【専門家監修】サイベリアンの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!
何世紀もの歴史があるとされるサイベリアンは、ロシア出身の自然繁殖猫種です。遊び好きで穏やかな気質と、全体的に丸みのある体つき、それでいて運動能力は高いのが特徴。そんなサイベリアンを迎えるために、知っておきたい基本情報をお伝えします。
何世紀もの歴史があるとされるサイベリアンは、ロシア出身の自然繁殖猫種です。遊び好きで穏やかな気質と、全体的に丸みのある体つき、それでいて運動能力は高いのが特徴。そんなサイベリアンを迎えるために、知っておきたい基本情報をお伝えします。
目次
サイベリアンの入手先
サイベリアンを迎えるときの費用相場は?
原産国:ロシア
サイベリアン(英語読み)という名はロシアのシベリア地域に由来しており、冬の自然環境厳しいかの地で自然発生的に誕生したのがこの猫種であると言われています。
そのため、サイベリアン・フォレスト・キャットと呼ばれることもあります。
西暦1000年にはサイベリアンに関する記録が残されているという話ですが、その後もいくつか書物や写真などにその足跡を残してはいるものの、ロシアで本格的にサイベリアンの記録を手掛けるようになったのは1980年代になってからのこと。
世界に知られるようになるまでは時間を要しましたが、その実、シベリアでは1000年以上前から逞しく生き続けてきた猫種です。
サイベリアンの特徴として、以下の段落の容姿や気質を挙げることもできますが、その他、他の猫種の毛と比べると低アレルギー性の猫だと考えられていることも特徴の一つでしょう。
私たちの中には動物アレルギーをもつ人が多くいます。犬や猫と暮らしたいと思ってみても、このようなアレルギーをもつ人には辛いことでしょう。
そうした中、猫アレルギーでは、猫の体から産生されるFel d 1~Fel d 8というタンパク質がアレルゲンになるそうですが、多くの場合、Fel d 1が問題になるといいます。
ところが、サイベリアンではFel d 1のレベルが平均より低いため、猫の中でもアレルギーを起こしにくいのではないかと考えられているのです。
サイベリアンは大型の猫で、体重はオスが7.5~12kg、メスはそれより少し軽いとされています。骨太でがっしりしており、全体的に丸みがある体形をしていますが、強靭な筋肉の持ち主でもあり、ジャンプ力には定評があります。
また、一般的な猫とは違って被毛が三層のトリプルコートであることも特徴的です。ダブルコートの猫ではオーバーコートの下に保温性を高めるアンダーコートがありますが、サイベリアンではアンダーコートのさらに下に短い毛が生えており、亜寒帯地域の厳しい寒さに適応するためと考えられています。
毛色にはブラック、ブラウン、レッド、クリーム、ブルー、シルバー、ホワイトなどがあり、毛色パターンもタビー(縞模様)、キャリコ(三毛)、バイカラー(2色の組み合わせ)など、同じに猫種に見えないほど様々な毛色と毛色パターンが存在します。
サイベリアンは活発で遊び好きな猫である一方、穏やかで、人と一緒にいることやコミュニケーションを楽しめる猫なので、ともに暮らすには十分な気質を備えています。
子どもや犬にも対応できる猫種で、初めて猫を飼う人にも向くと言えるでしょう。
知能も高く、飼い主さんが隠したものを見つける術を編み出したりすることもあるので、いたずらされたくないものはしっかりしまったほうがよさそうです。
サイベリアンを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。
1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者はNGと言わざるを得ません。
2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。猫を購入後(マイクロチップを装着済の猫を譲り受けた場合も同じ)は、飼い主さん自身の情報へと変更登録する必要があります。
環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「犬と猫のマイクロチップ情報登録について 」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html
入手先1
ペットショップで販売される猫は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子猫です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子猫の生年月日は確認するようにしましょう。
子猫を選ぶ際には、できれば親猫を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。
入手先2
真摯なブリーダーは特定の猫種にこだわりをもって繁殖しており、その猫種についての知識も豊富です。
子猫の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないことがあるので、直接問い合わせる必要があります。
予約をすれば見学も可。親猫や、子猫が育った環境を見られる点はプラスポイントです。
入手先3
行き場のない猫はまだまだ多くおり、そうした猫を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、子猫とは限らず、成猫や老猫もいます。
入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。
現在、子犬子猫の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、猫をお迎えください。
その結果、サイベリアンを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものまで含みます)。
サイベリアンを迎える場合の費用の目安
項目 | 費用の目安 |
---|---|
サイベリアンの子猫の価格 | 12万円~ |
混合ワクチン(Felv含む) | 3,000円~1万円程度 |
猫用ベッド | 1,000円~5,000円程度 |
サークル・ケージ | 5,000円~1万5,000円程度 |
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 | 3,000円~8,000円程度 |
トイレ・トイレシート類 | 3,000円~7,000円程度 |
ブラシ・コーム・爪切り類 | 3,000円~6,000円程度 |
おもちゃ類 | 1,000円~2,000円程度 |
キャットタワー | 5,000円~2万円程度 |
合計 | 約2万5,000円~7万円程度+子猫の価格 |
※価格はあくまでも目安であり、販売者や子猫の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
サイベリアンはセミロングの分厚いトリプルコートをまとっており、換毛期には抜け毛が多くなります。その時期に限らず、毛のもつれや毛玉を防ぎ、皮膚の健康を保つためにも週1~2回程度はブラッシングをしたいものです。
もちろん、耳や歯、爪などのグルーミングは必要になるので、子猫のうちから少しずつ慣らしておくことをおすすめします。
また、サイベリアンはジャンプに秀でており、身体能力も高いので、ちょっとした隙間から脱走したりしないよう、脱走防止対策も忘れませんように。
なお、サイベリアンは成長しきるまでが他の猫種より長く、5年ほどかかると言われており、成長を急がず、ゆっくり見守るくらいの余裕も必要でしょう。
サイベリアンは健康的な猫種ですが、やはり気をつけたい病気やケガもあります。
たとえば、心臓疾患や腎臓疾患、尿石症、歯のトラブル、毛球症、脱走による事故など。
歯周病は歯だけの問題ではなく、進行すると歯周病菌の毒素が血流に乗って全身に回り、心臓疾患や腎臓疾患など他の病気に悪影響を与えてしまうことがあるので軽く考えることはできません。可能な限り歯磨きをするとともに、日々のお手入れのついでに歯や口の中のチェックもするようにしましょう。
子猫~若い猫では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。
特に若い猫では好奇心からちょっとした隙間から外に出てしまうこともある。また、誤飲にも注意を。
毛づくろいの際に飲み込んでしまった毛が吐き出しも排泄もできない場合、最悪、腸閉塞を起こし、手術が必要になることがある。
酵素の一種であるピルビン酸キナーゼの不足により、赤血球が破壊されることで貧血が起こる。生後2~3ヶ月頃での発症が多い。
そして、成猫~高齢猫では、以下のような病気に注意が必要です。
成分により、いくつか種類がある結石の中で、猫ではシュウ酸カルシウム結晶とストルバイト結晶が多いと言われる。
心臓の左心室の伸筋が肥厚することで心不全を起こす心臓疾患。
ウイルス感染や免疫疾患による腎炎、尿路閉塞、外傷、中毒などによって腎臓の機能が低下する腎臓疾患。老齢の猫での発症が多く、死亡率が高い。
コーネル大学の猫保健センターによると、中年期~10歳以上の猫のほとんどが関節炎をもっているという研究結果もある。
高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。皮膚腫瘍の場合、猫では半数以上が悪性と言われる。
食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛猫の行動にも注意を。
⇒【獣医師監修】ネコに認知症はある?疑われる行動や飼い主の対応方法を解説
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/905サイベリアンの平均的な寿命は、国際猫協会(TICA)によると11歳~18歳程度。
一方、一般社団法人ペットフード協会の「令和3年全国犬猫飼育実態調査」では、日本の猫の平均寿命は15.66歳となっています。これを見る限りでは、平均的な寿命をもつ猫種と言えるでしょう。
第二次世界大戦当時、ロシアのエルミタージュ美術館では、戦禍の中、増え過ぎたネズミから大切な美術品を守るために5,000匹のサイベリアン(他の猫種もいたのかは不明)を“動員”し、今でも末裔の猫たちが美術館に棲みついているといいます。
また、その猫たちの収集地の一つであったチュメニには、ネズミ退治で活躍したサイベリアンに因んだ小さな公園や銅像もあるのだとか。この史実も相まって、ロシアの人々にとってサイベリアンは身近な猫となったのでしょう。
現在、不安渦巻く世界情勢の中、人間の都合は動物たちには関係ありません。国を隔てた地で生きるサイベリアンたちに、どうぞ良い出会いがありますようにと願います。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
※猫は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度などには個体差があります。
犬注目記事
子犬を迎えたなら知っておきたい「子犬に多い病気、気をつけたい症状」
背骨の骨同士の間にある椎間板が変性・変形することで神経症状を引き起こす「椎間板ヘルニア」を知る
膝の骨がずれて跛行する関節疾患「膝蓋骨脱臼」を知る
脳神経細胞の一時的障害によって発作が起こる「てんかん」を知る
猫注目記事
子猫を迎えたなら知っておきたい「子猫に多い病気、気をつけたい症状」
猫の皮膚病、それ放っておいても大丈夫?
毛布をはむはむ、ちゅぱちゅぱ… 猫の“ウール・サッキング”とは?
「ウンチ」は“臭い”“汚い”だけじゃない、猫の健康を知るバロメーターなのだ!
監修いただいたのは…
東京農業大学 農学部動物科学科 動物行動学研究室 教授
内山 秀彦先生
麻布大学 動物応用科学専攻修了(博士)
ヒトと動物の関係学会 常任理事
主な専門は「ヒトと動物の関係学」。
特にアニマルセラピーによる癒やしのメカニズムや猫と人との関係について研究している。