最近、私達の生活習慣病に関する健康診断等では「メタボリック・シンドロームに気をつけましょう」という話をよく聞くようになりました。メタボリック・シンドロームとは内臓脂肪型肥満により様々な病気を引き起こしやすくなった状態をいいます。それでは、あなたの大切な犬や猫たちはどうでしょう。現在、動物病院に来院する犬や猫の約40%は過体重か肥満といわれています。
犬や猫にも人間と同様に肥満の基準があればいいのですが、犬の場合、色々な犬種があり、一律に基準をもうけることは難しいようです。人間と同様、肥満はいろんな病気をもたらす原因になりますので、肥満の兆候がみられたら早めに是正しなければなりません。特に犬や猫が高齢の場合、肥満を治すことは難しく、高齢の病気は肥満がもたらしたり、治すのにも障害になったりします。
犬や猫の一生は、成犬・成猫になるまでの成長期、それからの維持期、妊娠授乳期、高齢期と分けることができ、これをライフステージといいます。また散歩や運動など活動量にも違いがありますし、飼育環境も異なりますが、どのような生活をしているのかをライフスタイルといいます。ライフステージ、ライフスタイルを考えて、食事の量や内容を決めなければなりません。
ペットフードのパッケージには体重別の給与量が記載されています。しかし、これはあくまで標準的なライフスタイルの犬や猫を基準にした平均的なものです。基本的にはこれを目安にして給与量を決めますが、それぞれの犬や猫の状態にあわせて給与量は増減しなければなりません。また記載されている給与量はそのフードだけを与える場合の必要量ですので、おやつや他の食べ物を与えている場合は、その分を減らしてフードの給与量を調整しなければなりません。
「書かれている給与量を守って与えているのに太ってきた。フード以外のおやつは何も与えていないのに・・・」という場合はその子にとっては給与量が多いことになります。肥満の判定やフードの給与量など動物病院に相談しアドバイスを受けるのが良いでしょう。ペットフードのパッケージには代謝可能エネルギー(ME)が書かれています。これはフードの総エネルギーから便や尿として失われるエネルギーを引いたもので、いわば実際に体で使われるエネルギーです。動物病院ではこの値をもとにカロリー計算をする場合もありますので、肥満を防ぐためには動物病院のアドバイスに従うことが大切です。
成長期には体を大きくさせるという重要な役割があります。そのため成長期の犬・猫は多くの栄養、エネルギーが必要になるため、成長期用フードは、成犬・成猫用フードに比べ高栄養、高エネルギーになっています。 成長期用のフードのパッケージに記載されている給与量を見てみましょう。成犬・成猫用と異なり体重別のほか、週齢・月齢ごとに細かく分かれています。成長期には体重は日々増加していきますが、成犬・成猫に近づけば体重当たりの給与量も少なくなってくるので、このような表になっているのです。また、大型犬はからだが大きくなるスピードが速く、小型犬は大型犬に比べると遅いという違いもあります。給与量は成長に合わせて見直しながら与えることが大切です。この時期に太りすぎると脂肪細胞が増えたり、肥満しやすくなったりする体質を作ってしまいます。逆に少なすぎると栄養不足で発育障害を起こすこともありますので、充分な栄養をとらせながら、過剰にならないことが大切です。
この時期は体の健康な状態を維持する、維持期とも呼ばれている期間です。肥満は適切な食事と運動で予防することができますが、肥満の原因の多くは食事の与えすぎによるものです。ペットフードに記載されている給与量を守っていても、それ以外におやつや人間の食べているものを少しくらいならと与えている場合が多く、これによりかなりのカロリーオーバーを招いています。「コロコロしていて可愛いわ」と、自分の犬や猫が肥満しているのに飼い主自身、気がついていない場合もありますので、動物病院で定期的にチェックしてもらうのが良いでしょう。
また普段からこまめに体重を量り記録しておきましょう。体重の増減を知ることは病気の予防にも役立ちます。もし体重が増加しているようなら計画的に減量しなければなりません。高齢になっても健康で幸せな生活を送る為には、この時期に肥満させないことが何よりも大切です。
いつまでたっても愛犬・愛猫は子どものままのような感覚の方が多いようです。でも、7歳を超えれば高齢期に入ります。人間でいうと生活習慣病がいろいろな形で現れる時期です。特に肥満は内臓、代謝、関節の病気をもたらし悪化させます。体がエネルギーを使う量が減ってきますので肥満しやすくなります。食べて得られるエネルギーが変わらなければ当然太ってきます。体重変化に一番気をつけなければならない時期と言えるでしょう。
大事なことは高齢になっても健康で幸せな生活を送るということです。そのためには必要な栄養、特に生命活動にもっとも重要なタンパク質を不足させないことと、脂肪はとり過ぎないように気をつけましょう。筋肉を維持し、余分な脂肪を付け過ぎないことが肥満防止になります。腎臓の病気等でタンパク質を制限しなければならないときは、必ず動物病院のアドバイスに従い食事を管理してください。
獣医師を対象とした「ペットの肥満に関するアンケート」資料より。
※日本ヒルズ・コルゲート株式会社:実施時期2008年2~3月。有効アンケート回収数861件。