「便」は健康のバロメーター。
どんなときにどんな便が出るのかを知っておくと、日々の健康管理に役立ちますよ。
健康ないい便とは、どんな便でしょうか?
一般には、色は茶色から濃い茶色で、ティッシュでつかんだときに形が崩れず、砂やシートに汚れが残らない程度の硬さ、と言われています。しかし、便の量や硬さ、色、においなどは食べたものによって大きな影響を受けますし、個体差もあります。
普段から、愛猫の健康時の便をよく見極めておき、何か変化があれば敏感に気づけるようにしておきたいですね。
食べた物は、胃、十二指腸、小腸、大腸で消化・吸収され、便となって排出されます。その間には、すい臓からすい液が、胆のうからは胆汁が分泌されて、消化が促されます。このプロセスで何らかの不調があれば、その影響は便に敏感に反映されるわけです。
キャットフードを変えたり、トッピングや手づくり食の具材を変えたりすると、とくに病気ではなくても、愛猫の便に変化が見られることがあります。そんなときは、まず、何かいつもと違うものを与えなかったか、考えてみてください。
猫は肉食なので、動物性タンパク質(肉)主体の食事であれば消化吸収しやすく、便の量は少なめです。対して食物繊維が多くなるほど、便の量は増加します。例えばダイエットフードに切り替えれば、便の量は増えます。
水分摂取不足、食物繊維不足、加齢などによる腸の蠕動運動の低下などによって、コロコロの硬い便や便秘に。
適量の食物繊維は便秘を防ぎますが、摂り過ぎると、腸の蠕動運動が刺激され過ぎて、大腸で水分が再吸収される前に便として排出されるため、軟便や下痢の原因に。
便に色をつけるのは、胆汁の中のビリルビンという物質。穀物や食物繊維が多いと腸内が酸性になって、黄色っぽい色に。肉が多いと腸内はアルカリ性になって、濃い茶褐色の便になります。他にも、カルシウムを摂り過ぎると、白っぽく硬い便になったり、クロロフィル配合のサプリメントで便が緑色になることも。
肉食の猫は穀物が苦手。穀物の多い食事だと消化不良を起して便がくさくなることがあります。また動物性タンパク質でも与え過ぎると、小腸で消化・吸収しきれず、未消化物が大腸まできて、便をくさくする原因になります。
口かむことで摂取した食べ物を小さくし、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすくします。 |
食道食道の蠕動運動により、食物は、順に胃へと送り込まれます。 |
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胃食物は胃液と混ざり、ドロドロに溶かされて、十二指腸に送られます。 |
十二指腸十二指腸には、すい臓からすい液、胆のうから胆汁が流れ込んできて、食物の消化・分解が進められ、小腸へ。 |
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小腸小腸から分泌される消化酵素で、さらに細かく分解された栄養素は小腸で吸収され、血液中に取り込まれます。 |
大腸大腸では水分が吸収され、最後の残りかすが固まって便になります。 |
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肛門便は直腸を通って、肛門から排泄されます。 |
便の異常と考えられる原因
愛猫の便がいつもと違う!次のような危険な変化に気づいたら、すぐに動物病院へ。
動物病院に行くときには、できるだけ便を持って行くようにしましょう。また便の異常以外に、吐いたり、元気がないなど、他の症状が出ていないか、愛猫の様子をしっかり観察してください。
猫は直腸が通過する骨盤腔が狭く、犬に比べてもともと便秘になりやすい動物ですが、重度の場合は、「巨大結腸症」の疑いが。これは、便が何らかの原因で骨盤腔の手前の結腸に滞ってしまい、スムーズに排泄されない病態です。
便に付着したり混じったり血液が、鮮やかな赤なら直腸から、赤ワイン色なら大腸から、黒色なら胃・十二指腸・小腸などからの出血が疑われます。
黒くて粘り気のあるタール状の便。胃や十二指腸の潰瘍やがん、寄生虫(猫鉤虫など)感染による小腸からの出血の可能性もあります。
便が細いのは、腸が圧迫されているのが原因です。直腸がんや、オスなら前立腺肥大、メスなら膣の平滑筋肉腫などの可能性も。
表面に白いゼリー状の粘液が付着している便。通常は大腸の粘液は便と混ざって排泄されるので、大腸のトラブルが考えられます。寄生虫がいたり、ストレスが原因のことも。
また粘液便や血便などの下痢を慢性的に繰り返す場合は、炎症性腸疾患(IBD)の可能性もあります。
灰色や白っぽい便。胆のうに障害があって胆汁の分泌量が少なかったり、また慢性すい炎やすい外分泌不全などで、すい液が十分分泌されない場合も、消化不良で白っぽい脂を含んだ便が出ます。
抗生物質を与え過ぎると、腸内細菌が死滅して、緑色の便になることがあります。