ペピイの読者の皆さんこんにちは。今回は子犬や子猫の飼い主さんにぜひ実行してもらいたい社会化プログラムについてお話します。 |
前述のように子犬や子猫はいわゆる社会化期に自分の仲間を認識し、周囲の環境に馴染んで行きます。そして成長とともに仲間以外のものを受け入れにくくなり、見知らぬものにも警戒心を持つようになります。ですから社会化期に十分な経験をしていないと、成長してからさまざまな問題行動を起こすようになることがあります。
本来野生の暮らしの中では仲間として認識するのは同種動物だけですし、慣れなければならない周りの自然環境もそれほど多様性に富んだものではありません。野生動物なら限られた行動範囲の中だけで見聞きしたものを受け入れるだけでも大きな問題はありません。
しかし我々人間のペットとして暮らす犬や猫たちはどうでしょう?人間の家族の一員として犬や猫などのペットが生涯にわたって経験しなければならないことは、あまりにも多様で複雑です。したがってもっともさまざまなものに慣れやすい社会化期には一日一日がとても大切です。
社会化期を含め、子犬や子猫の時期には次のような事に注意しながら育ててあげてください。
子犬や子猫の教育の中で一番大切なことは、人を怖がらないように育てることです。犬や猫が人間社会で生活していく以上、人との接点なしに生涯を終えることはできません。動物の場合、怖いという気持ちが攻撃性の引き金になる場合が多いので、人を怖がるということは人を攻撃する可能性を秘めているということになります。
人間にうなったり咬んだりする犬や猫になってしまうと一緒に生活するのは大変ですから、子犬や子猫の間に、人に慣らしておくことはとても大切です。この時期に人と接する機会が少なかったり、特定の人としか接触していないと、将来知らない人を怖がるようになることがあります。
犬の繁殖場などで生まれた子犬は人との接触が少ないために人に対する警戒心が強くなってしまう場合があります。また、女性としか接触しなかった子犬が男性を怖がるようになったり、子供と接する機会がなかった子犬が子供に攻撃的になる例もあります。
幸い社会化期の子犬や子猫は誰が見ても一番かわいい時期です。多くの人が子犬や子猫を見て微笑みかけ、優しく接してくれますから、人に慣らすのにとても好都合です。この時期にできるだけ多くの人と楽しく接する機会を作ってあげましょう。
最近では犬も猫も複数飼いする方が増えたように思います。複数飼いの場合、1頭目よりも2頭目の方が同種動物に対して社交的に育つようです。それは人間の家族だけに囲まれて育つ1頭目に比べて2頭目は同じコミュニケーション手段を持つ同種の動物が傍にいるからだと思います。
子犬や子猫は親兄弟とのふれあいを通じてその動物種特有の社会的行動の基礎を築きます。ですからあまり早くに親や兄弟と離してしまうと、犬でありながら、他の犬とうまくつき合えない犬、猫でありながら他の猫とコミュニケーションできない猫に育ってしまうのです。
たとえば人にはとても友好的なのに、他の犬に会うと攻撃的になったり、ひどく怯えてしまう犬もいます。飼い主さんは「この子、自分のこと犬だと思ってないのね」なんて笑っていますが、やはり犬に生まれながら他の犬とコミュニケーションできないのは残念なことです。
犬同士のふれあいが充分できている犬たちは、社交的で、上手にけんかを避ける技術も備えています。そのような犬達が生き生きと仲良く遊んでいる姿を見るのは飼い主にとっても楽しいことです。
犬を犬嫌いにしないためには、まず第一に母犬や兄弟犬と生後7~8週間は一緒に過ごさせること、次に母犬や兄弟達と離れて新しい家に行った後も、できるだけ他の犬と一緒に遊ぶ時間を作ってあげることです。
動物病院などで行われているパピークラス(子犬のためのしつけ教室)に参加するのも社会化のためにとても良い機会です。さらに社会化期を過ぎてもさまざまな犬と楽しく過ごす経験を重ねる事で、犬との付き合いが上手な成犬に成長します。
猫はもともと犬ほど社交的ではありませんが、同様のことが言えます。ただ猫を安全に飼うには室内飼育をする必要がありますので、なかなか他の猫と接する機会を与えることができません。知り合いの猫ちゃんと遊ぶ機会を作ったり、2頭で飼ってあげると良いと思います。成猫になってからでは慣らすのに時間がかかる場合が多いので、できるだけ幼い時期から会わせるようにすることが大切です。
子犬や子猫はまわりの環境に対しても柔軟で、この時期に馴染んだものには大人になっても過剰な反応を起こさなくなります。従ってこの時期にいろいろなものに慣らすことでその後に起きるさまざまな環境中の刺激を受け入れやすくする事ができます。
たとえば自動車、バイク、電車の音や雷の音、花火の音などさまざまな音に対する恐怖症を持つ犬は少なくありません。幼い時期からこれらの音に慣らしておくとこのような恐怖症の予防効果があると言われています。音だけでなく、走っている自動車、乳母車、バイク、自転車を見せたり、自動車に乗せる、人込みの中を歩く、といった今後子犬が人間と暮らす上で、必ず出会うことになるような日常的な刺激に、幼い時期に慣らしておく事がさまざまな問題行動の予防にもなるのです。子犬の様子をよく見ながら、怖がるようなら無理をせず、少しづつ慣らしていきましょう。
猫では犬のように外出する機会は多くはありませんが、動物病院や引越しなどのための移動など何らかの理由で外出しなければならないことは必ず起こるものです。そのような場合にパニックにならないように、子猫の間から慣らしておいてあげることが大切です。
また子犬や子猫が将来必ず行くことになる動物病院、美容院、ペットホテルなどにも連れて行き、そこで楽しい経験(たとえばご褒美をもらう、撫でてもらうなど)をして帰ってくるようにすれば、これらの場所にも慣らすことができます。
子犬や子猫の時期の経験は、これから彼らが生きていく上で、出会うさまざまな困難に打ち勝っための、免疫を与えてくれます。これはちょうど伝染病に打ち勝っために接種するワクチンのように、彼らの「こころ」を守ってくれるのです。
残念ながらどんなにたくさんの人や動物、様々な刺激とふれあう機会を作っても生まれつき警戒心の強い性格を、全く警戒心のない気楽な性格に変えることばできません。それでもできるだけ、多くの機会を与えてあげることで、多少時間がかかっても人や他の動物と仲良くできるように育てることはできます。
特に怖がりの性格の子犬や子猫の社会化プログラムで大切なことは「楽しい経験」をさせてあげるということです。「嫌な体験」は逆効果となりますので、子犬や子猫の様子を良く観察しながら、注意深く慣らしてあげてください。
人間の子供と比べ、子犬や子猫の時期は本当にあっという間に過ぎてしまいます。一日一日を大切に、子犬や子猫のために良い体験をさせてあげることを心がけてみてください。また、子犬や子猫の時期を過ぎてもずっと続けていく気持ちで取り組んでくださいね。
実際に行われているパピークラスの様子です。パピークラスでは普段出会うことの少ない他の子犬と遊んだり、飼い主さん以外の方に撫でてもらう、フードおやつを与えてもらうなど、普段なかなか経験できないいろいろな体験ができます。 左の写真は動物病院の看護師さんからおやつをもらっているところです。 |
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子犬同士でも遊びを通して同じ犬同士でのコミュニケーションの取り方を学びます。 |
飼い主さん以外の他の人(上の写真では男性の参加者)に撫でてもらったり、フードやおやつを与えてもらっているところです。 |
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