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獣医師さんのひとくちコラム 「ワクチンアレルギー」の話

獣医師のひとくちコラム

ワクチンを接種したら動物がぐったりとなった、アナフィラキシーだ。これは、飼主にとっても獣医師にとってもショッキングなことで、当の動物にとって非常につらいことでもある。感染症予防の重要性や必要性は獣医師が切実に感じるものであり、飼主にとっても望むことであるのは議論の余地がない。しかし、ひとたびワクチンアレルギーを経験したらどうだろうか。接種することのデメリット(ワクチンアレルギー)と接種しないことのデメリット(感染の危険性)の板ばさみにあい、おおきなジレンマに悩まされることになる。ならばどうすればよいのだろうか。

 少なくとも現状のワクチンの使用以外に予防の方法がない以上、何とかアレルギーを起こさせずに接種する手段はないものだろうかと試行錯誤するよりない。「ワクチンのメーカーを代えてみる」「9種、8種、7種、5種、4種、2種と多価ワクチンの種類も様々なため、予防の必要な感染症を見直してみる」「抗ヒスタミン薬やステロイドなどで前処置をする」最終的に冒頭の言葉の通り「感染症の発生率と重篤度」「効果と安全」「個々の動物の健康・福祉とライフスタイル」のバランスをとる以外には正解はないことが良く分かる。

 何よりもワクチンアレルギーが起きてしまったら、迅速な対応と処置ができるように、接種後に十分な時間的な余裕を持つことが肝要だ。ワクチン接種後しばらくは動物病院で休憩する。接種はなるべく午前中に受ける。接種後に自分の予定を入れない。接種した日は極力安静にする。などなど。

 将来、ワクチンアレルギーの問題も解決される日が来るだろう。それまでに知っておかなければならないのは、「ワクチンでアレルギーが起きる可能性はゼロではない」という事実なのだ。正確な統計はないが1万5千頭に1頭の確率といわれるワクチンアレルギー。接種後の観察と主治医との良好な連携で乗り越えていくべき問題に違いない。

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