健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

肥満の予防と対処について

獣医師 竹澤 康子

肥満の見分け方

 肥満とは『体内の脂肪貯蔵部位(皮下や大網)への過剰な脂肪の蓄積であり、その個体の理想的な生理学的体重を15~20%以上越えるような状態』と定義されています。

こんな様子が見受けられませんか?

愛犬・愛猫の体重を量ってみよう

愛犬・愛猫の体重がどれくらいあるか、知っていますか?自宅でも定期的に体重を量って、体重の変化を記録しておきましょう。体重が増えていたり減っていたりしていないかを飼い主さんご自身がきちんと把握しておくと、健康管理にもとても役立ちます。
※正確な体重は動物病院で調べてもらいましょう。


愛犬・愛猫が以前に比べて、
あまり遊ばなくなった。
運動量も少なくなってきた
散歩にも行きたがらない。
体重が増えてきた。
体が丸くポッチャリしてきた。
歩き方がゆっくりしてきた。
動きが鈍く、体が重たそう。
 これらにあてはまるようなら、それは『肥満』のせいかもしれません。体脂肪計のないペットたちの脂肪量を測定するのはちょっと難しいですが、見て触って肥満かどうかを見分ける方法があります。
 愛犬・愛猫が立っている時に真上と横からみてややくびれたウェストラインがあるかどうか、胸のところを触った時に肋骨がわかるかどうかを確認してみてください。
 もし、ウェストラインがわかりにくい、肋骨がわかりにくい、というのであれば、「肥満」かもしれません。また、お座りをした時に背中から腰にかけての体のラインを見てみましょう。腰の部分にくびれがなく、末広がりになっているというのであれば、それはもう肥満の状態です。

 下記のボディコンディションコア(BCS)の図を参考に、あなたの愛犬・愛猫の状態がどこにあてはまるのかをチェックしてみましょう。
 BCSの数値が4や5の場合は肥満である可能性があります。(逆に、1や2の場合はやせすぎと考えられます。)

ボディ・コンディションスコア
BCS     肋骨 お腹 腰・背中
1 やせすぎ
体脂肪率
5%以下
脂肪がほとんどなく、すぐに触れる。 皮下脂肪がなく、骨格が浮きでている。 腰のくびれがかなり深くなっている。
2 体重不足
体脂肪率
6~14%
ごく薄い皮下脂肪に覆われていて、容易に触れる。 皮下脂肪がはわずかで骨格が浮き出ている。 腰のくびれが深くなっている。
3 理想体重
体脂肪率
15~24%
わずかな皮下脂肪をとおして触れる。 わずかにへこんでいる。 適度にくびれている。
4 体重過剰
体脂肪率
25~34%
皮下脂肪より触るのは困難。 平坦。 腰のくびれがなく、背中がわずかに広がっている。
5 肥満
(太りすぎ)
体脂肪率
35%以上
厚い皮下脂肪により触るのが困難。 たれ下がっている。 腰のくびれがかなく、背中が著しく広がっている。
●資料提供:日本ヒルズ・コルゲート株式会社

もうすでにあなたの愛犬が「肥満」だったら

病気が原因で肥満?

 食べすぎ・運動不足で肥満となっていることもありますが、病気が原因で肥満にみえてしまうことがあります。
 特にそんなに食べさせていないつもりなのに太ってみえるという犬では内分泌性疾患の一つである甲状腺機能低下症という病気になっているかもしれません。
 また、よく食べているから肥満になっているんだ、という場合でも副腎皮質機能亢進症という病気になったために食欲が増進して肥満となっていることもあります。

肥満が原因で体に不調があるかも

 肥満は様々な病気を引き起こしたり、悪化させたりすることはご存知ですか?「肥満でもいいわ、丸っこい姿が可愛いもの」とお考えになられるかもしれませんが、もの言えぬ愛犬・愛猫が肥満によって見えない所にダメージを受けているかもしれません。
 もしも、あなたの愛犬・愛猫がすでに肥満が疑われるようであれば、かかりつけの動物病院で健康診断を受け、体に負担がかかっていないかどうかをチェックし、また減量についてご相談をされることをお勧めします。特に高齢犬・猫の場合、肥満が様々な病気を招く原因にもなりますので、注意してあげてください。
 動物病院では、ローカロリーの処方食を用いた食事療法を中心に減量を目的とした治療をおこなっています。

 

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