監修:もみの木動物病院 村田香織先生
今回から2回にわたり、既に猫を飼っている家庭で、新たにもう1匹猫を飼う際の注意点について取り上げていきます。
皆さんのお宅には猫が何匹いますか?
かつて私が『ペピイ読者で、室内だけで猫を飼っている愛猫家150名』を対象にアンケートを取らせていただいたときには、実に62%もの方が『1匹だけで飼っている』とお答えになりました。
かつて、猫は単独生活をする動物で、大人になれば繁殖期以外は1匹で生活する、と考えられていました。しかし、現在では猫は考えられていたよりもずっと社会性があり、例え野良猫であっても社会的相互作用のあることがわかっています。
ですから室内で飼われていて、他の猫と交流する可能性のない場合には1匹で飼うよりも2匹で飼うことをお勧めします。その理由は以下のようなものです。
1, |
子猫の心身の発育を促し、問題行動を予防する
子猫の時には心身の発達のためにも、他の猫とのふれあいが必要です。この時期にその対象となる相手がいないと、飼い主さんに噛みつく、引っ掻くといった問題行動がよく見られます。複数で飼うことによって、こうした問題行動は明らかに減少します。 |
2, |
遊びや運動量を増やし、ストレスを解消する
大人になってからでも他の猫との交流がないと、不活発な生活になりがちです。特に室内で飼われている猫では同居の猫がいるといないとでは、活動性は大きく異なってきます。人間に人間同士の付き合い方があるように、猫にも猫特有のコミュニケーションの手段があります。猫らしい行動を引き出すには、やはり猫同士が一番よいのです。 |
3, |
飼い主さんのため、そして猫のために
猫同士がじゃれあったり、追いかけっこをしている姿を見ることはとても楽しいことです。また、留守をさせるときでも2匹でいれば寂しい思いをさせることも少なくなります。 |
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しかし、安易に新しい猫を招き入れると、そこでさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
猫にとって、新しい猫が増えるということは一大事なのです。案外簡単に仲良くなってしまうこともありますが、なかなか馴染めずにけんかを始めたり、不適切な場所での排泄といった問題行動を起こし始める場合もあります。
屋外への出入りが自由な生活をしている猫であれば、最悪の場合には前からいる猫が出て行ってしまうこともあります。
ですから、新しい猫を飼うときには猫の年齢や性別、また、猫同士の社会化ができているかといったことを十分に考慮する必要があります。そして、新しい猫を家に招き入れる際には、以前からいる猫の様子を見ながら慎重に慣らしていくようにする必要があります。
猫の組み合わせ |
注意点 |
子猫同士 |
猫の年齢が若ければ若いほど早く仲良くなります。特に社会化期の子猫同士ならばすぐに仲良く遊び始めますが、少し大きくなっていたら最初のうちは多少警戒するかもしれません。それでも、子猫同士であれば間もなく一緒に遊び始めるでしょう。ですから、あなたの猫が、まだ子猫で、将来2匹で飼いたいと考えている場合には、できるだけ早い時期にもう1匹を見つけてあげると苦労しなくて済むことになります。 |
成猫と子猫 |
この組み合わせの場合、子猫の方はほとんどの場合無邪気に成猫に近づいていくのですが、成猫の反応は様々です。時には親子のような関係が生まれることもあります。特に出産経験のある雌猫であれば、離乳前の子猫の面倒をかいがいしく見てあげることがあります。
逆に子猫がやんちゃ盛りの年齢なら、成猫が友達のように相手になってあげることもありますが、子猫がしつこくちょっかいをかけていきますので、うるさく感じて威嚇することが多いようです。こんなとき飼い主さんは成猫を叱りがちです。しかし、これはごく自然な反応ですし、叱ることで子猫に対する印象が悪化してしまいますので、叱ってはいけません。こんなときには子猫があまりしつこくちょっかいをかけすぎないように、子猫が上がれないような高い場所に成猫の休めるスペースを作ってあげたり、成猫がのんびり休めるように『子猫立ち入り禁止』の部屋を作ってあげてもよいかもしれません。こうすることで子猫がいないときに、成猫が飼い主さんに甘えられる時間を持ってみてください。 |
成猫同士 |
発情中の雌猫と未去勢の雄猫という組み合わせは別として、お互いに成猫同士の場合には少なくともしばらくの間は緊張状態を覚悟しなければばなりません。できることならば、こうした組み合わせは避けたほうが無難ですが、どうしてもそうしなければならない場合には、新しい猫の導入は慎重かつ段階的に行う必要があります。 |
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