健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

春から夏の健康管理

DOG

狂犬病の予防注射を忘れずに

 狂犬病の予防注射は、毎年1回、集合注射会場か動物病院で必ず受けてください。
 狂犬病という名前からは犬だけにうつる病気と思われがちですが、犬だけでなく猫やアライグマ、スカンク、コウモリなどすべての哺乳類に感染する可能性があり、人間も狂犬病ウィルスを保有する動物に咬まれたり、引っ掻かれたりすると感染する可能性のある人獣共通感染症で、いったん発病してしまうと現在の医学では治療方法がなく、致死率が100%の病気です。
 1957年以降、日本国内では狂犬病の発生はありませんが、世界でも狂犬病が根絶されているのはオーストラリア、イギリス、台湾、ハワイ等一部の国や地域に限られており、アジア(中国や韓国も含め)、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど多くの地域や国では現在も狂犬病が発生しています。これらの地域では犬や家畜だけでなく多くの野生動物にも狂犬病の感染がみられ、世界保健機関(WHO)によると感染動物に咬まれた人のうち、およそ年間3万~5万人もの人が命を落としていると報告されています。
 万一、日本国内で狂犬病が再上陸した場合、犬が人へ狂犬病をうつす感染源となる可能性が一番高いと考えられます。そのため、できるだけ多くの犬が狂犬病の予防接種を受けておくことで、狂犬病が日本に侵入した時にも、人間ヘの影響を未然にし防ぐ手だてとなりますし、愛犬だけでなく私たちの暮しを守ることにもなります。
 皆さんも愛犬ヘの狂犬病の予防接種は必ず受けさせてください。

登録を済ませておきましょう。

 生後90日を過ぎた犬は、各自治体へ登録の申請をする義務があります。現在は終身登録制のため、初回の登録を済ませておけば、翌年以降、改めて更新する必要はありません。ただし、飼い主の所在地変更や犬の死亡時には届け出が必要です。
 今年新しく子犬を迎えた方、まだ登録を済ませていない飼い主さんは、愛犬の「登録」を忘れずに済ませておきましょう。

DOG&CAT

暑くなってくると食欲も少し落ちてきます。

 フードの保管、食べ残しには注意しましょう。これからの時期は湿気も多くなり、徐々に暑さも増していきます。缶詰なら、一度開封したものはその都度使い切る、また、ドライフードも湿気の多い場所や、高温になる所に置いたままにしないように気をつけて、口に入れる食べ物の保管・管理には十分気をつけてください。
 暑くなってくると、犬や猫の食欲もやや落ちてきますので、食べ残しはこまめに掃除して食器も清潔に保ちましょう。そして、水専用にもうひとつ食器を用意し、新鮮な水はいつでも飲めるようにしておきましょう。

飼育環境も清潔&快適に

 梅雨のジメジメした時期は、天気の良い日を選んで犬小屋やその周辺の清掃、犬小屋内に敷いているマツなどの洗濯や虫干しをしましょう。また、普段使っている食器もこまめに洗い、首輪、リードなども清潔にしておいてあげましょう。
 犬や猫と暮らしていくには、抜け毛やにおい、排泄物の後始末を避けることはできません。「犬や猫がいるからしかたがないわ」なんて思ってはいけませんよ。清潔で快適な環境作りを工夫してください。

毎日のブラッシングで被毛の手入れを

 犬種や猫種によっても若干の差はありますが、春から夏にかけては換え毛の時期でもあり、よく毛が抜けます。抜け毛の対策としては、ブラッシングと掃除、これしかないようですね。
 毎日場所を決めてブラッシングしてあげましよう。ブラッシングは被毛の汚れを取り除いたり、毛並みを整えたりするだけでなく、皮膚へのマッサージにもなり、血行をよくし新陳代謝を促す効果もあります。
 ブラッシングは犬や猫と触れ合う機会でもありますので、同時に毛や皮膚の様子をみてあげましょう。耳の中、首の回り、尻尾の付け根、お腹など体全部をくまなくみてあげて、毛が抜けていないか、外部寄生虫(ノミやダニなど)が皮膚についていないか、刺されていないかなどチェックしてあげましょう。

車の中には絶対閉じこめないで

熱中症には気をつけて
 自動車に乗せて一緒に外出する時は、少しの時間でも車内に犬や猫を残したまま車からは絶対に離れないように。海や山へ愛犬と一緒にドライブする機会もあるかもしれませんが、そんな時も要注意。大変危険です。エアコンを切った車内はあっという間に高温に達します。
 「ちょっとくらいなら大丈夫だろう」は、絶対に禁物!駐車する時は、必ず一緒に連れ出すようにしてください。(※犬や猫を車に乗せて移動する場合はリードを忘れずに用意しておき、乗り降りの時など急に飛び出したりして事故が起こらないように、必ずリードをつけてからドアを開けるようにしましょう。)
 屋外で犬を飼われている場合なら、犬小屋を風通しの良い涼しい場所に移動させてください。移動が無理な場合は、夏の暑い直射日光が当たらない工夫をしてあげましょう。
 猫の場合も、直射日光が入る閉め切った室内に入れたまま、飼い主さんが出かけてしまわないよう注意してください。

ノミの駆除と予防を

 「たかがノミくらいで・・・」と安易に考えたりしていませんか?ノミの成虫に寄生された犬や猫は、血を吸われてしまいます。ノミの吸血により貧血を招くこともありますし、ノミが吸血する時、唾液が動物の体内に入るため、この唾液に対する反応として強い痒みが生じるため、何度も引っかいてしまい化膿性の皮膚炎を起こしたり、ノミの唾液によりアレルギー性皮膚炎を起こしたりすることもあります。


犬も猫も外部寄生虫には気を付けて

 寄生虫には多くの種類がありますが、大きく分類すると胃や腸など体の内部に寄生する内部寄生虫と皮膚や耳など体表に寄生する外部寄生虫に分けることができます。この季節はノミやダニ・マダニなど犬や猫にとってやっかいな外部寄生虫の動きが活発になる季節です。寄生されると瘠みの原因になるだけでなく、皮膚病の原因になったり、様々な病気を媒介したりします。
 毎日、愛犬・愛猫の体を触って、毛が抜けているところがないか、一部分だけ赤くなっているところがないかなど、よくみておきましょう。耳の中や首の周り・お腹なども要チェックです。もし、ノミやダニの寄生がみられたら、安易に市販の薬品や駆除剤を使用せず、総合的な治療が大切ですので駆除や予防については動物病院で相談してください。

ノミが媒介する人と動物の共通感染症

 皆さんも「人と動物の共通感染症」には関心をお持ちかと思いますが、ノミが原因となって媒介される感染症も報告されています。そのうちふたつの感染症を紹介しましょう。

猫ひっかき病(バルトネラ感染症)

「猫ひっかき病」は、猫によるひっかき傷や咬まれた傷が原因となって発症する病気です。引っかかれた場所や傷口近くのリンパ節の腫れや発熱を特徴としています。この原因となる細菌をノミが媒介しており、猫の血をノミが吸うときに病原体が猫の体内に入り、その猫が引っかいたり噛み付いたりした時に今度は猫から飼い主の体内に病原体が混入するのです。猫だけではなく犬からの感染も報告されています。
感染を予防するには、ノミの徹底した駆除が必要です。


猫ひっかき病によって腫れている様子(人のわきの下の部分)
写真提供/公立八女総合病院院長 吉田博先生
瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)

ノミは瓜実条虫(消化器系内部寄生虫の一種でサナダムシの仲間である条虫)を媒介する中間宿主でもあります。
犬や猫がグルーミングの時などにノミを口にしてしまうことで瓜実条虫の感染を受けることになります。

瓜実条虫:ノミが口の中に入ってしまったりすることがあると、人間(飼い主)もこの瓜実条虫に感染することもありますので、注意が必要です。

これらのようにノミは、愛犬・愛猫だけでなく飼い主である人間にとっても注意が必要な外部寄生虫なのです。

ノミ対策は総合的な駆除と予防を/飼育環境も清潔に

 ノミ対策は、有効な駆除薬を用いて継続した駆除を実施してください。そして、ノミ成虫の駆除だけではなく、再び寄生を受けることのないように、成虫になる前の卵や幼虫の駆除、そして予防もしておきましょう。また、犬・猫が普段使っているベッドやマットなどはこまめな洗濯や清掃で飼育環境も清潔に保つよう心がけましょう。
 現在は室内で人間と一緒に生活する犬・猫も多くなりましたので、動物病院でよく相談し、この時期だけでなく1年を通した総合的な駆除と予防を継続しておこなうようにしてださい。

犬フィラリア症の予防を万全に

 犬フィラリア症は、感染した犬から直接他の犬に感染せず、蚊が感染を媒介しています。蚊が吸血する時、同時に「フィラリア」という寄生虫の幼虫を犬にうつします。そのフィラリアの幼虫が皮下組織で育った後、心臓内や肺動脈に入りこんで成虫となり(長さ15~25cm位のそうめん状の虫になります)全身にわたって深刻な症状を引き起こします。
 感染すると次第に元気がなくなる(散歩に行きたがらない、運動を嫌がる)、食欲がなくなる、などの症状がみられるようになり、セキをよくする、腹水がたまってくる(お腹が膨れてくる)、貧血・失神するなどの症状を呈して、死に至る確率の高いとても恐ろしい病気です。

犬フィラリア症は予防できる病気です

 犬フィラリア症は蚊を伝染媒体にしているため、蚊の発生時期に合わせて予防します。
 予防薬は、犬が蚊に刺されないようにするための薬ではありません。犬の体内にフィラリアの幼虫が入ってしまっても成虫になって心臓に寄生してしまう前に駆除し予防する働きがあります。
 予防薬には月に1回飲ませる錠剤タイプ、顆粒タイプ、スポットタイプ(首の後ろ部分に液状の薬を垂らす滴下式で、ノミの成虫駆除にも効果があります)、また注射による予防薬などが動物病院では用意されています。いずれも獣医師とよく相談して、予防を始める前には動物病院で必ず血液検査をしてもらってください。
 地域によって若干の差はありますが、蚊が見られなくなってからも1~2ヶ月(11月~12月頃まで)は、継続した予防が必要ですので、動物病院でよく相談し、適切な予防の実施で犬フィラリア症から愛犬を守ってあげましょう。