猫が体をかく最も一般的な原因はノミでしょう。成虫が見つからなくても、皮膚の毛根に黒い細かい粒(ノミの糞)が見つかれば、ノミと考えられます。
ノミによる被害には、多数のノミに刺され激しいかゆみを生じる「ノミ刺傷」と、ノミに繰り返し吸血されたせいで、ノミの唾液にアレルギーを起こす「ノミアレルギー性皮膚炎」があります。後者はわずか1匹のノミに刺されただけでも発症することがあり、猫の背中から腰、しっぽの付け根に脱毛や赤い発疹(ブツブツ)が見られるのが特徴です。猫に寄生するノミは、人も吸血して被害を広げます。
治療は、動物病院で処方されるノミ駆除剤の定期的な投与とともに、生活環境を清潔に保つこと。再感染を防ぐには、成虫だけでなく幼虫・卵の除去も含めたノミコントロールが大切です。
「疥癬」は、猫ヒゼンダニの寄生による皮膚病で、赤い発疹や激しいかゆみを生じます。最初は耳(外耳)から始まり、頭部や頚部へと広がっていくことが多いです。患部をかくことで、フケやかさぶた、脱毛を生じたり、引っかき傷から細菌感染し、化膿することも。
ダニ駆除剤の投与によって治療しますが、接触によって簡単にうつるため、多頭飼育の場合は、同居動物も一緒に治療・予防することが必要です。治療中は、猫がよく使用する寝床やブラシなどの生活用品はしっかり消毒を。
猫ヒゼンダニは人にもうつりますが、人の皮膚では長くは生きられません。
好酸球性肉芽腫症候群(好酸球は白血球の一種)とは、猫によく見られる皮膚に炎症が起きる病気で、症状の違いから、無痛性潰瘍、好酸球性プラーク、好酸球性肉芽腫の3つに大別されます。
そのうち、強いかゆみを生じるのが、好酸球性プラークです。腹部や内股、首などに、ぼこぼことした比較的大きくて隆起した発疹ができるもので、猫はかゆみからしきりになめ続け、皮膚の表面がただれてしまうこともあります。
好酸球性肉芽腫症候群の原因は、まだはっきり解明されていませんが、アレルギーが関係していると考えられています。皮膚炎の対症療法としてはステロイド剤などが使用されますが、アレルギーの関与が考えられる場合には、推測されるアレルゲン(ノミ、特定の食物、花粉やハウスダストなど)を取り除くことも必要です。
猫がしきりに頭を振ったり、耳の後ろをかいたりするときは、外耳炎が疑われます。外耳炎は、耳ダニの寄生、真菌(カビ)や細菌の感染、アレルギーなどによる外耳道の炎症で、かゆみ、耳垢、耳がにおうなどの症状が見られます。湿度が高くなる季節はとくに注意を。
治療は耳の洗浄が基本です。同時に、耳ダニが原因なら駆除剤の投与、真菌なら抗真菌剤、細菌なら抗生物質と、原因に応じた治療を合わせて行います。
毛色の白い猫が、強い紫外線を浴びることによって、毛の薄い耳の先端や、色素の薄い鼻先などの皮膚が赤くなったり、脱毛したりする皮膚炎です。かゆみを伴うので、かきすぎて出血し、かさぶたができることもあります。日光皮膚炎をくり返していると、耳の先端が変性して、皮膚がんに進行することもあります。外出自由の白い猫はリスクが高いので、注意してください。
日光皮膚炎の治療・予防は紫外線対策が中心です。完全室内飼育にしたり、窓ガラスにUVカットフィルムを貼ったり、外に出る猫なら、耳や鼻先に日焼け止めを塗ってあげるなどの配慮を。