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ワクチン接種は済んでますか?

ワクチン接種は済んでますか?

災害時は感染症の流行が心配。万一に備えて、必ずワクチン接種を!

地震などの大規模な災害時には、人もペットも避難所生活を余儀なくされることがあります。今回の東日本大震災でも、多くのペットが避難所や救護センターに収容され、感染症の流行が心配されました。
ペットも集団生活をしていると、病気をうつしたりうつされたりの危険性が高まります。感染源に接触する機会が増えるだけでなく、いつもと違う生活から来るストレスや栄養状態の悪化などにより体の抵抗力が落ち、より感染しやすくなるからです。
室内飼育が主体の普段の生活では、感染ペットと接触する機会は少なくても、不特定多数のペットが集まる避難所や救護センターではそうもいきません。もしもの時に備えて、ワクチンは必ず摂取しておきましょう。

ワクチンと狂犬病の予防接種は同時にできますか?

副作用が現れた場合の原因がわからなくなったり、ワクチン効果の低下を招く可能性もあり、より安全で確実な接種効果を期待する観点から、同時接種は避けたほうがよいでしょう。

アナフィラキシーが怖いのでワクチン接種をためらっています…

確かに、ワクチンによる副作用の可能性はゼロではありません。接種部位の腫れや軽い発熱ぐらいなら、治療もいりませんが、ごくまれにアナフィラキシーと呼ばれる、重度のアレルギー反応が起きることがあり、呼吸困難に陥るなど生命に関わる症状を示します。

しかし、アナフィラキシーが起きる確率は極めて低く、それを恐れてワクチン接種をしないのは、賢明な選択とはいえません。感染症のリスクのほうがより大きいので、心配な場合は注射したあとすぐに帰らず、待合室で15分ぐらい様子を見てあげれば万一の備えにもなります。

子犬のワクチン接種、3回目は余分ですか?

子犬は母犬からの初乳を通じて、移行抗体と呼ばれる免疫をもらいますが、もっとも持続期間が長いパルボウイルス抗体でも16週程度と言われています。この移行抗体が切れる時期が、病気に対する抵抗力が失われるたいへん危険な時期といえます。しかし難しいのは、移行抗体がまだ残っている間にワクチンを接種しても十分な効果が得られないことです。そこで、移行抗体が消失していくと思われる時期まで、3~4週間おきに接種を繰り返す方法がとられています。

とくに子犬のワクチン接種は、病気の種類によっても、移行抗体の薄れる時期に差があります。そのため、かかる危険性の高い病気のワクチンは、早い時期から接種を開始し、合計で3回接種する場合もあります。より確実な効果を得るためで、2回で十分、3回目は余分と言う回数だけの問題ではありません。ワクチンプログラムについては、かかりつけの獣医師によく相談しましょう。

ワクチン接種で予防できる感染症

1.原因 2.感染経路 3.症状 犬マーク.死亡率が高いとくに危険な病気

死亡率の高い犬の代表的な感染症「ジステンパー」

  1. 1ジステンパーウイルスによって感染し、うつりやすく死亡率も高い、犬の代表的な病気です。
  2. 2空気感染と感染した病犬から直接うつる場合があります。
  3. 3子犬での発生が最も多く、感染すると発熱や食欲消失、膿性の鼻汁、目ヤニといった初期の症状から、呼吸器系、消化器系に広がり、激しい咳や下痢、脱水などの症状が現れ、てんかん様発作、後躯麻痺等の神経症状を示し、衰弱死してしまいます。

嘔吐や下痢を引き起こします「犬コロナウイルス病」

  1. 1犬コロナウイルスによる伝染病です。
  2. 2このウイルスは感染犬の便や尿に放出され、経口感染します。
  3. 3子犬の場合は、嘔吐と中~重度の水様性下痢を引き起こします。潜伏期は1~2日で、軽い胃腸炎の症状の後、多くは回復します。

他の動物や人にもうつります「レプトスピラ病」

  1. 1 レプトスピラ症は、犬だけでなく他の動物や人にも感染の可能性のある伝染病で、細長いらせん状の細菌であるスピロヘータによって起こります。
  2. 2 病原菌は尿中に排泄され、病犬の尿と接触することにより感染。ネズミの尿も感染源になります。
  3. 3 レプトスピラ症には3タイプあり、黄疸出血型では、黄疸の他に嘔吐、下痢、歯茎からの出血、血便などがみられます。
    カニコーラ型は、嘔吐、下痢による脱水症状、体温の低下などがあり、手当が遅れると尿毒症を起し死に至ります。
    ヘブドマディス型は、腎炎と肝炎を併発することもあり死亡率の高い病気。最近はヘブドマディス型を予防できるワクチンも用意されています。

子犬は一晩で死亡することも「アデノウイルス1型」(犬伝染性肝炎)、脳炎や呼吸器症状を起こします「アデノウイルス2型感染症」(犬伝染性喉頭気管炎)

  1. 1犬アデノウイルスには1型と2型の2種類があります。
  2. 21型は感染犬の唾液や便、尿などから感染。2型は感染犬との接触、咳やクシャミなどの飛沫から感染します。
  3. 31型は、子犬の突然死(感染して一晩で死亡する場合があります)や、発熱、元気消失、食欲消失、嘔吐、下痢、扁桃腺の腫れ、目(角膜)の白濁といった犬伝染性肝炎の症状を起こします。
    2型は、肺炎や扁桃炎など呼吸器病を引き起こします。現在2型のワクチンで1型の犬伝染性肝炎も予防できることから、2型ウイルスによるワクチンが主に用いられています。

子犬はとくに高い死亡率「パルボウイルス感染症」

  1. 1パルボ(極小という意味)ウイルスによる急性伝染病で、1979年にアメリカで発見され、その後世界中に広まりました。犬パルボウイルスはチリやほこりに混じって長期間生存する、たいへん抵抗性の強いウイルスです。
  2. 2感染犬の嘔吐物や便から感染します。
  3. 3母犬譲りの免疫のない子犬が突然死してしまう心筋型と、激しい下痢や嘔吐を特徴とする腸炎型があります。子犬の場合は、とくに症状が重く死亡率も高いので、注意が必要です。

激しい咳が特徴です「犬パラインフルエンザ」

  1. 1犬パラインフルエンザウイルスは、単独での感染症よりも犬アデノウイルス2型、犬アデノウイルス1型、ボルデテラ、マイコプラズマなどいろいろなウイルスや細菌と混合感染して、気管支炎や肺炎、または一般に「ケンネルコフ」と呼ばれる呼吸器系疾患を起こすものとして知られています。
  2. 2伝染力が非常に強く、病犬との接触や、咳や、クシャミなどから空気感染を起こすこともあります。
  3. 3気管、気管支、肺に炎症を起こし、激しい咳が特徴です。

ワクチン接種によってつくられる免疫は一生続くものではありません。成犬になっても継続して受けるようにしましょう。