猫~高齢猫では、以下のような病気に注意が必要です。
成分により、いくつか種類がある結石の中で、猫ではシュウ酸カルシウム結晶とストルバイト結晶が多いと言われる。
脊椎同士の間にある椎間板が変性を起こし、背中の痛みや後肢のふらつきなどの症状が出る。ハンセン1型とハンセン2型があり、重度では後肢の麻痺や排泄困難に陥り、手術が必要になることもある。
飲水量不足、食事内容などが関係すると考えられるものの、はっきりとした原因は不明。腎臓機能が低下することにより、食欲低下、嘔吐、下痢、多飲多尿、口臭などの症状が見られる。高齢になるほど発症リスクが高い。
コーネル大学の猫保健センターによると、中年期~10歳以上の猫のほとんどが関節炎をもっているという研究結果もあるそうなので(※4)、特に短脚のマンチカンでは留意が必要。
高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。皮膚腫瘍の場合、猫では半数以上が悪性と言われる。
食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛猫の行動にも注意を。
⇒【獣医師監修】猫の慢性腎臓病とは?なったらどうする?原因や治療法、予防はある?
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/889⇒【獣医師監修】ネコに認知症はある?疑われる行動や飼い主の対応方法を解説
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/905国際猫協会(The International Cat Association / TICA)によると、マンチカンの寿命は15~18歳以上としています(※5)。
しかし、他の一般的な資料では、12歳~15歳、10歳~13歳などもっと短い寿命となっています。
一方、一般社団法人ペットフード協会の「令和3年全国犬猫飼育実態調査」では、日本の猫の平均寿命は15.66歳(※6)。
これを見る限りでは、平均的な寿命まで生きられるかもしれない猫種といったところでしょうか。
マンチカンの猫種名は、ミュージカルや映画でも知られる「オズの魔法使い」(ライマン・フランク・ボーム原作)に登場するマンチキン国の小柄な住人、マンチキン族に由来するといいます。(両者ともMunchkinと英語の綴りは同じですが、小説の和訳ではマンチキンとされることが多いため、ここでは同様に表記)
国際猫協会(TICA)がマンチカンを新品種開発プログラムに導入したのは1994年(※5)。猫種団体によっては公認していないところもありますが、巷ではそれなりに愛好家の多いマンチカン。
中には、短脚である珍しさからマンチカンを望む人もいるかもしれませんが、脚の長さがどうあろうと同じ猫です。一つの命として変わらぬ愛情を込めて、健やかで楽しい猫ライフが送れますようにと願います。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
※猫は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度など個体差があります。
犬注目記事
いつか来るシニア期のために知っておきたい【老犬でよく見られる病気】
子犬を迎えたなら知っておきたい「子犬に多い病気、気をつけたい症状」
背骨の骨同士の間にある椎間板が変性・変形することで神経症状を引き起こす「椎間板ヘルニア」を知る
膝の骨がずれて跛行する関節疾患「膝蓋骨脱臼」を知る
猫注目記事
いつか来るシニア期のために知っておきたい【老猫でよく見られる病気】
子猫を迎えたなら知っておきたい「子猫に多い病気、気をつけたい症状」
猫の皮膚病、それ放っておいても大丈夫?
毛布をはむはむ、ちゅぱちゅぱ… 猫の“ウール・サッキング”とは?
監修いただいたのは…
東京農業大学 農学部動物科学科 動物行動学研究室 教授
内山 秀彦先生
麻布大学 動物応用科学専攻修了(博士)
ヒトと動物の関係学会 常任理事
主な専門は「ヒトと動物の関係学」。 特にアニマルセラピーによる癒やしのメカニズムや猫と人との関係について研究している。