猫の耳のしくみで、まず人と違っているのは「耳介」です。猫の耳介はたくさんの筋肉からなり、あらゆる方向に片耳ずつ自在に動かすことができます。効率のよい「集音器」の役割をしているのです。
耳介で拾われた音は鼓膜を振動させ、その振動が中耳内の耳小骨を伝わって、内耳へ。内耳の蝸牛の中には音を感じ取る細胞があり、聴覚情報を聴神経を通じて脳へと伝えます。ちなみに、平衡感覚を保つ機能は、内耳の前庭と半規管が担っていますが、猫はこの部分が発達しており、バツグンのバランス感覚を発揮します。
春から夏にかけての季節、耳のトラブルとして注意したいのが「外耳炎」です。原因は、耳ダニや真菌(カビ)、細菌、アレルギーなど様々ですが、ひどいかゆみ、耳垢、耳がにおうなどの症状が出ます。
猫の耳は、人と違って外耳道がL字型に折れ曲がっており、途中から横方向に進んでいきます(水平耳道)。この部分は汚れがたまりやすく、また通気が悪いので細菌や真菌の増殖を招きやすいようです。異常に気づいたら、すぐに動物病院へ。
なお、日頃のお手入れは、耳介を脱脂綿で優しく拭ったり、イヤーローションを耳に垂らしてクチュクチュともむ程度で。綿棒を使うと、外耳道を傷つけたり、汚れが奥に押し込んでしまいかねないので、やめておきましょう。
耳が音として感じ取れる周波数帯域のことを「可聴域」といいますが、人の可聴域は20Hz(ヘルツ)~20000Hz。猫は20hz~60000Hz(最大10万Hzとも)とされ、犬笛に反応する犬よりもさらに高い音が聞き取れます。
これは獲物であるネズミなどのげっ歯類が高音で鳴くためとも言われています。
音のする位置をどれだけ正確に聞き分けられるかという能力についても、猫の圧勝!
人が音の方向を感じるとき、4.5度の誤差が生じるのに対し、猫の場合は0.5度なのだとか。
それでは、小さな音を聞き取る能力はどうでしょうか?
犬の聴力は人の4倍とも言われ、猫なら犬のさらに2倍優れているとも。単純に計算すれば、人の8倍の聴力ということに?
猫の耳は、音を聞く以外に「感情を表現する」役割があり、そこが人の耳との大きな違い。
しっぽ同様、猫の気持ちを理解するうえでの大切なチェックポイントです。
●「耳がピンと立っている」・・・注目したり、集中している。
●「耳が前方に向かって立っている」・・・警戒や緊張、攻撃的になっている。
●「耳が後方に倒れている」・・・不安や恐怖を感じている。
猫は可聴域が高周波帯なので、高い音のほうが聞き取りやすいと言えます。猫がなつくのが必ずしも声のせいかどうかはわかりませんが、女性のほうが男性より声が高いので、耳に心地よく安心できるのかもしれませんね。
猫は平衡感覚が優れており、内耳の前庭器官で、体の回転や頭の傾きを敏感に察知して、その情報を反射中枢に伝えます。実験によれば、猫は、地面から60cm以上の高さがあれば、背中から落下しても、くるりと体勢を立て直して足から着地できるそうです。
もっとも猫にも個体差があるので、愛猫で実験するのはやめておきましょうね。