健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

犬のからだセミナー 便編 「便」は体調を雄弁に語ります。

愛犬のウンチ、いつもと同じですか?
人と同様、犬にとっても「便」は健康のバロメーター。
どんなときにどんな影響が出るのか、食べた物や体調と便の関係について知っておきましょう。

健康にいい便とは?

健康ないい便とは、どんな便でしょうか?
 一般には、色は茶色から濃い茶色で、ティッシュでつかんだときに形が崩れず、地面に汚れが残らない程度の硬さ、色、においなどは食べたものによって大きな影響を受けますし、個体差もあります。
 普段から、愛犬の健康時の便をよく見極めておき、何か変化があれば敏感に気づけるようにしておきたいですね。

便は食べた物に、大きく影響されます。

ドッグフードを替えたり、トッピングや手づくり食の具材を替えたりすると、とくに病気でなくても、愛犬の便に変化が見られることがあります。そんなときは、まず、何かいつもと違う物を与えなかったか、考えてみてください。

量が増えた
犬は本来肉食なので、動物性タンパク質(肉)主体の食事であれば消化吸収しやすく、便の量は少なめです。
対して食物繊維が多くなるほど、便の量は増加します。例えばダイエットフードに切り替えれば、便の量は増えます。
軟らかい
適量の食物繊維は便秘を防ぎますが、摂りすぎると、腸の蠕動(ぜんどう)運動が刺激されすぎて、大腸で水分が再吸収される前に便として排出されるため、軟便や下痢の原因に。
色が違う
便に色をつけるのは、胆汁の中のビリルビンという物質。穀類や食物繊維が多いと腸内が酸性になって、黄色っぽい色に。肉が多いと腸内はアルカリ性になって、濃い茶褐色の便になります。 他にも、カルシウムを摂りすぎると、白っぽく硬い便になったり、クロロフィル配合のガムやサプリメントで便が緑色になることも。
強くにおう
穀類の消化が苦手な犬は、穀類の多い食事だと消化不良を起こして便が臭くなることがあります。
また動物性タンパク質でも与えすぎると、小腸で消化・吸収しきれず、未消化物が大腸まできて、便を臭くする原因になります。
食べた物が消化されて便になるまで

こんなときは危険信号、すぐに動物病院へ

 食べた物は、胃、十二指腸、小腸、大腸で消化・吸収され、便となって排出されます。その間には、すい臓からすい液が、胆のうからは胆汁が分泌されて、消化が促されます。このプロセスで何らかの不調があれば、その影響は便に敏感に反映されるわけです。
 愛犬の便がいつもと違う!次のような危険な変化に気づいたら、すぐに動物病院へ。

血便
便に付着したり混じった血液が、赤ければ大腸から、黒色なら胃・十二指腸・小腸などからの出血が疑われます。
また、生肉やレバーなど血液を多く含む食べ物を与えたときには、健康でも黒い便が出ることがあります。
タール便
黒くて粘り気のあるタール状の便。胃や十二指腸の潰瘍やがん、寄生虫(犬鉤虫など)感染による小腸からの出血の可能性もあります。
粘液便
表面に白いゼリー状の粘膜が付着している便。通常は大腸の粘液は便と混ざって排泄されるので、大腸のトラブルが考えられます。寄生虫がいたり、ストレスが原因のことも。
灰白色便
灰色や白っぽい便。胆のうに障害があって胆汁の分泌量が少なかったり、また慢性すい炎やすい外分泌不全などで、すい液が十分分泌されない場合も、消化不良で白っぽい脂を含んだ便が出ます。
緑色便
緑色は、胆汁に含まれるビリルビンが腸内環境などによって酸化した色です。小腸や大腸の働きが不十分で、腸で胆汁が再吸収されず、そのまま排出されると緑色便になることがあります。また抗生物質の与えすぎで、腸内細菌が死滅した時も緑色の便になることがあります。
細い便
便が細かいのは、腸が圧迫されているのが原因です。直腸がんや、オスなら前立腺肥大、メスなら膣の平滑筋肉腫などの可能性も。

動物病院に行くときには、便を持参しましょう。また便の異常以外に、吐いたり、元気がないなど、他の症状が出ていないか、愛犬の様子をしっかり観察してください。

注意!食道にトラブルを抱える場合の「吐出(としゅつ)」とは

野菜や豆、穀類などに多く含まれる食物繊維には、水溶性と不溶性の2種類があります。 水溶性食物繊維は、糖やコレステロールの吸収を抑制し、血糖値やコレステロール値の上昇を穏やかにしたり、腸内の善玉菌のエサとなって善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。
また不溶性食物繊維は、水を吸収して大きく膨れ、便の量を増やすとともに、腸の蠕動運動を活発にして、便秘の予防に役立ちます。