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これはスプレーというマーキング行動のひとつで、通常の排尿とは違い、コミュニケーションとしての意味があります。性成熟した雄に多い行動ですが、雌でもすることがあります。この行動は去勢避妊手術によって雄は90%、雌では95%程度が改善されると言われています。家庭内に複数の猫ちゃんがいる場合、スプレーを行っている猫の手術のみで改善しない時には同居している猫ちゃんの手術も行うようにします。去勢あるいは避妊手術を行っても解決しないケースでは同居猫や飼い主との関係、近隣に住む猫との関係など猫ちゃんにとってストレスや不安の原因になっているものを見つけ、できるだけ改善するようにします。
新しい家具や買ったばかりの鞄、クリーニングした洋服など自分のテリトリー内に持ち込まれた新しい匂いのする物に不安を感じてこれに排泄する場合もあります。このような場合には、しばらくそれらの物に近づけないようにするか、まず猫の入らない部屋に置いて、匂いを和らげましょう。またお客さまの洋服や持ち物に排泄する場合もありますので、特に家で猫を飼っている人では注意が必要です。
トイレの場所が落ち着かない場所やアプローチしにくい場所である場合、猫砂の素材や 匂いが気に入らない、トイレが汚れていたなどトイレそのものに問題がある場合もあります。(*これら、トイレそのものが原因と考えられる場合には次号で紹介するステップ3「快適なトイレを用意する」を参考にしてください。)
飼い主さんがいなくて不安だった事が最も考えられる原因です。飼い主との結びつきが非常に強い猫では飼い主が留守をするとトイレ以外の場所、特に飼い主の衣類やベットなど飼い主の匂いのついた場所で排泄することがあります。このような場合には留守をする時には寝室に入れないとか衣類は猫が排泄できる場所に置かないなどの注意も必要です。また不在の時間が長い場合にはその間にトイレが汚れていたために、そこで排泄することを嫌い、他の場所で排泄した可能性も考えなければなりません。
結婚などの理由で家族構成が変わったり、赤ちゃんが生まれる、新しいペットが増える、引っ越したなどというような変化があった場合では、新しい家族や環境の変化に対する不安から不適切な場所で排泄しはじめた可能性があります。通常は環境の変化にも時間とともに慣れてくるものですが、この際トイレの失敗を叱ったりして不安材料を増やし、悪循環に陥らないように注意しましょう。また新しい家族のメンバーと良い関係を築いていく努力も必要です。
新しく猫を飼い始めた場合には、トイレの数を増やす必要があります。室内で飼われている猫のトイレの数は、最低でも猫の数だけ必要と言われています。他の猫の排泄した後のトイレを使うことを嫌う場合もありますし、トイレが汚れるスピードも早くなるからです。トイレ以外の場所で排泄しはじめた場合に、原因に関係なくトイレの数を増やすことが役立つ場合が多いとも言われています。
同居している猫同士の仲が悪い時には、できるだけけんかの原因となるような状況を避けるようにします。たとえばお気に入りの場所をめぐってけんかになるのであれば、同じような場所をもうひとつ作ってあげましょう。猫同士の関係がどうしてもうまくいかない場合には、隔離する必要があるかもしれません。同居している猫だけでなく、近所に住む猫が庭先にやってくることが原因となる場合もありますので、玄関先に野良猫用に食事を置いておくなど、他の猫が近くにやってくるような状況は避けるようにしましょう。また近所の猫が見える窓があればそこから外が見れないようにすると効果があるとも言われています。また生活環境全般を見直し、猫ちゃんができるだけ快適に暮らせるように工夫しましょう。
一般的に家庭内で飼っている猫の数が増えるほどスプレーの発生率は増えると言われています。同居猫同士のトラブルは対応が難しい場合が多いので、新たに猫を迎える時には相性も充分考慮に入れて、慎重に導入することも大切です。
どうしても原因がわからないこともあります。たとえばたまたま猫がトイレに入っている間に大きな音がしたり、犬や子供におどかされたなど猫が怖がることが起こり、トイレとその時の恐怖を関連付けてしまって、トイレを使わなくなってしまうこともあります。 またもともとの原因が今はなくなっているにもかかわらず、トイレ以外の場所で排泄するという習慣だけが残ってしまっているような場合もあります。たとえばたまたま飼い主さんが不在がちの時期があり、トイレが汚れていてトイレ以外の場所で排泄する習慣ができてしまい、飼い主さんがトイレをこまめに掃除するようになったあとも、その習慣が残ってしまっているような場合、現在は治っているが過去に起こした結石症などの体の痛みとトイレを関連づけでしまうようなケースでは原因がわかりづらいかもしれません。
原因がわからない場合には、猫ちゃんの生活環境や飼い主や同居動物との関係を見直し、ストレスになっていると思われることを減らし、できるだけ生活の質を高めてあげることで改善する場合があります。
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