健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

同行避難は、普段のコミュニケーションがキーになる。ねこちゃん編

がんばろう日本。今、私たちができること
地震、そのときに大切なこと家族の一員、社会の一員として地域や社会で愛される猫に育てよう!同行避難は、ふだんのコミュニケーションがキーになる

2011年3月11日、東日本大震災発生時、津波の被害を受けた地域では、とにかく逃げるしかなかったそうです。
うちの子と一緒に逃げることが生きる励みになった方もいれば、助ける為に亡くなった方も・・・。
「猫も犬も家族」という絆を感じるとともに、そうした現実が残念でなりません。
そこで、自らも震災を体験し、現在は仮設住宅に住む飼い主さんをケアされている阿部容子先生と「今からできること」について考えてみました。

  • 阿部容子先生

  • ann project

  • 宮城県石巻市「あべ動物病院」
    臨床検査技師、
    JAHA認定家庭犬のしつけインストラクター
    阿部容子 先生

    被災ペットの救護活動に参加。
    その後、仮設住宅で暮らす飼い主さんのしつけの悩みを中心にケアするannproject(アンプロジェクト)を発足。

とっさの場面、同行避難するために

-災害発生時に落ち着いて避難するために、やっておくべきことはどんなことでしょうか?

実は、猫の場合、地震に驚いてタンスの裏などに隠れてしまって見つからず、同行避難できなかった飼い主さんが犬に比べて多かったんです。数日後、探しに戻ると見つかるケースはあったのですが・・・
そうならないためにも、猫用ケージ(※1)で普段から飼育し、「目を離す時は入れておく」という習慣が大切だと思います。ケージのそばや中でごほうびをあげたり遊んであげて、ゆっくりと慣らしてあげましょう。

-「これがあると一緒に逃げやすくなる」というものはありますか?

慣れ親しんだキャリーバッグがあるといいですね。両手が自由だと逃げやすいですし、避難所などの知らない場所でもキャリーがあれば、安心を感じられる寝床になりますよ。

避難所・仮設住宅での共同生活に備えて

-先生が避難所や仮設住宅を回られている中で、猫たちはどんなふうに過ごしていましたか?

全ての避難所に入れたわけではありませんが、猫がいることで避難所の雰囲気がすごく明るくなったんです!猫にリードをつけて、お散歩されている方もいらっしゃいました。うちの子にもリードをつけたい方は、負担の少ない細い紐から慣らしてみてください。

-避難所生活で猫のストレスが増えないか、心配なのですが・・・。

そうですね。「経験したことのないもの=不安」と感じること原因になるので、日頃から色んなものに慣れておくといいですよね。
先ほど話しましたキャリーバッグも大切ですが、猫は特にトイレが心配です。慣れない場所でトイレできずに膀胱炎になることもあるので、猫砂や新聞紙に慣れているといいですよね。
食器も大切で、「避難所にあったお豆腐のパッケージを食器に代用したけど、食べてくれないんです。」というお悩みもありました。

-普段から、いろんなものに慣れておくことが大切なんですね。

そうなんです。ただ、急にやり過ぎるとストレスになります。おやつや遊びなど楽しい思い出をごほうびに少しずつ慣れさせてあげましょう。また、避難所付近を放浪してしまうと感染症や、雌猫は予期せぬ妊娠の心配もでてきます。ワクチン接種や避妊去勢もきちんとしておきたいところ。迷子札などの目印も、もちろん大切です。

-仮設生活へのサポートはこれからも続くかと思います。最後に全国の飼い主さんへのメッセージをお願いします。

本日お話で出たことは日常でも役立ちます。うちの子と一緒に少しずつ始めてもらえればと思います。
そして今回の震災では、猫や犬が多くの人を勇気付けてくれると同時に、社会性がある子なら苦手な人にとっても癒しとなることに気づきました。これからはペットを亡くされた方のために、猫や犬の訪問活動も始める予定です。
最後にみんなが「この子がいたから頑張れた」と思えるように、被災ケアの発展を目指していきますので、皆様にも見守っていただけると嬉しいです。

みんなの笑顔があふれます。

うちの子と一緒にいるだけで癒されます。

室内で飼い主さんとお散歩を楽しむ猫ちゃん。

阿部先生のご自宅は1階まで浸水しました。

仮設住宅は軒先が似ているので、シールを目印に。

非常時に必要な持ち物