健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

Q&A

犬に牛乳を飲ませても大丈夫?

基本的にわんこには牛乳を与えないということは聞いています。ただ、それは「分解できずに下痢をしてしまうことがあるから」だと思っていました。うちのわんこ達は牛乳で下痢をすることが無いので、成犬になってからは、食欲が無い時など少しフードにかけてやっています。

最近結石になりやすいと聞いたので獣医さんに尋ねてみたのですが、良くないという人と結石と牛乳は関係無いという獣医さんがいます。現在の獣医学的にはどちらなのでしょうか?

現在結石を患っているわけではありませんが、将来的に結石になる可能性が高いのなら止めた方がいいと思いますし。与えている量は体重約5kgの子で1日1回小さじ2杯くらいとそれほど多くはありませんので、犬用のミルク(パック入りのもの)では使いきれずに捨ててしまうことが多いのです。

合わせて人間用のヨーグルト(無糖)についても、結石になりやすいということがあるのかどうか教えて下さい。

~牛乳で下痢をすることがあるのは?~

 哺乳期の子犬や子猫に牛乳を与えてはいけない、という理由には栄養素の違いがあります。犬や猫は基本的に雑食あるいは肉食であるため、草食動物である牛の母乳(牛乳)とは蛋白質や糖類、脂質などの三大栄養素の含有量やカロリーがとても異なっています。このため、子犬や子猫を牛乳で育てると、栄養不良になってしまうことがあります。

 成犬や成猫で牛乳を与えてはいけない、と言われる理由には、ご質問者の方が仰っておられるように下痢を起こすことがあるからです。
犬も猫も成長するにつれて、牛乳中に含まれる二糖類、特に乳糖を分解するラクターゼという酵素が減少してきます。
ラクターゼが減少すると、牛乳中の乳糖のほとんどが分解(消化)されないまま腸管内を移動していくことになります。
腸管内に乳糖が残っていると、その濃度を薄めようと腸管壁から水分が腸管内に移動したり、あるいは腸管内から腸管壁に吸収されるべき水分が乳糖と一緒に残ったりします。この過剰な水分によって便が水っぽく、すなわち下痢状になってしまうのです。
このことを『乳糖不耐性による浸透圧性下痢』といいます。

※ ある研究によれば、犬では体重1Kgあたりに20mlの牛乳を飲ませると下痢をすると言われています。もちろん、個体差があり、もう少し飲んでも平気な子もいれば、もっと少ない量の牛乳でも下痢をしてしまう子もいるでしょう。牛乳を飲ませて、おなかがゴロゴロいって、後で下痢をするようであれば、量を控えるか、あるいは全く与えないようにすると良いでしょう。

 ~尿結石と牛乳の関係~

尿結石は「石」の字が入っていることからわかるように、尿中のミネラル成分が主体となっていますが、ミネラルと一言で言っても、カルシウムやリン、マグネシウム、ナトリウムなど多種多様な成分があり、これらの幾つかが結石の形成に関与しています。また、ミネラル以外の成分も結石の形成に関わっている事があり、代表的なものにシュウ酸や尿酸といったものがあります。

尿結石には、尿酸アンモニウムマグネシウム結石やシュウ酸カルシウム結石、シリカ結石、リン酸カルシウム結石など幾つかの種類があり、種類によって控えた方が良い食品、避けたほうが良い食品などが決まってきます。

例えば、シュウ酸カルシウム結石の場合、シュウ酸が多く含まれている食品やカルシウムが多く含まれている食品は避ける事が良いといわれています。尿酸アンモニウムマグネシウム結石では尿酸の元となるプリン体が多く含まれている食品やアンモニアの元となる蛋白質が多く含まれている食品の過剰摂取を避けること、が良いといわれています。

 このため、一概には牛乳やヨーグルトはダメ、とは言えず結石の種類によって控えた方が良いかどうか、避けたほうが良いかどうか、が変わって来ます。

~結石症になるには様々な原因がある~

 結石症はある特定の成分を過剰に摂取し続けるとなりやすい、とよく言われています。しかし、やはり体質的な素因、膀胱炎、排尿障害、尿路系の異常などが大きく関わってきます。

このため、アレはダメ、コレはダメ、とするのではなく、犬や猫にとってのバランスが取れた食事を与え、特定の食品を過剰に摂取させないようにすることが大切です。
 また、年齢に応じて定期的に尿検査・血液検査を含めた定期健康診断を受けるようにしまし、異常がないか、異常があれば早期発見早期治療そして予防というようにしていくと良いでしょう。