発情シーズンは初春から秋にかけてとなっています。猫は発情時に交配すると、ほぼ100%妊娠してしまいます。 これは、猫が交尾排卵動物(交尾の刺激によって排卵が始まる動物)であるためです。猫は個体差もありますが、通常年に3回程度、すなわち春・夏・秋に発情します。(完全室内飼いの猫の場合、気温や可照時間の関係から年中発情する場合もあります)発情後交配すると、もれなく約2ヵ月後子猫たちがこの世に生を受けて私達の元にくることになります。 今回は、この子猫たちの、『生まれてからの五感ならぬ四感の成長』についてお話したいと思います。味覚については、しゃべってくれないので、これとはっきりいえません。代わりにミルクを飲むことで、どれくらいずつ成長していくかを最後にお話しましょう。 |
■ 子猫が生まれたばかりの状態は、どのようなものでしょうか? |
a.目は見えているでしょうか?
b.耳は聞えているでしょうか?
c.匂いはかぐことができるでしょうか?
d.暖かさや寒さを感じることはできるでしょうか?
e.子猫は毎日どれくらいずつ成長していくのでしょうか?
生まれたばかりの子猫たちは、まだまだ完全ではありません。そのため、目は見えていないどころか、目を開いてもいません。では、目が開くのはいつ頃からでしょうか?
それは、生後5~14日の間に徐々に開いていきます。最初は片目に切込みが入ったようになって、次いで、反対の目にも切込みが入ったようになります。この状態から2~3日もすると両目がパッチリと開くようになります。個体差はありますが、通常生後1週間~10日目ではほとんどの子が目を開くようになるでしょう。目が開くと同時に、視力はでてきますが、成猫と同じ程度の視力になるまでには約2ヶ月ほどかかります。 ★ もしも、この時期を過ぎても目が開いていない場合には、『新生子眼炎』が疑われます。目の周りに腫れや赤みがないか、チェックしましょう。もしも、腫れや赤みがある場合には、早期に動物病院で診察を受けましょう。 |
生まれたばかりの子猫たちは、耳の形も三角ではなく、丸く愛らしい様子をしています。お耳の穴(外耳道といいます)はお母さん猫のお腹に居る時には、すでに形作られているのですが、生まれる前に一旦閉じてしまいます。生まれてから成長にしたがって、次第に穴が広がっていきます。完全に外耳道が形成されるのは、生後6~15日齢頃です。外耳道が開けば、耳は聞えていると考えられます。ただし、まれに先天的に耳が聞えない子がいます。他の子とくらべて、おかしいな?っと思ったときにはすぐにかかりつけの動物病院で診察を受けましょう。 ★ この時期に、母猫や周囲の猫が外部寄生虫である耳ダニ(耳穿孔ヒゼンダニ)に感染していると、子猫に感染することがあります。子猫が生まれる前には、母猫や周囲の猫、その他の同居動物の外部寄生虫の予防・駆除を行っておきましょう。 |
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生まれたばかりの子猫たちは、お母さん猫の乳房にたどり着き、母乳をお腹一杯飲まなければなりません。そのため、嗅覚は少々未熟ですが発達しています。母乳の匂い、お母さん猫の匂いを頼りに、乳房に辿り着くのです。そして、子猫たちが生まれてから24時間の間にお母さん猫が出す母乳を『初乳』といいます。この初乳には子猫たちが今後生きていくうえで必要な『移行抗体』が多く含まれています。お母さん猫の暖かで安全なお腹の中から、外界という厳しい環境に生まれでた子猫たちは、生まれてから丸1~2日の間、一生懸命外界になれようと必死です。そのため、この時期の子猫たちにはあまり触らないように、またゆっくり、一杯母乳が飲めるように静かに過ごさせて上げましょう。 ★ 『移行抗体』とは母乳を介して子猫に与えられる、母猫が持っている各種病原菌に対しての抵抗力(抗体)のことをいいます。この抗体は母猫が持っていないことには、子猫に渡すことができません。そのために、予定されている交配であるならば、その1~2ヶ月前にワクチンを打っておきましょう。そうすると、母猫の体の中で、抗体がどんどん増えていき、初乳の中にたくさんの抗体が含まれることになります。これにより、子猫たちがもらえる抵抗力が増えるのです。(毎年ワクチンを打っているのでしたら、特に交配前に必要ということはありませんよ) |
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子猫たちは、暖かさ、寒さを感じることができます。ですが、まだまだ未熟な子猫たち。自分で体温を作り出すことが中々できません。母猫が一緒にいるときには、母猫の体にぴったり体をくっつけているでしょう。また、母猫が食事に行っているときには兄弟同士で身を寄せ合っています。もし、兄弟猫がいない場合には、少なくとも生後1ヶ月齢までは、お部屋の温度をしっかりと暖かくしてあげる必要があります。
具体的には、室内温度は25度前後、保育箱の中はそれより2~3度暖かくしてあげましょう。 ★ 子猫では温度管理が大変重要となってきます。特に哺乳期の間は、体が未熟であるために、容易に体温が低下した状態(低体温)となります。この状態では、さまざまな病気への感染率が増加します。それだけでなく、低体温を起こすと、自分でミルクを飲むこともできなくなってしまい、低血糖(血糖値が低い状態)を起こしてしまい、どんどん衰弱してしまう恐れがあります。室内温度には充分に注意しましょう。 ★ 子猫の肌は成猫よりも柔らかく、もろいものです。そのため、保湿効果もあまりありません。室内の湿度も低くなりすぎないように、注意してあげましょう。秋から冬にかけては特に乾燥しがちです。また、夏場に冷房をかけると、やはり乾燥してしまいます。子猫がいるご家庭では湿度もチェック項目に入れましょう。人間の快適湿度は湿度40~60%前後といわれていますが、子猫のためには少なくとも50~65%くらいに保ってあげましょう。湿度計がない場合には、母猫さんのためのお水入れを複数にしてあげることでも、ある程度対処可能になりますよ。 |
生まれたばかりの子猫の平均体重は100g前後です。軽い子では85g、大きな子では120g程度です。
子猫は犬ほど猫種による体格差がないために、順調に成長していくと、一日に約10gずつ増えていきます。成長の遅い子でも一日7g以上、早い子では一日に15gずつ増えていきます。
ということは、生まれた時に100gだった子猫は、順調に育っていれば1週間後の体重は何gでしょうか? 答えは149g~200g(平均170g)となります。 ★ 哺乳期の子猫の健康管理はどのように行っていくのでしょうか?一番の健康状態の目安は、『どれだけミルクを飲んでいるか』です。ミルクを飲んでいる子猫は体温が安定し、腸の活動も活発であるということになります。反対にミルクを飲んでいない子猫は病気である可能性がとても高くなります。 ミルクを充分に飲んでいるかどうかは、どうやって知るのでしょうか?これは料理用の秤を使って、細かく『体重を計っていくこと』で、確認していくことが可能です。母猫が怒らないのであれば、毎日、母猫が少し神経質であるのならば、2日に1回程度子猫の体重を手早く計っていきましょう。 ★ 成長期である子猫の体重が毎日順調に増加しない、また反対に体重が減少していく、というような場合には、子猫が病気の可能性、もしくは母猫が母乳を出していな い可能性が考えられます。このような場合には、まずは、動物病院で診察を受け、病気がないことを確認しましょう。 病気がない場合には、人工哺乳が必要となってきます。猫と犬、人、そして、牛のミルクではまったく成分が異なります。人工哺乳は必ず猫用ミルクで行うようにしましょう。 |
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