大混乱の最中、福島では幾度もの会議が行われ、被災動物への活動が本格化したのは、4月15日の「福島県動物救護本部」が設置されてからでした。その後4月27日、第1号の”飯野シェルター”が開設。しかし100頭以上の犬・猫を数名の県の担当者とボランティアで世話をしなければならない状況の中、保護された子たちの傷ついた心までケアしてあげることの難しさを職員たちは感じていました。そこで被災動物の譲渡や一時預かりの拠点としての機能を持ち、心のケアもできる、環境の整った第2シェルターが必要になってきたのです。
渡邉「私達夫婦が互いに獣医師である事、被災者である事、そして私設シェルターとして被災した動物達を管理していた事から、第2シェルターの立ち上げに関係することになりました。ますは候補地探しから始まり、福島県と獣医師会、民間企業の尽力によって、10月に三春シェルター開設という運びになりました。」
シェルターで働くスタッフを、9月初頭から募集開始。9名の勇士が集まり、そこから三春シェルターの活動が始まりました。
平尾「当初はどんな想いでお話を受けたのですか?」
渡邉「とにかく警戒区域内の動物達をなんとかしたかった。でもひとりでは何もできない。同じ想いをかかえている人たちと手をとりあって解決していこうと思ったんです。当初スタッフ9名の内、7名は同じ被災者でした。」
平尾「同じ震災を経験し、被災動物への想いを共有できる仲間と共に、人と動物両方の未来を考えていたんですね。」
第2シェルターである、三春シェルター。
犬舎・猫舎の中に、ちぎった新聞紙をペットシーツの代わりに入れます。ボランティアスタッフの方々が大量に作成されていました。
朝から夕方まで懸命に、被災した犬・猫達の為に頑張るボランティアスタッフの方々。少しの休憩時間でも、犬・猫達に対する想いを話されていました。
福島の震災を経験した、ある飼い主さんの話です。
被災地から一緒に逃げる事ができず、離ればなれになった愛犬を、くる日もくる日も、ずっと探していました。そんなある日の事。
奇跡的にも民間の保護団体に保護され、里親に迎えられた事を知った飼い主さんは、いてもたってもいられず、愛犬に逢いに行ったそうです。
しかし、ぴょんぴょん跳ねて遊んでいる幸せそうな姿を遠巻きにみて、「この子の為を思うなら・・・」という気持ちで、引き取らずに戻ってきたそうです。
避難生活を続けている飼い主さんは、愛犬と一緒に生活をしたくても、充分に時間を割いてあげれなかったり、一緒に生活をしづらい状況で様々な想いがあるのだと、改めて考えさせられました。
平尾「三春シェルターの犬・猫達は、徐々にですが元気を取り戻しているように見えます。先生やスタッフさんにもすごくなついていますよね。」
渡邉「そもそものコンセプトとして、できるだけ元の生活に近づけてあげて、心のケアをする事を目的としています。精一杯愛情を注いでいるつもりですが、それでもたくさんの犬・猫達を、限られた時間で充分に診てあげることは今でもできていません。」
平尾「そういう意味でも、ボランティアさんの協力は頼もしい限りですね。」
渡邉「はい、ボランティアさん無くしては犬・猫達の心のケアはここまでできていないと思います。たくさんのスタッフ・ボランティアさんに支えられながらここまできました。でもね、最近シェルターの犬を見ていて、"ハッ"と気づかされる事があるんです。」
平尾「先生でも、気づかされる事が?」
渡邉「ええ、たくさんありますよ。例えば、飼い主さんが面会に来られた時のことです。その時の犬達の喜び方は、私達に見せる喜び方ではないんです。身体全体で表現するというか・・・。やっぱり違うんだなぁと思いますね。その後、飼い主さんが帰っていく姿を見送る犬達の表情は、悲しそうで、とてもつらそうに見えます。そういうシーンを見るたび、とにかく元気で健康な状態で、飼い主さんの元へ還してやらなければと強く責任を感じますね。」
平尾「この三春シェルターの、今後について、どのようにお考えですか?」
渡邉「最近になって、スタッフ含め心境に大きな変化があります。当時は”飼い主さんが引き取れるようになるまで、いつまででも預かろう”という考えでしたが、人間目線なのではと想うようになりました。このままシェルターでいつ元の生活に戻れるか分からない状態で、この子達を待たせるのはどうなのだろうと。「この子のために手放して、里親に出しましょう」とは、言いづらいですが、それでもシェルターは変わっていかなけらばならない時期だと感じています。」
平尾「シェルターの犬・猫と向き合い続けてきた、先生やスタッフさんだからこその、ひとつの答えなのでしょうね。」
渡邉「そうですね。たくさんの愛情を感じさせてあげたいです。それが被災した動物にとって最大の癒しになるはずだと思います。」
平尾「これまで、里親として名乗り出られた方は、たくさんいらっしゃったのですか?」
渡邉「おかげさまで、たくさんの里親さんが迎えにきていますよ。本当に感謝してます。」
平尾「里親さんの温かさに救われながらも、やはり一緒に過ごしたくても過ごせない飼い主さんの為には、被災地である福島をできるだけ早く元の姿に、人と動物が共存できる姿に戻したいですね。」
渡邉「私も本当にそう思います。震災後間もない頃は、避難所で飼えない方の為に、個人的に犬・猫達を預かったりしていましたが、今の三春シェルターでは警戒区域内で保護された動物達のみ預かっています。避難生活長期化し、厳しい環境の中、懸命に同行避難してきた子の世話をしている飼い主さんもたくさんいます。そんな方たちのお役に立ちたいのですが、それができるだけの人、モノ、資金が足りていません。ですがゆくゆくは、このシェルターを”動物愛護センター”にして、動物愛護を推進する活動をしていきたいという願いがあります。」
平尾「震災から1年以上が経過した今なお、日々動物達の為に活動を続けている先生方のことを忘れてはいけないと、改めて強く感じました。これからも精一杯の支援を続けさせていただきます。最後に読者の皆様へのメッセージをお聞かせください。」
渡邉「私は約20年、獣医師として、たくさんの犬・猫、飼い主さんにささえられながら生きてきました。その数だけ”絆”があります。みなさんも、共に暮らす動物達との絆を大切にしてください。シェルターは当初”保護”することが主な目的でした。次に”管理”をすることが大切になり、今は生涯のパートナーと強い絆で結ばれた、本当の幸せを享受できるようサポートする時期に。皆様からいただいたご支援を無駄にしないためにも、ここに居る子達に一日も早くそんな”幸せ”を感じさせてあげたいと願います。」
渡邉先生ご自身も、現在避難生活を送りながら、シェルターに勤務されています。先生の元には震災前から診ていた子の相談に来られる方も多いそうで、「私達を頼ってくれる双葉郡の被災者がいる」という理由から、獣医師の奥様と今年3月に動物病院を開業されました。朝から夕方まではシェルター、夕方からは病院とまさに朝から晩まで働きづめの毎日を送られています。
「今の病院はあくまで仮設。絶対にいつの日か富岡町に帰る!」と断言する渡邉先生の言葉に、明日への希望を持ち続ける地元の方の熱い想いを感じました。
多忙な中、快くインタビューに応じてくださった先生のお話からは、これまで獣医師として自分を生かしてくれた犬猫達、自分を慕ってくれる飼い主さんへの感謝の思いがひしひしと伝わってきて、「今こそ恩返しがしたい」という気持ちが、多忙な現場でがんばれる原動力になられているようにも感じました。
しかし先が見えない不安の中、心が折れそうになることもあり、そんな時は、カレンダーに書き込んだ自分へのメッセージを見て、気持ちを入れ替えているそうです。
愚直なまでに誠実な先生のお話を聞き、改めて自分達もできることをしなければと感じました。ペピイは、みんなが前を向いて進んでいけるようになる日まで、支えあい励ましあいながら、動物達のため飼い主さんのために日々奮闘している福島県の動物救護生活を、これからも応援してまいります。
診察室の壁に貼られているポスターには、復興への気持ちが込められたメッセージが。
福島の動物救護活動はまだまだ支援を必要としています。
今私たちができることは、一人一人の小さな力をたくさん集めて、現地にお届けすることだと考えています。
ペピイでは全国の飼い主様といっしょに、福島を応援できる企画を行っております。皆様からお寄せいただいた支援を福島県動物救護本部へお届けし、福島のシェルター運営、譲渡支援、愛護センター設立資金として活用されます。
お買い上げ100円につき1ポイントたまる「ペピイわくわくポイント」を1ポイント=1円で寄付できます。
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いつもの”ごはん”をペピイではお買い上げいただくことで、1個につき10円をペピイから寄付させていただきます。
実施期間:2013年3月31日ご注文分まで
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