"http://www.w3.org/TR/html4/loose.dtd"> 愛犬を守るデンタルケアとは?

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愛犬を守るデンタルケアとは?

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昨今、様々なデンタル用品が登場し愛犬のデンタルケアへの関心も高まっていますが、「口を触らせてくれない」「歯磨きなんてとてもムリ!」「無理やりにでもやらないとダメ?」と困惑する飼い主さんも少なくありません。
今回は、犬のデンタルケアの重要性と家庭でできるケアの方法についてのドクターズアドバイスをお届けします。

歯周病はなぜ怖い?

見えない所で進行している病気

 犬の口内環境は人とは異なり、虫歯がほとんど無いかわりに、人よりずっと歯周病になりやすいという特徴があります。そのため、犬のデンタルケアは歯周病対策が中心となります。歯周病は、歯だけの病気ではなく、歯と歯肉(歯茎)の隙間(歯周ポケット)で起こる病気です。見えている歯はきれいでも、外から見えない歯肉の中で進行していることもある厄介な病気なのです。獣医師でもレントゲンを撮らないときちんとした診断は難しい場合もあります。

病害が口内だけに留まらない場合も

 歯周病を起こす細菌は歯肉だけに留まりません。歯根部から深部に感染が広がり、上顎だと口腔と鼻腔の間の骨が溶けて、鼻血が出たり、下顎では顎骨を溶かしてしまい最終的には骨折してしまうことも。
 また、細菌が血流に乗って全身に運ばれ、心臓や腎臓などの大切な臓器に悪影響を及ぼすことも考えられます。実際、歯周病がひどい子は、心臓病になる確率が高いというアメリカの統計データも報告されています。

歯周病になりやすいのはどんな子?

以上のような子たちは歯周病リスクが高いとされますので、より気配りをしてあげましょう。

犬に多いお口のトラブル

歯周病

犬のお口のトラブルの中でも最も多い疾患。炎症の進み具合によって「歯肉炎」と「歯周炎」に大別されます。

歯肉炎

初期段階の病状。歯周ポケットに食べかすなどたまり細菌が繁殖し始める。歯は白から黄色、茶色っぽくなり、歯肉は赤く腫れてくる。

歯周炎

 歯肉炎が進行し、歯肉以外にも炎症が及んでいる状態。歯周ポケットが深くなり、細菌はさらに繁殖しバイオフィルム(※)を作りだす。歯肉の赤みと腫れは増し、歯垢や歯石も増え、口臭が感じられるようになる。場合によっては痛みが伴うことも。
(※)バイオフィルム:ぬるぬるした粘膜状の物質、バリアの役割を果たしている。抗生物質などでは破りにくく、薬での治療が困難とされる一因。

歯肉炎,歯周炎

破折・咬耗はせつ こうもう(摩耗)

破折

破折とは歯が折れてしまうこと、咬耗とは歯が磨り減ってしまうことです。動物の骨や蹄などの硬いおやつやガム、木製等の硬いおもちゃが原因となりやすく、これにより神経がむき出しになると、痛みで何も食べられなくなってしまうこともあります。硬すぎる玩具を与えないよう十分注意してあげてください。

乳歯遺残にゅうしいざん

成長とともに抜け落ちるはずの乳歯が、歯が生え変わる時期をすぎてもそのまま残ってしまっている状態。原因は明らかになっていませんが、放置しておくと歯垢が付きやすくなり、歯周病リスクは高まり、噛みあわせにも影響したり、折れて根本が残ってしまうと腐ってしまうことも。7か月齢くらいで一度獣医師さんにチェックしてもらいましょう。

眼窩下膿瘍がんかかのうよう

眼窩下膿瘍

口腔内の炎症が深部に広がり、上顎の骨も溶かしてしまい、眼の下あたりが腫れあがり、さらに進行すると膿が出てくる病気。

口鼻瘻管こうびろうかん

主に犬歯周辺の炎症が進行し、上顎の骨を溶かして鼻と貫通してしまう。口腔内の細菌や食べかすなども鼻に入り込み、くしゃみや鼻血がでることもあります。

※一見、お口のトラブルではなくても、鼻水が多い、鼻血が出た、食べ方がおかしい、顔が腫れた、膿が出てきたなどの症状の原因が歯周病となっている場合も少なくありません。

飼い主さんの誤解や思い込みが悪化の原因に・・・!

歯周病を引き起こすのは歯石ではなく歯垢

「スケーリング(歯石除去)をしているから大丈夫」とお考えの飼い主さんもいらっしゃるようですが、歯の上の歯石を取り除くだけでは歯周病は治りません。なぜなら、歯周病を引き起こしているのは、歯石ではなく歯垢だからです。歯垢は単なる食べかすと思われがちですが、その約70%は細菌です。それが歯周ポケットの中で増殖し、歯周病を引き起こします。
 歯垢が石灰化したものが歯石ですが、その状態では、すでに細菌は死滅しており、歯石自体が悪影響を及ぼすことはありません。ただし、歯石が付着すると歯の表面に凹凸ができて歯垢が付きやすくなり、細菌が繁殖しやすい環境になるので、除去すること自体は大切な事です。

麻酔のリスクより、治療が遅れることの方が危険度は高い

 根本的な歯周病治療では概ね麻酔をかけて行います。中には、麻酔のリスクを必要以上に恐れて、治療をためらう飼い主さんも少なくありません。もちろんリスクはゼロではないので、処置が必要な場合は若くて元気なうちに行った方がいいでしょう。
 しかし、麻酔をするときは事前に検査をして、健康であることを確認してから行いますし、万一、麻酔のかけ始めに体調が悪そうなら中断することもできます。麻酔を恐れすぎて、歯周病の処置を遅らせてしまう事は、愛犬の体にとっての危険度を高めてしまっているとも言えるでしょう。
 最近では、無麻酔スケーリングを行う所もあるようですが、しかし、前述した通り、歯石を取り除くだけでは歯周病の根本治療にはなりません。見た目がきれいになったことを、治ったと思い込まずに、しっかりと獣医師さんに相談しましょう。

きちんと予防、きちんと治療することで愛犬を歯周病から守れます

 歯周病はデンタルケアの実践で、ある程度予防できる病気です。
 犬の歯垢は約4日間で歯石に変わります。歯石になってしまうと、歯みがきするだけでは取れなくなります。できれば毎日こまめにお家でデンタルケアをしてあげましょう。
 しかし、歯周病は「見えない所で起こる厄介な病気」です。セルフケアだけでなく定期的な動物病院でのチェックなど、かかりつけの獣医師さんにも十分相談して、適切な処置と正しいデンタルケアで愛犬の健康を守ってあげてください。

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