愛犬のいる暮らしにすっかり慣れ、いつものように過ごしていたら、ふと「あれ?もしかしたら年のせい?」と気づかされる瞬間が来ます。最近は老犬ならではの悩みを抱える飼い主さんが少なくありません。 |
10歳のラブラドールです。もともと食いしん坊だったのですが、最近は食べても食べても欲しがるようになって困っています。どう対処したらいいのでしょうか。
食べ物への執着心が強くなるのも老犬にありがちな現象のひとつですが、過食は要求吠えや肥満につながり、さらには肥満から病気を誘発しかねません。とはいっても、老犬に食欲を我慢させることは至難の業です。1日に与えるフードの分量を変えず、食欲を満足させてあげるのが最善の方法といえるでしょう。その具体策をいくつかご紹介しましょう。
過食の犬はあっという間にフードを平らげてしまいがちなので、まず試していただきたいのは時間をかけて食べさせることです。それにはフードを与えるときの容器にひと工夫。箱や缶の中にフードといっしょにテニスボールやおもちゃなどを入れて与えます。こうすると犬は鼻先で障害物をどけながらフードを探して食べることになるので時間がかかります。
最近は市販のトリーツホルダーや犬用知育玩具にもさまざまな種類がありますので、それらをフードボウル代わりに食事のときに利用してみるのもおすすめです。 また、1回に与える量を数回に分割して与えてみるのもいいでしょう。知り合いのワンちゃんの場合、1回分を小分けにし、食べ終わってまだ欲しがったら与え、また食べ終わって欲しがったら与え、を10回くらい繰り返し、最後に「もうおしまい」といったら納得してそれ以上吠えなくなったといいます。
早朝ご飯が欲しくて吠えるようになった犬が、朝ごはんの時間を以前より早くしただけでおさまった、という例もあります。
犬には個体差がありますが、きっとより満足する食べ方があるはずです。食べるのに時間がかかる与え方にする、回数を増やす、食事時間を早くする、といった方法をいろいろ組み合わせて試してあげてください。従来のように決まった場所で決まった時間にフードボウルで与えないといけないという固定観念は取り払い、どんな方法であれ、与えたフードの合計量が1日の分量を上回らなければOKという大らかな気持ちで始めましょう。
老犬用のフードにしているのですが、最近残しがちです。年のせいで食欲が落ちてきているのかと心配です。
ワンちゃんの歯を奥まで見てみてください。擦り減ったり抜けたりしていませんか。もしそうなら食欲がないのではなく、フードを噛みにくいだけかもしれません。老犬用といってもドライフードは固くて乾いているので、ぬるま湯でふやかして与えてみましょう。それだけで食べるようになった例もよくあります。
噛む力とともに食べ物を飲み込む力(嚥下作用)も弱くなっていることがあります。その場合、ふやかして軟らかくしすぎるとかえって飲み込みにくい場合があります。そんなときには片栗粉を溶いてトロミをつけたお湯をフードに混ぜてみましょう。多少の固まりがあり、ツルリと飲み込みやすくなります。近ごろは老犬用のゼリー飲料なども市販されていますので試してみるのもいいでしょう。
歯が弱っていないなら、食欲自体が減退しているのかもしれません。食欲を増進させるためにフードの銘柄を変えてみる、犬用チーズなどの嗜好品を振りかける、など食をそそる工夫をしてあげましょう。好き嫌いをさせたくないといっても、老犬なら食欲を増すことを優先させてもいいのではないかと思います。獣医師などの専門家に相談して手作り食に変える方もいます。
また、食欲は単に食べ物だけでなく気分によっても左右されます。フードを投げて遊びながら、若いころにしつけ教室に通っていたコなら、しつけごっこをしてそのごほうびとしてフードを与えるなど、楽しく食べられることを考えてあげましょう。お散歩好きなら、近くの公園まで出かけて、ピクニック気分で食事をするのもいいでしょう。また、仲良しのワンちゃんと会っていっしょに食べるのもおすすめです。
いろいろ工夫しても食欲が戻らないなら、病気が原因している可能性もあります。歯はしっかりしていても歯肉炎になっている場合もありますので、一度、動物病院で診察してもらう方が賢明でしょう。