猫の皮膚とその付属器(被毛、皮脂腺など)は外部環境から体の内部を保護しています。猫の皮膚の厚さは0.4~2mmあり、毛のない部分(無毛部:肉球や鼻)では被毛で覆われていない分、他より皮膚が厚い傾向にあります。
皮膚は大きく表皮・基底膜・真皮・皮下結合組織と分けることができ、意外と複雑な構造をしています。
では、「皮膚」はどのような役割を持っているのでしょうか?それぞれの機能に分けてお話してみましょう。
外界と真先に接触する皮膚は温度や圧力、痛み、痒みといった様々な感覚を感知する 機能を持っています。 |
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被毛は季節毎に生え変わったり、被毛の間に空気を舎ませたりすることで、温度調節に一役かっています。皮膚の皮下結合組織は脂肪に富んでいるため、寒さから体を守っています。また、真皮層は血管が豊富で、これが広がったり、縮んだりしながら温度調節を行っています。 |
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被毛や皮膚は、他のものにぶつかったり、引っ張られたりすることなどの、機械的な力から体全体を保護する働きをします。 |
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被毛は、雨などが皮膚にしみ込んでこないように守っています。特にノルウェイジャンフォレストのような猫種では非常に耐水性(水を弾きやすい性質)の被毛を持っています。 |
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緻密で次々と新しくなっている表皮は、細菌や真菌などの各種病原菌や外部寄生虫に対しての物理的防御壁となっています。 |
皮膚病は様々な原因によって引き起こされます。以下に代表的な皮膚病の原因となるものを紹介します。
猫の代表的な外部寄生虫には、特にこの季節では「ノミ」があげられます。ノミは吸血するため、皮膚を傷つけ、皮膚のバリアー機能を破壊し、細菌による二次感染などを起こしやすくします。 |
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細菌や真菌、ウイルスといったさまざまな病原菌の感染によって起こります。 |
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ノミや食べ物、空気中に含まれる花粉やハウスダスト、時に人のフケなどが原因でアレルギーを起こしてしまうことがあります。アレルギー症状は、呼吸器症状(くしゃみ・咳)や消化器症状(下痢・嘔吐)としてでることもありますが、皮膚に症状が認められることもあります。
通常、体を外界の病原菌から守るために働いている免疫細胞が、自分自身のある特定の細胞をよそ者(異物)と勘違いし、その細胞を攻撃することがあります。これによって起こる病気を自己免疫性疾患といい、これは皮膚や腎臓など様々な部位で生じます。
犬ではホルモン異常から皮膚病を生じることが多いのですが、猫ではホルモン関連性の皮膚病は少なく、まれに副腎皮質機能亢進症で皮膚病が認められることがあります。
その他、体内の臓器に腫瘍ができた場合などに脱毛や掻痒がみられることがあります。
好酸球性肉芽種症候群、リンパ球形質細胞性皮膚炎などといった、原因がなかなか明らかにならない皮膚病もあります。これらは、病理組織学的検査という皮膚を少し切り取ったりする検査で診断することができます。また、対症療法ではありますが、症状がひどくならないようにコントロールしていくことも可能です。
※この他に、皮膚腫瘍や行動異常が原因で生じる皮膚症状などがあります。時に、なかなか原因がつかめない皮膚病がありますが、これを診断・治療していくには、根気良く検査のステップを踏んでいく必要があります。
皮膚病の症状には、脱毛やフケの増加、痒み、皮膚の赤みや腫れなどがあります。これらは、日々、愛猫をブラッシングしたり、撫でたり、またマッサージをしてあげることで早期に異常を発見していくことができます。日常的な優しいブラッシングは皮膚を丈夫にし、生理的な脱毛を促す効果もありますので、ぜひ行ってあげてください。
ただし、脱毛といっても、生理的な脱毛として季節が変わる頃に冬毛から夏毛、夏毛から冬毛にかわるものもあります。これは全身の毛がほぼ均一に抜けていきます。意外に多く抜けるので、初めて猫を飼った飼い主さんは驚かれることも多いのですが、痒がったり、皮膚が赤くなったり、局所的にハゲたりということがないようでしたら特に心配はないでしょう。
皮膚に痒みや赤みがある、局所的な脱毛や全身的なフケの増加などが見られる場合には、早めにかかりつけの動物病院で診察を受けられることをお勧めいたします。その時は、全身の健康状態(食欲や飲水量、排便・排尿状態)だけでなく、その皮膚の異常に、いつ頃気づいたか、痒みはあったか、自分でしきりに舐めていないか、また、最近の食事内容の変化や敷物や家庭環境に変化がなかったかどうか、などをチェックし、主治医の先生にしっかりお話しましょう。
皮膚病くらいで、と侮らず、しっかりした検査が必要な時もあると認識し、早期治療のために、早期発見を愛猫のために心がけてくださいね。