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私の最初の経験は小学校3年生くらいの頃でした。まだ臍の緒もとれていない子猫を拾い、育てようとしましたが、結局は1週間ほどで死なせてしまいました…。
知識不足、経験不足、そして近くに頼れることができる動物病院がなかったことが原因です。時を経て何頭もの子猫や子犬の人口哺乳を経験してきた今、私は専門学校で子猫や子犬の子育ての方法を教えています。それは、私の手では育てきれなかった、あの子猫や子犬、その命を失った辛さ、悲しさが糧となり、原動力となっているのです。失う命が少なくなるように、そして私と同じような辛さ、悲しさを経験してしまう人が少なくなりますようにと願って、この原稿を書いています。
哺乳期の子猫や子犬を育てることは、『適切な環境』を用意し、『猫用のミルク』を十分量与え、『排泄の補助』をするといったことを行うといった知識を持っていて、近くに色々と相談できる動物病院があるのであれば行うことができます。
このミルクを与える時期はわずか1ヶ月、その後は離乳食へと移行していきますので、1ヶ月だけ人口哺乳を頑張ってみましょう。この子育て期間中もその後も、猫と伴に過ごす間、愛情はたっぷりと与え続けることは大切なことです。そうすれば、猫も愛情を惜しみなくプレゼントしてくれるでしょう。 |
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『適切な環境』の条件
猫の人口飼育にはどんなものが必要でしょうか?授業の1時間目にあるように、子猫は大変未熟です。自分で自由に移動することができませんし、成猫にくらべて免疫力も低い状態です。このため、『適切な環境』を作るのに必要な次のものを用意してあげましょう。
保育器・・・母猫が選ぶ産箱のような環境(静かで少し暗く、暖かく適度に湿度のある状態)を用意してあげます。保育器は清潔であるように必ず心がけてください。 |
段ボール箱(保育箱)
子猫の排泄物で汚れてしまった時などに対応できるように、使い捨ての段ボール箱が最適です。大きさは猫がある程度動き回れるくらいのものにします。
*汚れてしまったとしても、焼却処分してしまえば万が一、なんらかの病原菌がいたとして簡単に退治できます。
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くたくたな布(敷布と覆い布)
子猫は最初、触感と嗅覚が発達しています。そのため手触りが良いことは子猫の発育・発達の重要な要因となります。子猫には古いタオルや毛布、肌着など手触りの良い、柔らかい物を用意します。また、これらはダンボール箱と同じように、いつでも簡単に捨てたり、熱湯消毒や洗濯が容易にできたりするものが良いでしょう。子猫のいる環境を清潔にするため必要なことです。これらの上にペットシーツなどを敷くのも一つの方法です。
保育箱の中に隙間風が入り込まないように覆い布も用意しましょう。隙間風は温度低下、湿度低下を引き起こし、子猫を低体温症や脱水症にさせてしまうことがあります。
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保温器
夏場では返って冷房が必要になるかもしれませんが、他の季節では保温が必要となります。使い捨てカイロやペットボトルにお湯を入れる、ペット用ヒーターを用意するなどを行い、適正な温度になるように注意してください。この際、低温火傷を起こさせないように、必ず保温道具はタオルなどでくるみ、暑い場合や寒い場合に、ある程度子猫が自分で調節できるように保温道具は保育箱の全面ではなく、約半分くらいを占めるようにしましょう。
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温度計
子猫は自らの熱産生能力が低いだけでなく、体温維持能力も低いため容易に低体温になりやすいものです。子猫は低体温になると、腸管運動が低下し、ミルクを飲むことや飲んでも消化することができなくなります。
ミルクが飲めないと低血糖を起こして、更に衰弱していきます。これにより、 子猫は時に死亡することもありますので、温度管理は大変重要なこととなります。週齢に応じた保育器内温度と適正体温は表1を参考にして下さい。
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湿度計
子猫の体の約80%は水分で構成されています。しかし、子猫は皮膚や被毛の発達が充分ではありません。そのため周囲が乾燥しすぎていると脱水を起こしやすくなります。母猫がいれば、舐めることによって、皮膚の湿り気を保ってくれているのですが、母猫がいない場合には、保育器内の湿度を充分に保ってあげる必要があります。
適正な湿度は55~65%くらいです。
部屋の片隅にお湯を置いておくか、加湿器などを用意しておくと部屋の湿度は上昇します。
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母乳成分の比較(表2) |
成分 |
犬の母乳 |
猫の母乳 |
牛の母乳 |
蛋白質 |
7.92% |
7.28% |
3.00% |
脂肪 |
9.84% |
5.10% |
3.56% |
乳糖 |
4.08% |
4.91% |
4.60% |
kcal/100ml |
136.8 |
94.6 |
62.6 |
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体温の変化(表1) |
週齢 |
平均体温(℃) |
保温温度(℃) |
1 |
35.5~36.1 |
29~33 |
2 |
36.1~36.6 |
26~29 |
3 |
36.6~37.2 |
23~26 |
4 |
37.2~37.7 |
23~24 |
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猫用ミルク
ミルクと言っても、各種哺乳類のミルクはそれぞれの種類によって、栄養成分が異なります。子猫には必ず猫用ミルクを用意しましょう。(表2を参照してください。)
動物病院やペットショップでは猫用ミルクや哺乳瓶が置いてあります。哺乳瓶は猫の大きさに合わせ、乳首のできるだけ小さいものを選び、乳首の先に十字の切込みを入れます。切り込みは哺乳瓶を逆さにして、ミルクがじわっとにじむくらいの大きさにします。
切り込みは小さすぎると子猫がミルクを飲むために体力を消耗してしまい、必要な量を飲むことができません。反対に大きすぎると、ミ
ルクが出すぎてしまい、子猫がミルクを誤嚥してしまうことがありますので、切り込みの大きさには十分に注意してあげましょう。 |
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