猫はもともと砂漠で暮らしていた動物です。水の少ない環境で、あまり水を飲まず、体内の水分を有効に使って、濃縮された濃い尿を出す体の仕組みになっています。
濃い尿を出すために、腎臓には常に負担がかかり、疲れて機能障害を起こしやすいのです。また濃い尿は、尿中のミネラルが結晶化し、尿石ができやすくなります。そして、尿石ができれば膀胱を傷つけ、膀胱炎を引き起こすことにもなりかねません。
寒い季節は、ただでさえ少ない猫の飲水量がさらに減りがち。その結果、尿がより濃くなり、泌尿器系の病気にかかりやすいくなるわけです。
また、「多飲多尿」が初期症状として知られる慢性腎不全は、飲水量の減る冬の方が、愛猫が頻繁に水を飲む姿がかえって目を引き、病気が発見されやすいということもあるようです。
「猫下部尿路疾患(FLUTD)」とl慢性腎不全」は、猫の泌尿器系疾患のなかでも、とくに多い病気です。
猫下部尿路疾患とは、膀胱炎や尿石症など、尿路の下部(出口に近いほう)で起こる病気の総称で、若い猫でもかかります。
対して、慢性腎不全は、徐々に腎臓の機能が低下する病気で、高齢猫に非常に多く、老猫の多くが慢性腎不全予備軍といえます。
これらの病気は、まず「尿の異常」に現れます。愛猫の排尿の頻度、排尿字の様子、尿の量や色など、「いつもと違う」と感じたら、早めに動物病院へ。
また猫下部尿路疾患の予防や慢性腎不全のケアには、十分に水を飲ませることが大切です。複数箇所に水を置いたり、飲みやすい容器を用意するなど、いつでも水を飲める工夫をしてあげるといいでしょう。
猫下部尿路疾患とは、尿路下部で起こる病気の総称。尿路には尿結晶や結石ができる「尿石症」、膀胱粘膜に炎症を起こす「膀胱炎」、あるいは両者を併発するケースも多く見られます。
猫下部尿路疾患にかかると、頻繁にトイレに行くのに尿が出にくい、排尿時に痛みで鳴く、血尿が出る、トイレ以外で粗相をする、といった症状が見られます。
なかでも危険なのが、尿道に結石が詰まって尿が出なくなる尿道閉塞。尿道がメス猫より細いオス猫に多い病気で、放置すれば、急性腎不全から尿毒症を起こし、数日で命を落とすことになりかねません。ネス猫の場合は、結石で膀胱内壁が傷つけられ、膀胱炎を発症することが多いようです。
その他、原因不明の特発膀胱炎も増加しています。
猫によく見られる尿石は、「ストルバイト」と「シュウ酸カルシウム」です。
尿石の原因には、食生活が大きく関わっており、ミネラルバランスの適切でない食事によって、尿がアルカリ性に傾くとストルバイト尿石が、酸性に傾くとシュウ酸カルシウム尿石ができやすくなります。
治療は、ストルバイト尿石の場合は、食事中のマグネシウムを低くし、尿を酸性化することで、溶かすことができます。動物病院で処方される療法食に切り替えることで可能です。
それに対して、シュウ酸カルシウム尿石の場合は、手術によって取り除くしかありません。
猫下部尿路疾患は、いったん治癒しても、治療前と同じ食事、環境に戻ると、再発しやすいのが特徴。日々の生活管理が重要です。
腎臓は、体内の老廃物や毒素を尿として排出する働きをしています。腎臓は我慢強い臓器で、機能の75%が失われて初めて症状が現れます。この状態を「腎不全」と呼んでいます。
腎不全が進行すると、尿として排出されるべき毒素が体内に蓄積され、危険な尿毒症を引き起こします。
腎不全には急性と慢性があり、慢性腎不全とは、腎機能が数年以上かけて徐々に低下していく病気です。
慢性腎不全で最初に気づく症状は、「水をよく飲み、尿の量が増える」こと。尿を濃くする働きが低下するため多尿となり、尿として出て行った水分を補給するため多飲になります。
進行するにつれ、食欲不振や嘔吐、体重減少など見られ、さらに進むと、尿毒症症状として嘔吐や下痢、口内炎、痙攣などを示すことにも。
慢性腎不全は、加齢に伴う腎機能の衰えが主な原因ですが、他の病気が引き金になることもあります。
例えばウイルスや細菌感染による腎疾患や、尿石症による尿路閉塞で急性腎不全を起こし、それが慢性に移行することもあります。
いったん失われた腎機能は、回復することはありません。 治療は、進行を抑え、症状を緩和することに目的に行われます。病気の進行度合いにもよりますが、主に、輸液(点滴で脱水や電解質のバランスを補正)、食事療法(タンパク質やナトリウムなどの制限)、投薬の組み合わせ。毒素を吸着して便として排出させる活性炭サプリメントなども用います。 早期に発見し、適切な治療と管理を行えば、完治はしなくても、愛猫は長い期間、生きていくことができます。