夏場、炎天下での散歩や蒸し暑い室内や車内でのお留守番などが原因で起こる熱中症。高温多湿下で熱がうまく放散できず、体温調節に支障をきたす病気です。汗腺(エクリン汗腺)が肉球にしかなく人のように汗がかけない犬は、より熱中症になりやすいのです。とくに短頭種や肥満犬などは注意が必要です。
初期には、ハァハァという苦しそうな呼吸や大量のよだれ、次第に嘔吐や下痢、けいれんを起こすこともあります。重症化すると意識がなくなり、ショック症状から死に至ることも。
熱中症の応急処置は、とにかくすぐに体を冷やすこと。濡らしたタオルで動脈(脇の下、内股、首)部分を重点的に冷やしてください。水が飲める状態なら、しっかり水を飲ませること。症状が進んでいる時は、風呂場などで体全体に冷水をかけるなどして、できるだけ早く動物病院に運びましょう。
蚊が出始めると、そろそろフィラリア予防の季節です。フィラリアは蚊が媒介する白いそうめん状の寄生虫で、心臓や肺動脈に寄生します。最近は予防が普及して、フィラリア症にかかる犬は減少していますが、かつては犬の死因の代表的なものの1つでした。
感染初期はほとんど無症状ですが、次第に咳や息が荒くなるなどの症状が出始め、散歩中に休んだり運動を嫌がるようになります。気づかずにいると、四肢のむくみや腹水がたまるなど、症状が進み、最終的には命にかかわります。
フィラリア症の治療法は主に3つあります。駆除薬を投与して体内のフィラリアを殺す方法(ただし一度に大量の虫を駆除すると、死んだ成虫が血管に詰まって危険)、手術によって虫を取り除く方法、そして対症療法を行ないながら成虫の寿命を待つ方法。病気の進み具合、犬の年齢や健康状態に応じて選択します。
しかし、フィラリア症の対策は予防が第一。動物病院の指示に従い、蚊の活動時期に合わせて、きちんと予防薬を投与しましょう。
心臓病は、加齢とともに増える病気です。一般に、咳が出る、運動をしたがらない、息が荒い、すぐに息切れするなどの症状が見られます。
とくに中高齢の小型犬に多い心臓病が、僧帽弁逆流症(僧帽弁閉鎖不全症)です。左心房と左心室の間にあり血液の逆流を防いでいる僧帽弁が変性し、しっかり閉じなくなる病気です。本来なら、肺できれいになった血液は左心房から左心室に入り、そこから大動脈を通って全身へと運ばれていくのですが、血液が左心房に逆流してたまってしまい、全身に行き渡りづらくなるのです。その結果、心臓が肥大し、息切れや咳をするようになり、悪化すると肺水腫という非常に呼吸が苦しくなる症状を引き起こし、最悪、命にかかわることもあります。
僧帽弁逆流症に限らず、心臓病の治療は、安静療法、食事療法、薬物療法の組み合わせが基本です。進行性の病気ですから、早期発見が何より大切。病気の種類によっては手術が有効なケースもありますが、高度な技術と設備を要するため、行える病院は限られます。
パグやシー・ズー、ブルドッグなど、いわゆるペチャ鼻の短頭種がかかりやすい呼吸器系の病気を総称して「短頭種症候群」と呼びます。主に次のような病気があります。
いわゆるペチャ鼻の短頭種がかかりやすい呼吸器系の病気を総称して「短頭種症候群」と呼びます。主に次ぎようのような病気があります。
口の奥のほうにある軟口蓋と呼ばれるヒダが長すぎる病気。短頭種に限らず、高齢期の小型犬にも見られます。短頭種はもともと軟口蓋が長いうえ、他犬種に比べて呼吸回数が多く、空気の刺激を受けて余計にヒダが垂れ下がりやすいのです。ヒダが垂れ下がると、気道をふさぎ、いびきをかくようになります。短頭種はもともといびきをかきますが、加齢とともにひどくなり、呼吸が苦しそうになれば、切除手術が必要です。
気管が押しつぶされたように変形してしまう病気で、短頭種以外に小型犬にも多く見られます。運動後や興奮時などに、ガーガーとアヒルの鳴き声のような乾いた咳をしたり、苦しそうな息づかいをします。軽い場合は、太らせない、首輪でのどを圧迫しない、暑さを避けるなどの生活管理で進行を抑えます。根本的な治療のために手術を行うケースもありますが、難度の高いものになります。
気道が狭く、換気によって効率よく熱の放散ができない短頭種は、とりわけ熱中症になりやすい犬種です。そのため、夏場、短頭種のお預かりを中止する航空会社が増えています(なかには、特定犬種は通年でお預かり不可の会社もあります)。
具体的な中止期間や対象犬種は、航空会社によって異なりますので、愛犬連れでの移動を予定されている方は、あらかじめ確認しておきましょう。